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言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

デザートは、こちらでよろしいでしょうか

2020年08月15日 | 旅の話し
新型コロナ感染拡大で、東京都民には身動きの取りにくい夏となりました。
遠出をするわけにもいかず、都内のホテルでささやかに夏休みを楽しむことにしました。
そんなある日の昼食での話です。
ホテル内のイタリアンレストランで、妻と二人でランチを楽しんでいました。
お腹が空いていた私は日替わりのランチコースを、妻は単品でパスタを頼みました。
コースですから、前菜、メイン、デザートと順番に運ばれてきます。
メインだけが選べるようになっていて、前菜とデザートはフィックスです。
妻はとっくにパスタを食べ終わり、私もメインまで終わり、皿も下げられ、談笑していたところに私のデザートが運ばれてきました。



ムースとチョコレートケーキのコンビネーションで、小ぶりな皿で見た目もおいしそう。
ウェイターの方が、その皿を私の前に置きながら、こう言いました。
「こちらでよろしいでしょうか」
私は、その問いがなにを聞きたかったのか、一瞬分からず戸惑いました。
というのも、目の前に置かれたデザートを見ながら聞いたその言葉が「このデザートで間違いないでしょうか」という風に聞こえたのです。
もともとコースの決められたデザートですから、その内容が間違っていないか聞かれてもよく分かりません。
次の瞬間、私はその問いの真意を理解しました。
「お二人のうち、貴方がデザート付きランチコースで間違いないでしょうか」
すでに皿が下げられた後で、二人のうち一人だけがデザート付きだったので、ウェイターさんからしてみると、どちらに置いてよいか迷ったのでしょう。
きっとたくさん食べるのは男性に違いない、という予測の下に、私の前に置きつつも念のため「こちらでよろしいでしょうか」と聞いたというわけです。
「こちら」という指示代名詞の幅広い可能性が、逆に曖昧さとなって表れた、日常の一幕でした。
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マウスの島

2016年08月12日 | 旅の話し
スペイン北部、フランスとの県境にサンセバスチャンという美しい港町があります。友人に連れられて、車で向かったのですが、なぜかその日はパーキングがどこも満車で停めるところがありません。そこで、サンセバスチャン見物はあきらめ、近くのサラウスという海辺の街に寄りました。サーフィンで有名な街らしく、日本で言うところの「海の家」らしき海辺の店にサーファーたちが集っていました。
その海辺を歩きながら、友人が「あの島を見て」と指さしました。




正確に言うと島ではなく、半島のように突き出した陸続く丘のような地形です。
「あれ、口のような形をしているから、口の島って呼ばれているの」
 と彼女は説明してくれました。少なくとも私にはそう聞こえました。
 どう見ても、口のように見えないのですが、ムリして解釈すれば、突き出した唇を横から見たように見えなくもありません。
「どこが口なの?あそこが鼻かな?」
 などと、聞き返すと、彼女は大笑いして答えました。
「口(mouth)じゃないわよ。ネズミ(mouse)よ。ネズミの島。」
 なるほど、ネズミと言われれば合点がいきます。
 聞き取りの苦手な私は、mouthとmouseを聞き間違えて、一生懸命にネズミを口のように解釈すべく努力していたのでした。
 日本人の犯しやすい間違いの一つです。日本語にはthの発音がないため、近似値のsの発音で代用し、ネズミの「マウス」も口の「マウス」も同じ表記をし、同じように発音します。「ミッキーマウス」と「マウスピース」は本来全く異なる「マウス」ですが、日本語ではその違いがごちゃ混ぜになりがちです。
 そんな話をスペイン人の彼女にしたところ、興味深い顔で聞いていました。
それにしても、ネズミの島を「口の島」と思い込んで頭の中で解釈しようとすると、不思議とそう見えてきたのも面白い脳の働きだと思いました。
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スペイン・バスク旅行にて

