言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

アップトークのこと

2015年10月13日 | 言葉
言語についてよく議論を交わす友人がいます。
丸ノ内の和食屋に腰を据えて、久しぶりに日本語と英語の言語論を交わしました。
その中で興味深い話題がuptalk【アップトーク】という現象でした。
英語で話す時、疑問文でもない通常の文章の末尾を、あたかも質問をしているかのようにトーンをあげて発音する話し方のことです。
I’ve bought a glass? It’s very nice? といった風に聞こえます。
英語の世界ではずいぶん前から指摘されている現象で、若い世代を中心に今では当たり前になっているものだと言います。
私は、最近になって英語で話をする機会が増えたので、英語というのはそういう発音をするものだと思い込んでいましたが、実は年齢の高いネイティブの中には違和感を持つ人もいるようです。

和食屋で味噌田楽を食べながら、彼は、この現象の中に「一種日本人的な気遣いの心」があると言います。
たとえ文法的には言い切る形の文でも、質問のように語尾を上げて発音すると、「私はこう思うけど、あなたはどう思うかしら」とか「あなたはこのことを知っているかしら」という風に、一方的な断言を避け、相手の価値観や知識、考え方、意見などを受け入れる意思表示になるというのです。
それが高じて、どんな文章でも語尾をあげてuptalkで会話を交わすことが一般的になりつつあるのです。
ひとたびそれがスタンダードになると、本来のように語尾を下げて言い切る話し方だと、強すぎて押しつけがましく聞こえてくるのかもしれません。

翻って考えると、日本語でもほぼ同じ現象が見られます。
若い層を中心に、単語の語尾をよくあげて発音する話し方はすでに一般的になりつつあります。
確かに、その話し方だと、旧来の会話に慣れている人が聞くと違和感を覚えることがあるかもしれませんが、一方で相手の存在をより意識したコミュニケーションと捉えることもできます。
純米酒を飲みほした彼は、自分は違和感があっても、言葉というものは変化していくもので、それがよりよいコミュニケーションを生むのであればそれはそれでいいのだ、と自分を納得させるように語っていました。
そう、言葉というものは、好む好まざるに関わらず、変化していくものなのです。
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相づち打ちます

2015年10月10日 | 言葉
 ある老齢のイギリス人に言わせると、最近の若い人たちの会話の中でのうなずき方に気になることがあるとか。
Really?Huh!?などといった相づちの代わりに、OK.OK.と、OKを連発するのだそうです。
 最近、若いスイス人と英語で話しをする機会がありましたが、確かにうるさいほどOK.を連発し、私も違和感を覚えました。
OKと言われると、「君の言ったことを許可してやるよ」といったニュアンスを含んでいるように聞こえるのです。
 若者言葉かと思いきや、その後米国のインテリジェントな老夫婦と話した時も、こちらの会話に相槌を打つのに”OK”を使っていました。
 聞くと、相づちにOKと使うのはアメリカ英語の特徴の一つなのだとか。相づち一つにもお国柄が出て面白いものです。
 ところで、その話を英国人と英語で話していて、困ったことがありました。「相づち」が英語に訳せないのです。
 辞書を引くと、nod(頷く)となっていますが、nodは、首を縦にふる動作で音を伴いません。日本語で相づちと言えば、頷くことも含みますが、「そうね」「なるほど」「へえ」「うんうん」など、音を伴う場合が多いものです。
 しかし、英語には“really?”“yeah.”“Yes.”などを総称する言葉が存在しないのです。
「あえて言えば」と、言語に詳しいそのイギリス人は”phatic communication”という言葉を教えてくれました。phaticは、普通の英和辞書には載っていないくらいマイナーな言葉で、オックスフォード辞典でようやく見つけられるようなものです。「相づち」のような日常語に使う言葉ではありません。
 日本語の会話は、英語に比べて相づちが多いと言われます。
英語では、相手が話している間は黙って聞くのが通常で、相づちはたまに打つ程度。じっくりと相手の言葉に耳を傾ける文化なのでしょう。日本語では、「へえ」「ふうん」と言葉ごとに相づちを打つこともしばしばで、それが「あなたの言うことをよく聞いているよ」という意思表示に繋がります。特に情報性を持たない音が、コミュニケーションの中で重要な意味を持っているわけです。
 この傾向は、FacebookよりもLineがSNSツールとして広まっている日本の文化とも相通じるものがあります。絵文字が発達してるのもまた然り、です。
 言葉の情報性だけではない絵文字や写真、スタンプなどが重要なコミュニケーションツールになるのです。
 相づちをはじめ、情報を伝えることのない音や絵をコミュニケーションの中で重要視する、そんな文化が「相づち」という独特の言葉を生んだのかもしれません。
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