言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

世界語になる言葉とは?

2011年01月15日 | 言葉
英語が世界共通語のように使われている昨今ですが、その最大の理由が19世紀から20世紀にかけての大英帝国とアメリカの繁栄であることは言うまでもありません。
ある時代にある国が覇権を握ると、その国の言葉は広いエリアに浸透していきます。
歴史をさかのぼってみると、ローマ帝国の時代にローマの文化とともにその言葉がヨーロッパに広がりました。
大航海時代、スペインやポルトガルが、巨大な世界帝国を築き、それらの国の言葉が海を渡りました。
今でも英語にはラテン語が源の単語が多く含まれていますし、南米ではスペイン語やポルトガル語が話されています。
言葉の広がり方は、政治や経済の歴史と密接に結びついているのです。

ところで、未来永劫英語が世界語であるとは思えません。
将来には別の言葉が世界語として通用しているかもしれません。
では、はたしてどの国の言葉が?

そんな話で友人と盛り上がりました。
その中で「それは中国語では?」という意見が出ました。
今やアメリカを凌ぐ勢いの巨大マーケットに成長しつつある中国。
世界のビジネスパーソンたちが中国に殺到し、中国語をマスターしようと躍起になっています。
中国語ができないとビジネスの世界では生きていけない、そんな時代も遠い将来ではないかもしれません。

「しかし・・・」
話が進むにつれて、中国語は英語と決定的に違う特徴を持っているため、世界語にはなりにくいのではないかという結論になりました。
それは、ラテン文字と漢字の違いです。
ラテン文字のアルファベットを使って構成される言語は、英語のほかにもフランス語やドイツ語などヨーロッパに広く分布しています。
ラテン文字は形がシンプルなため、一部をのぞいて大きく変更されることなく、西洋の多くの国々ではほとんど同じ文字が使われています。

一方、漢字語圏は、中国のほか日本や韓国などですが、漢字は形が複雑なため、実用的に使いやすくするために各国で変更が加えられる傾向にあります。
日本語では漢字がしばしば中国とは異なる意味で用いられています。
また漢字からひらがなやカタカナなど別の文字体系が生み出されました。
韓国では、漢字を使わなくても表現できるハングルが生まれました。
地元の中国ですら、略字が次々と生まれ、元の字を想像するのも難しいほどです。

このように、表意文字である漢字は表現力が豊かなことと引き換えに「複雑で難しい」という特性を持ち、ゆえに世界語として広がろうとすると、各国で自国の文化体系に合わせて変更される可能性が高い文字なのです。
つまり広まっても別の言葉にどんどん変わってしまい、世界共通の言葉として維持されにくいのではないか、というわけです。

シンプルなラテン文字を使う英語ですら、世界中に広まると各国での変更が加えられてしまいます。
ましてや、漢字を使う中国語は、そのままの形で世界に広まることは困難でしょう。

世界語たりうる言語というのは、ある一定の条件を満たさなくてはならないようです。


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雪の銀閣の美しさ

2011年01月04日 | 歴史の話し
京都にいる間に、珍しいほどの大雪が降りました。
雪の銀閣を見ようとふと思い立ち、出かけました。
雪の影響でタクシーはつかまらず、徐行運転のバスに乗り、かじかむ手をさすりながら銀閣寺へ。
バスを降りてから、転ばないように気をつけながらそろりそろりと歩きます。
山門を抜けると、銀閣寺垣。そして境内へ。

そこには、息を呑むような景色が待っていました。
真っ白い雪で覆われた銀閣寺庭園。
雲で覆われた空からは、音もなくしんしんと雪が降り続けています。
光の加減でしょうか、山や木々、池、そして建物に至るまで、黒か灰色のモノトーンに見えます。
まるで世界から音と色が消し去られたかのような光景です。
銀閣もその黒と白の世界の中に溶けこみ、その存在感を押し隠しているかのように見えました。

「幽玄という言葉はこういう光景のためにあるのだろう」と自分で納得しながら拝観を終えました。

「幽玄」とは、極めて論理的な言葉では説明しにくい語です。
辞書などを参考にまとめてみると・・・
『おもむきが深く、ほのかな様。人知では計り知れない神秘的な存在。一方で味わいが深く、上品で優雅で静かなありさま。』
そのようなところでしょうか。

もともとは仏教や老荘など中国の思想の中で使われていた言葉だそうです。
日本では平安から鎌倉時代あたりから、和歌をはじめとする芸術の理念の一つとして使われるようになりました。

このようなファジーな世界観を表す言葉は、日本的な精神や美意識を表す語としてよく見られます。
似たような言葉として、茶道によく使われる「わび」「さび」、あるいは、源氏物語の世界にも表れる「もののあはれ」、
また鈴木大拙が日本人の本質を表す語と語った「妙」などがあります。
いずれも論理的な解析が難しい観念を表す言葉です。

こういった語の共通の特徴の一つが「英語に訳しにくい」ということです。
和英辞書を引くと、「幽玄」は、quiet beauty、elegant simplicity、subtle and profound、などと訳されています。
訳者の苦労がしのばれますが、「幽玄」とは明らかに「静かな美しさ」というだけでは表しきれない数多くの要素を含んだ言葉です。
日本語ですら、「幽玄とは何か」を説明するのは難しいのですから、英語に訳して正しいニュアンスを伝えるのは至難の業でしょう。
そういう多言語で訳しにくい言葉で表される美意識や感覚は、大切にしたいものです。

雪に包まれた白と黒の世界。
銀閣の幽玄の美しさに、奥深い日本を感じました。


コメント (1)
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