言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

アラビアータとバイキング

2010年06月27日 | 食の話し
昨日、テレビのクイズ番組で、パスタの「アラビアータ」というのはアラビアとは関係がない、と紹介されていました。
トマトベースで唐辛子の辛味を聞かせたポピュラーなパスタの味付けですが、その赤い色とピリッと辛い味から、イタリア語で「怒っている」という意味の「arrabbiata」と名づけられたそうです。
カタカナでアラビアータと書いてしまうと、ついアラビアを想像してしまいますね。

食に関する言葉にも、このように外来語であるがゆえの勘違いがしばしば見られます。
「食べ放題」を意味する「バイキング」もその一例でしょう。
英語では、all you can eatあるいは、buffet(ビュッフェ)と言い表し、Vikingはかつて北欧にいて西欧に進出した北ゲルマン人の別称でしかありません。
ではなぜそのバイキングが「食べ放題」を表すようになったのか。
そこにはちょっとした歴史があります。

1957年、帝国ホテル支配人の犬丸徹三がデンマークで北欧の食べ放題料理「スモーガスボード」と出会い、帝国ホテルにそのスタイルを取り込もうとします。
しかし「スモーガスボード」とは言いにくい。
そこで「北欧と言えばバイキング」という発想で、このスタイルを「バイキング」と名付け、帝国ホテル内に「バイキング・レストラン」をオープンしました。
その後、食べ放題の形式は「バイキング」という名で通用するようになったのです。

和製英語の一つ一つにも、実は興味深い歴史があるものです。
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南の楽園・小笠原の英語名は?

2010年06月21日 | ニュース
本州から1000キロ南の海上に浮かぶ小笠原諸島。
豊かな自然が残る楽園です。
この小笠原諸島のことを英語ではBonin Islandsと呼ぶのだそうです。
「ボニン」諸島。何となく日本語っぽい響きを持っている言葉です。
それもそのはず、Boninは日本語の「無人(ぶにん)」から来ているといわれているのです。

小笠原諸島は、江戸時代前期に紀州の船が発見し、その後幕府が調査を行って「無人(ぶにん)島」と呼んだのが記録に残る最初です。
その後、小笠原貞任という人が自分の先祖がこの島々の発見者だと言って、その領有権を主張しました。
領有権は幕府から脚下されましたが、この頃から「ぶにん島」は「小笠原島」とも言われるようになったようです。
19世紀、ハワイなどからの移民が入植し、人が住み始めます。
19世紀後半には、日本からも入植する人が出始め、日本が領有権を宣言するに至りました。
かつて入植していた欧米人たちも日本に帰化します。

こうした歴史をたどったため、英語ではもともとの名前である「ぶにん」島からとってBonin Islandsと名づけられたようです。
つまり小笠原諸島の英語名は「無人島」というわけです。
思わぬ英語名の裏にも、きちんと歴史があるものです。


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ルーニーの暴言に対抗して?

2010年06月14日 | スポーツ
サッカーのワールドカップ・南アフリカ大会が始まりました。
今回は、日本チームに対する期待が今ひとつで、これまでに比べると盛り上がりに欠ける大会になっているようですが、それでも世界最高レベルのプレーの数々は目を引きます。
マラドーナの再来といわれるアルゼンチンのメッシ。アフリカ期待の星・エトー。
スーパースターたちの活躍は、やはりさすがです。

そんなスーパースターの一人、イングランドのルーニーについて、面白い記事が出ていました。
ルーニーといえば、スピードが持ち味のイングランド随一のスーパースター。と同時に、試合中の暴言による悪童ぶりが有名です。
そんなルーニーに対し、米国戦を前にブラジル人の審判団が「英語による暴言20単語のリストを用意した」というのです。
10日付でイギリスの各紙が報じたものです。
審判も言葉の壁を超える必要がある、ということでしょう。
確かに、侮辱する発言をされても、言葉が通じなければ「侮辱した」ことにならないですものね。

考えてみると、言葉の中でも人をけなす言葉というものは、他国の人がそれを実感するのはなかなか難しいようです。
例えば、英語のFuck you.は、アメリカ人にとってはこれを言うと相手との絶縁覚悟、自分の人間性すら疑われる汚いののしりの言葉です。
英和辞典などをひくと、「べらぼうめ、てやんでえ、くそったれ!」などと出てきますが、これらの日本語よりはるかに強いののしりの意味が入ります。
しかし日本人には、頭ではこの言葉が「汚い言葉」だと理解できても、それを「実感」することはなかなかできません。
日本人には、日本語のけなし言葉でしか、けなされたようには実感できないものです。

こんな例もあります。
イタリアでは「キャベツ」を表すCavolo!(カーヴォロ)という言葉がけなし言葉だそうです。
日本人の感覚では「キャベツ」はけなし言葉にしてはかわいらしいイメージですね。
仮に日本語で「お前はキャベツだ」と言われても、意味が通じず、けなされているのか褒められているのかすら分かりません。
キャベツに対して、特段よいイメージも悪いイメージも持っていないからです。

けなし言葉にも、各国の文化的な背景が潜んでいます。
だから意味が通じても、けなしたことにならない例も多いようです。

さて、ルーニーの英語の暴言。世界各国の審判団には、どのように映るのでしょうか。

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一つか二つか

2010年06月06日 | 言葉
礼儀作法のことを表すのに、よく外来語で「マナー」という言葉を使います。
英語のmannerからきている言葉です。
しかし実は英語では「manner」と単数形で使うと「~のやり方」「様式・流儀」といった意味にしかならず、「礼儀作法」「マナー」という意味で使う場合は、「manners」と複数形にしなくてはなりません。

似たような例で、「コンテンツ・ビジネス」「コンテンツ・クリエイター」などといった外来語が近年しばしば使われるようになってきていますが、これも英語では「content business」「a content creator」などとcontentが単数で使われます。

日本語では、単数と複数の区別をあまり厳密には考えていません。
例えば「3人の男たちが現れる」という文章はもちろん正しい日本語ですが、「3人の男が現れる」と表現しても特に問題はありません。
しかし、英語ではThree men appear.(3人の男たちが現れる)を、Three man appears.
とすると明らかに間違いになります。
面白いところで言えば、「子供たち」などは、もともと「子」に複数を表す「ども」がついて成り立った「子供」という単語に、さらに「たち」という複数を表す接尾語をつけているわけです。
いかに日本語が単数・複数の表現について気を遣っていないかが分かります。

そんな日本語だからこそ、英単語を外来語として導入する時に、単数・複数の違いをかなりいい加減に取り入れても気にならなかったのでしょう。
しかしそうした和製英語をいざ英語に戻そうとすると、「マナーはmanners」などと覚え直さなくてはなりません。
これは混乱します。
外来語にする時に「マナーズ」として入れておけば、こうした混乱は少なかったでしょうに。

外来語を自国語に輸入する時に、どうしても互いの言語の違いが影響してしまうのでしょうが、できればなるべく敏感に他言語の特徴をつかんで輸入してほしい。
そうすれば、外国語学習の際の混乱が少なくてすむのに、と思います。
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