英語の文章をナレーターに読んでもらった時のことです。
少し文章が長すぎると思ったので、内容をカットしようかと思ったら、ナレーターの方が「大丈夫大丈夫」と言います。
読んでもらったら、あら不思議、ぴったりの時間に収まりました。
「日本語と違って、英語は早く読んでも意味は通じるから」とそのナレーターは言いました。
確かに、日本語の文章を朗読する場合、長すぎる文章を急いで読むと、聞き取りにくくなってしまいます。
日本語には、「等時性」という特徴があります。
仮名1音が、だいたい同じ時間を使って話される特性です。
だから、俳句や短歌もかな一文字ずつを単位にしてあるリズムを作っていきます。
歌の歌詞も、多くの場合音符一つに仮名1文字を当てます。英語だと、そうではないんですね。
この仮名一文字で示される発音上の単位を、言語学上は、拍またはモーラと言います。
一つの拍は、多くの場合子音(s,t,rなど)一つと母音(a,i,oなど)一つで作られます。
英語だとstreetは一つの音節とカウントされますが、日本語のカタカナに書き換えると「ストリート」と五つの拍に変化されます。英語と日本語は、拍の取り方、リズムの取り方が根本から違うのです。
ちなみに、日本語の拍は、大きく自立拍と特殊拍(モーラ拍)に分かれます。
自立拍は単独で発音可能なもので、仮名一文字で表す直音(ア、ケ、トなど)と小さな「ャ、ュ、ョ」を添えた拗音(キャ、ミュ、ジョ、など)があり、さらに濁音(ガ、ジ、ボなど)、半濁音(パ、プなど)、清音(サ、イ、カなど)といった分類もあります。
これに対して、語頭や単独では発音できない特殊拍(モーラ拍)には、拗音(ッ)、撥音(ン)、長音(-)があります。
確かに「タッチ」「サンダル」「コーヒー」という単語はあるし発音もできますが、「ッチ」「ンダル」「-ヒー」という単語があっても発音できませんよね。
この特殊拍は、単独で発音できなくても立派に一拍と数えられます。
俳句などでも「サンダルに」とあれば五音と数えますよね。
この拍(モーラ)から生まれる等時性が日本語の大きな特徴であり、和歌や俳句もこの特徴を生かした文化と言えるでしょう。