言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

ボーナスは、おしきせ?

2012年12月16日 | 四季
ボーナスの季節です。
忘年会シーズンということも手伝ってか、凍えるような寒さにも関わらず、街には何となく浮かれた雰囲気が漂っています。

ところでボーナスは誰もがもらってうれしいもの。一方的に押し付けられる「おしきせ」だと感じる人は世の中にはいないでしょう。
でも言葉の上では、ボーナスはおしきせだったりするんです。
言葉の歴史をたどってみましょう。

「ボーナス」は、言うまでもなく英語のbonusからきた外来語。
その語源は、ラテン語で「良い」を意味するbonus(ボヌス)、さらにはローマ神話の成功と収穫の神「ボヌス・エヴェントス」だと言われています。

おしきせは、「お仕着せ」と書き、かつては江戸時代から見られる「仕着せ」という言葉からきています。
仕着せは、主人から奉公人に与えられる着物のことを指し、通常は盆と暮れの年に二回与えられていました。現代のボーナスに近い意味を持っていたのです。
年に二回、時候に合わせて与えられていたため、やがて「お仕着せ」は型どおりに物事が進むという意味になり、それが昭和の中ごろから「一方的に押し付けられる」という意味に変化したと言います。
おそらく「お仕着せ」が「押し着せ」と聞こえることからそうなったのでしょう。
現在の「おしきせ」の意味は、意外に歴史が浅いのです。

もし、昭和における意味の変化がなければ、冬になると「そろそろお仕着せの季節だね。楽しみだな」などという会話が飛び交っていたかもしれません。
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大晦日の話

2010年12月31日 | 四季
今年は年の瀬に寒波がやってきて、日本の多くの地域で大雪になっています。
京都でも朝からずっと雪が降り続き、白銀の古都となっていて大変美しい夜です。

今日、大晦日は年の終わりの日。
もともと毎月の終わりを「みそか=晦日」とよび、年に12回の晦日のうち最後の一回を大晦日と呼ぶわけです。
晦日は、「三十日」とも書き、かつて月の満ち欠けで暦を定めていた日本では、一ヶ月は原則30日だったところから来ています。

晦日は「つごもり」とも言います。
つごもりは、月の光が見えなくなること、つまり月の終わりを指します。
かつて日本書紀の時代には「月尽」と書くこともありました。
いずれも太陰太陽暦の日本ならではの言葉の発達です。

英語ではこのように月や年の終わりを指す独自の言葉はなく、the last day of the month、またNew Year's Eveなどと言います。そのままの意味です。

かつて稲作が生業の中心だった日本では、暦は生きていく上できわめて重要でした。
言葉の上でも暦に関する表現が豊かになったのも必然だったのでしょう。

今年もまもなく終わりです。
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花は桜とする日本

2010年04月04日 | 四季
今年は、桜が咲き始めた直後に冬が戻ったかのような寒さとなり、ずいぶん花がゆっくりと咲いたことで長く楽しめる桜シーズンとなりました。
今日も東京は、曇り空でパラパラと雨が降る肌寒い一日でした。

東京では、桜といえばソメイヨシノが多く、あちこちにソメイヨシノが並ぶ桜の名所があります。
最近桜の名所として注目を集めるようになった目黒川沿いの並木を見に行ったら、大変な人混みで100メートル歩くにも一苦労。あっさりと離脱してしまいました。
花見は江戸時代から庶民に親しまれた娯楽の一つで、桜の木の下で飲み食いする伝統もそれ以来のようです。

ところで、日本人は花といえば桜を指すほど桜を愛してきました。
有名な話ですが、かつて万葉の時代には、花といえば梅だったといいます。
それが平安前期の古今和歌集あたりを境に、和歌の中で花といえば桜を指すことが多くなりました。
以来、単に花といえば桜を指す文化は完全に定着しています。

今も花見といえば、通常は桜の花を見に行くことを指します。
今年のように、桜の季節に冬の寒さが戻ることを「花冷え」と言います。
またここ数日そうであったように、桜の季節に曇り空になることを「花曇り」と言います。

