青森の旅も最終日になって、とんでもないハプニングに見舞われました。
最終便の飛行機を予約していたのですが、空港に行ってみると真っ白な霧で包まれています。
もしかして、これは…。
嫌な予感は的中。
濃霧により、便は欠航となってしまったのです。
やむなく市内のホテルをとって、青森で一夜を過ごすことになりました。
どうせ泊まるなら地元の美味しいものでも食べたい。
夜十時過ぎにホテルに荷物を置いて、さっそく街をぶらぶらしました。
夜中まで開いている店は少なかったのですが、その中で細々と看板が光っている小料理屋を見つけて入りました。
こぎれいな店内には、カウンターと小さな座敷。
カウンターの一角に陣取ると、ホタテやトウモロコシなど地元の食材を生かした小皿料理を肴に、地元の酒をいただきました。
この店では、中国山西省から来た留学生がカウンターを守っていました。
日本語が達者で、最初は日本人と間違えるほど。
気風がよく、冗談も交えた快活な会話。
笑顔も素敵で、店の看板娘として十分な資質を備えていました。
何でも日本語は、四年前に来日した時から始めたのだとか。
何年英語を勉強してもろくに話すこともできない私は、彼女の日本語を聞いて、やればできるんだと勇気を与えられる思いでした。
ところで、せっかく日本語が話せる中国の人がいるのだからと、さっそくミニ異文化交流を試みます。
中国語といっても、北京語と広東語では雲泥の差があるようです。
ホントでしょうか。
昔覚えた広東語を試してみます。
「一から十まで言うよ。
ヤ、イ、サン、セイ、ウン、ロク、チャ、パ、ガウ、サップ!…どう?分かる?」
すると彼女は首を横に振ります。
「聞いたことはあるけど、使ったことはない。」
「じゃ、これは? トーチェー!」
再び「分からない」と首をふる彼女。
これは「ありがとう」を表す「多謝」の広東語読みです。
漢字を知って初めてうなづいた彼女は、
「私のところでは、トーチェーじゃなくてトーシェイと読みますね」
と言いました。
なるほど北京語では「謝謝=シェイシェイ」ですね。
考えてみれば、東京から数百キロの青森ですら、方言でしゃべられると意味が分からないことがよくあります。
増してや中国では、町と町が千キロ以上離れていることもしばしば。
北と南では、歴史も文化も全く違います。
言葉も、ネイティブが分からないくらい異なっていても、不思議はありません。
なるほど。中国って広いのね。
と、一人で頷きながら、青森の大吟醸を飲み干しました。
思わぬハプニングで生まれた余分な一泊も、気風のよい中国人との出会いで、ちょっと得した気分になりました。
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