音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

キース・リチャーズの魔性の左手

2009年08月03日 | インポート

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 フジテレビが1993年10月から1994年3月にかけて20回にわたり放送した「音楽の正体」は、月曜午後11時から放送されていたこともあり、この番組を毎回欠かさず観たという人は非常に少なかったのではないかと思う。

 なにしろ、音楽について語られる番組なのにヒットチャートを紹介するようなくだけたところは微塵もなく、内容が専門的かつ高尚なところもあったので、なんとなくつけた番組で、音楽理論云々などという堅苦しい講釈を論じられると僕の場合、途端に見る気がしなくなる。

 そこで寝る前の何分間かの暇つぶしに見る程度の番組としてみていたわけだが、たまにしか観なかったので、この番組の第16回が、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズを取り上げた内容だったということ知らず、最近YouTubeを彷徨っていて偶然そのことを知ったわけである。

 テーマは、「キース・リチャーズ魔性の左手~偶成和音とは何か~」というもの。それにしても偶成和音なんて音楽用語は、これを観なければおそらく一生涯耳にする機会などなかったと思う。そもそもロックに刺繍音が使われていることさえ知らなかった男であるからして、勉強になるよなぁ、などと頼りなくも感動に咽び、前途多難な当ブログの行く末を案じる今日この頃である。

YouTube:楽の正体#16 偶成和音とは何か(1/3)

 さて、この番組でも取り上げている『スティッキー・フィンガーズ』の「ブラウン・シュガー」で偶成和音が効果的に使われ、ギターで言うところのサスペンション・コードがそれに深く関わっているなんて言うのも目から鱗的な情報だった。なんともこんな説明の後でこうして改めて「ブラウン・シュガー」を聴くとまた違った音楽の楽しみ方ができるというものだ。

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 最近、この『スティッキー・フィンガーズ』の高音質CD(SHM-CD)を購入したので、是非、この点に注意を向けながら聴いてみたいものだ。ローリング・ストーンズはかつてエリート意識の強いバンドと何かの専門誌には書かれていたが、パンクみたいな荒削りな演奏を聴くとどうしてもそこから美意識みたいなものは感じられなかったけれど、派手な早弾きに活路を見出すギタリストを尻目に、アイデアの積み重ねで作曲していたことを知ると、やはり当時からほかのバンドとは一線を画するところがあったんだろうなと思った。

 番組の終わりで解説者が言っているように「ブラウン・シュガー」から偶成和音を抜くと高校の文化祭のバンドのように礼儀正しくなる。そこに偶成和音を加えることで同じ曲が化粧を施したようにチャーミングになる。踊りながらでも酔っ払っていても弾けるこの曲をとことん分析したらきっとストーンズの隠れた秘密が垣間見られるかもしれない。

音楽の正体#16 偶成和音とは何か(1/3)

音楽の正体#16 偶成和音とは何か(2/3)

音楽の正体#16 偶成和音とは何か(3/3)