2016年08月12日 | 旅の話し
スペインを旅してきました。初めてのスペインでしたが、バスクに住むスペイン人の友人夫妻を訪ねるのが目的だったので、マドリッドにもバルセロナにも寄らず、訪問先をバスク地方に絞り、中心都市のビルバオとその周辺で一週間ほど過ごしました。
 友人に案内され、毎日のようにあちこちを回りましたが、やはり楽しいのは彼らと話した会話でした。中でもバスクの言葉について話すと、彼らにもいろいろと思うところがあるらしく、話は盛り上がります。
バスク民族は、スペイン北部とフランス南西部にまたがる地方を中心に暮らす民族で、もともとはバスク語という、スペイン語や他のヨーロッパ言語とはかけ離れた言葉を持っていました。今ではそれぞれスペイン、フランス社会に溶け込み、その国の言葉を使っています。
 スペインでフランコ将軍が政権を担っていた時代には、バスク語教育は禁止されていたので、この世代は今もバスク語を話さない人が多いといいます。その後、寛容的政策の中でバスク語を見直す向きもあり、私の友人が学校に通った時代には、バスク語とスペイン語を選択でき、今では両方を話す人も多いそうです。
 友人の女性は、スペイン語が母語で、バスク語の他、イタリア語、英語も話し、中国語や日本語も勉強している貪欲な外国語マニアです。
 そんな彼女と、言葉について白熱した議論を交わしました。
 彼女は「本音でいうとね」と前置きして、バスク語を学び話すことにそれほど価値を感じないと言いだしました。
 スペインに住むバスク人はおよそ二百万人。全員がバスク語で話したとしても、二百万人にしか通じない言葉です。しかもバスク語は、他の欧州言語のような他言語との関連性がない、いわゆる独立語です。単語もスペルも文法もすべて一からの学習になります。スペイン人が兄弟言語であるイタリア語を学ぶのとは、かかる労力が異なります。
「そんなに苦労して、他の場所では通じない言語を学ぶなんて、時間の無駄。それなら英語や日本語を学んだ方がよほど多くの人と話しができるわ」
 確かに、言葉をコミュニケーションの道具として捉えれば、正論です。コミュニケーションを取るためであれば、世界に幾つも言語がある必要などなく、全員が同じ言葉で話した方がよほど相互理解には効果的でしょう。
「でも言葉にはもう一つ、その国の文化やアイデンティティを維持する役割もあるよね」
 と、私は議論のための対論を出してみました。
 日本では文明開化の時代に、公用語を英語にしたらどうかという意見が出ていました。欧米文化を吸収し近代化を進めるにあたり、日本語という他の国では通じない言語はブレーキになるというわけです。しかしこの時、日本語こそが日本の文化と精神性を維持するのに欠かせないもので、皆が英語を話すようになっては日本人のアイデンティティが崩れるという意見が英語公用語論を覆し、結局公用語としての日本語は守られました。
 そんな日本の歴史を彼女に話すと、彼女は大きく頷いて聞いていました。そう、その通り。確かに道具としての言語としては効率的・実用的とは言えないが、バスクのアイデンティティを維持するためには、やはり言葉は重要な役割を果たすはずです。
 言葉は文化を表すものである。四季折々の豊かな自然から生まれた日本人の精神性は、日本語でこそうまく表せるものであり、英語では表現しきれないことが必ず出てきます。逆もまた然りです。
 また日本語を話しているとマインドが日本人らしくなるような気がするのも、単なる気のせいではないと思います。
 言葉には、コミュニケーションのツールとしての役割と、文化や精神を表しアイデンティティを維持する役割がある。その二つともが、言葉の持つ力であり、意識すべきことなのだと、彼女と話していて再確認したのでした。
 
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左に曲がってください。

2015年08月16日 | 旅の話し
 夏休みを利用して、ベルギーを旅してきました。
ブリュッセルを起点にしましたが、一泊だけデュルビュイという小さな街を目指してレンタカーを走らせました。
私のベルギーの印象は、人口密度が高い国、というもので、日本の平地がそうであるように、どこを走っても家々が点在しているのだと思っていました。が、田舎道を走ると、意外にも北海道のような広い平原が続く場所も多くあり、のどかなドライブを楽しむことができました。

慣れない右側通行、左ハンドル、そして道路標識も正確には分からないので、不安です。そこでレンタカー店でナビゲーションシステムを借りることにしました。
さっそくデュルビュイや目的とする街・城を登録してスタート。
日本でよく見るナビゲーターと比べると小さくて頼りなげな機械。使い方も、出てくる表現もよく分かりません。
何より女性の声で出てくる指示がすべてフランス語なので、まったく理解不能。
結局、連れのiPhoneと携帯WiFiを使ったGPS機能に頼りながらのドライブになり、ナビゲーションシステムの能力の10%も活かしきれませんでした。
その割には、30秒に一度くらいのペースで、訳の分からないフランス語の指示を強制的に聞かされます。
でも完全に電源を切ってしまうと、せっかく払ったレンタル代がもったいないので、仕方なく謎のフランス女性の声を旅の伴としたのでした。

