音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

蔵出しの決定打は、『レディース&ジェントルメン』

2010年10月18日 | インポート

Ladies_gentlemen_rolling_stones

 発売日の朝、AMAZONから届いていました。

 会社に行く数分前の出来事で名残惜しく後ろ髪引かれる思いで会社に向かったのであった。

 正直なところ、僕がリアルタイムでストーンズを知ったのはロニー・ウッド加入直後のことで、テイラー期のこの映像は当時としてはもっとも観たかった映像のひとつかもしれない。

 それが40年の時を超えてこうして届けられた。

 これは奇跡という以外にないのである。

 1972年といえばあの歴史的名盤『メイン・ストリートのならず者』が発売された年だ。

 ある人にいわせると『ベガーズ・バンケット』、『レット・イット・ブリード』、『スティッキー・フィンガーズ』、それに『メイン・ストリートのならず者』というアルバムをリリースしていた時代こそがもっとも創造性に満ち溢れ、リアル・ロックを体現できた時代なのである。

 このロックン・ロール・バンドとしてもっとも濃密な時期にもっとも刺激的なギタープレイを披露していたのがミック・テイラーだ。

 初期のバンド・リーダーだったブライアン・ジョーンズともユニークなプレイでストーンズにポップを持ち込んだギタリスト、ロニー・ウッドとも違う、そうだな、この場合、ストーンズにジミー・ペイジみたいな凄い奴が加入したぜ、というような表現がいいのかな。

 この『レディース&ジェントルメン』を観ると、当時からストーンズというロック・バンドがいったいどういうバンドだったかがわかるのだ。

 実際はどうだったかはわからないのだが、映像を観る限りは『メイン・ストリートのならず者』のプロモーション用に作ったようないくつかの公演を繋ぎあわせたライヴ映像で構成されており、曲中でコスチュームが入れ替わったりして辻褄が合わないのが気になるけれど、その迫力、スピード感は充分伝わってくる。

 確かに昨今にみられる複数のカメラを駆動させて撮る立体的なライヴ映像と違い、平面的で固定カメラに入ってくる映像を映し出すだけのこの当時の映像技術は稚拙で、最新技術で撮ったDVDに慣らされたひとにはやや物足りないライヴ映像かもしれない。

 映像に至っては当初の暗かった映像をかなりクリーン・アップして観やすくなってはいるものの、映像的に妙にどぎつくなってしまったような観がある。しかしそれがまたこのバンドの性質を正確に捉えているような気がして不思議とリアル感が増している。

 単なるロックファンには単なるロック・バンドの回顧的ライヴ映像には違いないのだが、ローリング・ストーンズの純粋なファンにとってはこれは喉から手が出る思いで待ち望んだDVDなのである。

 拡大版『メイン・ストリートのならず者』から始まったストーンズのアーカイブ期の最大の目玉であるこの『レディース&ジェントルメン』は後世に残すストーンズ映像の中でも1,2を競うであろう、これこそ本物のライヴ・バンドとしての本領が発揮された絶頂期の記録なのである。

 一連の蔵出しの決定打がこれとは思わなかったぜ。

 恐るべし、ストーンズ!