考えてみれば、イングランドの国花は「バラ」で、西洋では古くからバラは美しい花の代表格として扱われていますが、英語でflowerと言ったらすぐにバラのことを指す、ということはありません。
いかに日本人が桜を特別な花と考えているか、その一端がうかがえると思います。
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年末のことば

2009年12月30日 | 四季
師走もあと残すところ一日。明日は大晦日です。
四季の移り変わりを大切にしてきた日本の文化の中でも、もっとも重要な区分点が大晦日から元日にかけての年の変わり目でしょう。
かつては冬が大晦日で終わり、春が元日から始まりました。
今では徐々に薄れてきた風習とはいえ、日本人は年の瀬になると、元日に向けて大掃除をし、お節料理をこしらえ、除夜の鐘を待ちます。
神聖な気持ちで正月を迎えようとするのは、あたかもクリスマスを迎える西欧の人たちのようでもあります。

だからでしょうか。
日本語には、年末を表す言葉が実にたくさんあります。

年末。歳末。年の瀬。年の暮れ。年尾(ねんび)。歳暮。歳晩。年の終り。年関。などなど。
英語では、the end of the year か、せいぜいyear-end くらいしかバリエーションがありません。
それほど重要でないので必要ないわけです。

大晦日もまた然りです。
日本語では、大晦日のほかに、おおつごもり、除日(じょじつ)、歳除、大歳、除夜、など、様々な表現があります。
英語では、the last day of the year か、New Year's Eve と表すくらいです。

年末や大晦日に特別な意味を持たせ、特別な思いを抱くため、仏教の言葉、商人の言葉、などそれぞれの階級や立場で言葉を生み出していった結果でしょう。

四季の国・日本の本領発揮の季節かもしれません。



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おみくじ

2009年01月03日 | 四季
神社に行けば、おくみじを引きます。
好きな人と嫌いな人といるようですが、私は結構好きです。
おみくじはたいがい「凶」は少なく、ほとんどの場合「小吉」や「大吉」など「吉」系を引くことができます。
そうとは分かっていても、「吉」の文字を見ると嬉しいものです。

さっそく初詣の神社でおみくじを引きました。
開いてみると…
「中吉 鶯の山に入るが如し」
物事を控えめにして心正しくあまり進みてなさぬがよろし、だそうです。
鶯も人里で鳴けばちやほやされますが、山奥で鳴いても人目につきません。
それくらい控えめでちょうどよい、ということなのでしょう。

ちなみに多くの神社では、おみくじは良い方から順に「大吉」「吉」「中吉」「小吉」「凶」の順だそうです。
末吉や大凶が入る場合もあるようです。
「中吉」は真ん中あたり。
吉とはいってもそれほど優れた運勢ではないようです。
願望 さまたげあり
待人 来れども遅し
失物 出づることかたし
旅行 さわりなけれども盗難に注意すべし
学問 油断すれば悪し
こう見ると、確かに運勢がよいのか悪いのかよく分かりません。

こんな時、邪道と言われますが、私はもう一度引きます。
何となくいい気分で神社をあとにしたいのです。
引いてみるとずばり。
「大吉 春風に花の開くが如し」
思いもかけぬ幸あり目上の人に引き立てることあり万事心のままなるべし
よしよし。これでいい気分になれる。
さらに読み進めます。
願望 かなう
待人 来るべし
失物 出づべし
旅行 さわりなし
学問 吉
読んでいくうちに、不思議とつまらない気分になってきました。
大吉。心のままに。幸あり。願い事かなう。
何の問題もないはずなのですが、このような言葉がずらりと並びどこにも落ち度がないと、かえってリアリティがないように感じられます。
前に引いた中吉のおみくじの方が、自分に何かを与えてくれる言葉に思えるのです。

そういえば数日前にテレビ番組で神社の神主さんが言っていました。
「大吉だとその上がない。吉や中吉くらいが、未来に向けて希望があって一番いいんです。」
なるほど。
番組を見た時には、「大吉で文句ないでしょ」と思っていましたが、実際に両方を引いてみると、合点がいきました。

今年は中吉からのスタート。
そう信じることにしました。
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