ところが半日くらい走ると、興味深いことが起こりました。
何となく、この女性の声の法則性に気づくのです。
似たような場面で、似たような表現が繰り返されています。
日本語にしてみると「トルネアゴーシュ」と聞こえます。
またちょっと異なる場面で似ているけど別の表現が繰り返されます。「トルネアドロト」と聞こえます。
どうやら、左や右にカーブを切る直前でこれらの表現が聞こえてくるようです。
もしかして、これは左に曲がってください、右に曲がってください、と言っているのではないか。
「トルネア」というところが共通点なので「~に曲がってください」の部分で、「ゴーシュ」が左、「ドロト」が右ではないか。

 一度その法則に気づくと、左に曲がる時に必ず「トルネアゴーシュ」と聞こえてくるのが、面白くなってきました。
 宿に着いてから調べてみると、どんぴしゃり。
左に曲がってください。tournez a gauche
右に曲がってください。tournez a droite
 結局、二日間のドライブで、学んだのはこの二つの表現だけでしたが、興味深い体験でした。

 私たちの多くは、ある程度物心ついて、母語を学んでから、英語や他の言語を学びます。学ぶ時には母語が頭の中にあるので、その母語を使って「翻訳」し「理解」しながら、単語や熟語の意味を覚えていきます。
 ところが、生まれて間もない子供が母語を身につける時には、「翻訳」できる言語を持っていません。
「こんなシチュエーションでお母さんが話しているあの言葉は、きっとこんな意味を持っているのだろう」と、自分の中で法則性を見つけながら、身体の中に染み込ませていくように学びます。
いわば「幼児メソッド」とでもいうべき、赤ちゃん独特の言葉の学び方です。
 大人になり母語を持てば、この学び方の必要がなくなり、また脳も固くなるのでしょう、幼児メソッドによる言語習得が極端に下手になります。
 今回の「トルネアゴーシュ」は、私にとっては幼児メソッドに近い形で表現を学んだ数少ない経験の一つでした。
でも2日かかって学んだ表現はわずか2つ。このペースで学ぶと、フランス語で日常会話を話せるようになるまでに、何十年もかかりそうです。
いかに赤ちゃんが「幼児メソッド」を使って驚異的な速さで言語を習得していくか。それが実感できた体験でした。
コメント (1)
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三笠は彼女?

2014年04月13日 | 旅の話し
カンヌのビーチサイドにあるレストラン。
ロシアから来たという老人と隣席となりました。
日本人の私とロシア人の老人が、フランスのレストランでさっそく英語でおしゃべりです。
聞いてみると、彼は大の日本びいき。かつ、歴史が大好きだとか。
日露戦争についてマニアックに調べていて、新潟、東京、横須賀などを訪ね、戦艦三笠をたいそう気に入ったと熱く語ります。
日本人とロシア人が、フランスのレストランで、英語で日露戦争について語り合う。
何とも奇妙な気分になりました。

会話の中で気になったことがありました。
彼は、横須賀で三笠の雄姿を見た時の印象を、She was beautiful. と表現しました。
三笠は、日本海海戦で旗艦となった戦艦。ロシア人から見れば、敵とも言える船に対し、sheと表現する。
どこか不思議に感じました。

英語では、船や国名をsheの代名詞で受ける文化があります。
これは、ヨーロッパの他の言語にある男性名詞、女性名詞、とは異なる性格のもので、一種の愛情の表現だと言います。
事実、古英語では船(scip)は中性名詞だったそうです。
14世紀ごろから、慣習的に船のことをitではなくsheで受けるようになりましたが、それは一種の擬人化であり、今でも男性が主に使う用法だと言います。
船や車が好きな男性が、愛情をこめて言うのでしょう。
最近では、こうしたsheの使い方は、やや古くなってきているようです。
20世紀の後半からその傾向が強くなっているようですが、その理由の一つは、ジェンダー論にあるのだとか。
言葉に男女の差をつけてはいけない、というわけです。
個人的には、船をsheと表すことが男女差別につながるとは決して思いませんが、実際に今ではこうした表現は少し古風な物言いに聞こえるようです。
そういえば隣席したロシア人もかなりの老齢でした。

日本では、モノにも精神が宿るという古来の考え方が、言葉にもよく表れます。
自分のパソコンの調子が悪いと「この子、今日は機嫌が悪いのよね」などと言ったりします。
しかし、日本では擬人化の中に男女の区別がなかったためか、今もこうした表現は健在。むしろ増えているかもしれません。

日露戦争と戦艦三笠について、日本人とロシア人が語り合った中での、ちょっとした言葉の発見でした。
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