５月１１日日記 いよいよ「我慢」が始まる

２０代前半のころ自分は結婚に関して強いこだわりや義務感を持たなかった。
超氷河期世代の為、景気と雇用は切迫し、生きる為に誰かを抱えたり誰かと一緒に暮らす
考えはとてもリスキーだと考えていた。

自分には自慢できるようなスキルや能力が無い。
至って平凡かそれより劣るか・・。特筆するアピールポイントも無い。
性格だって「やさしい」と言われるが精一杯で、人望があるわけでもない。
下手に年を取ると周りの評価はストレートな表現に及ばずとも
顔や言動ではっきりと分かり出す。心の奥底で見下し、必要としてないのがよく分かる。
「どうせ俺なんか」と思うことも数多くあった。

友達もそれなりにいたし、彼女だって居た。
多分見た目はそこそこフィーバーしている遊び人。
だけど真の友情を勝ち得たことも、真面目に恋愛した試しもない。
いい加減な人間は人付き合いもいい加減で、そして周りにもいい加減に扱われるのは関の山。
身を持って知った経験。まさしく因果応報である。

自分が傷つきたくないから、相手の悪口や注意はできるだけしないようにする。
相手が自分を必要としてないと勝手に思い込み気分を悪くし、勝手に嫌気が差す。
自分が期待されると「俺に何を期待してんの」と身構える。
頼りにされるのは苦痛だから期待にも答えたくもない。
そんなことでは真の人間関係など勝ち取ることができようか。

元々恋愛は長続きせず、遊び感覚で適当に女の子に声をかけ
飽きたら別れを切り出し、逆に振られのくり返し。追いかけないし追いかけてこない。
努力もなければ努力されるような立場でもない。感謝しなければ、感謝される人間でもない。
中途半端な立ち位置。矜持も悲しみも喜びも無ければ人は成長しない。
無駄にすぎる大切な時間。流れる時間を呆然と見つめて過ごす日々
２０代前半の日々はどれほど空虚で無意味だったか。

精神は堕落し、そしていつしか孤独を好むようになる。
「俺とつるもうぜ」とか「遊ぼうぜ」と言われて断れず億劫になる。
そしていつしか誘われなくなる。自分で邪険にしておきながら、ふて腐れる。
「本当は遊びに誘いたい・・。」でも自分から誘うと相手は気分よくしないと勝手に思い込む。
ますます孤独が好きになる。でも実は寂しがっている臆病者。
孤独を選んでいる癖に、楽しく友達と馬鹿騒ぎしている人を見ると嫉妬する。
女と幸せそうにしている奴を見ると嫉妬する。
自分は一体何がしたいのか分からない。そしていい加減な自分を決して認めようとせず虚勢を張って
他人ではなく自分を誤魔化し、汚点や弱点を隠すことだけを考える。

顔を四六時中合わせる結婚なんて、俺には興味がわきようがなかった。
今の便利な時代結婚は必ずしも必要とは限らない。家事や洗濯なんか
自分一人なら全然時間がかかる作業でも無い。
適当に働いて定年退職まで自分のためだけにお金をしこたま貯めて
老人ホームで生涯を閉じる。そういう人生だってアリだろと思っていた。
独身は今でも悪とは思わない。結婚を絶対必要であり正義と考える人間とはあまり関わりたくない。
それは時代錯誤である。結婚はもはや必要に迫られてするものではない。
相性がすべてだと思う。それがなければ無理にする必要はもはやない。

結婚そのものを懐疑的に見ていた自分ではあるが、結局結婚した。
これも人が持つ力というものか。それとも自分が勝手に成長して考え方を変えたのかは分からぬ。
１年持てば良しの恋愛も、８年に及んだ。もはや奇跡とも言える。
こんなクズでも結婚してくれるのならと・・・思っていたら、相手も望んでいてくれた。
これも奇跡である。人生本当に・実に・誠に分からぬものである。

自分は真の我慢を知らない。
人生３０年、正直周りに迷惑をかけて好き勝手生きてきたと思う。
子供ができた今から先は本当の我慢が始まると思う。
大好きな競馬、大好きな旅行、大好きな外出、大好きな買い物、大好きな・・・。
色んなことを制約され、我慢に我慢を重ねる子供中心の生活となると思う。

２０代の頃に比べればはるかに我慢強くなったと思ってはいるが
実際、これから未知の世界に足を踏み入れることになるだけに
まさか嫌になったりしないよな・・とか思ったりする。
結婚後は二人で週末は色々楽しいことをやってきたが、
これからはそうはいかなくなる。
果たして身勝手に楽しくやってきた自分に、親になる立場の辛さを我慢出来るだろうか・・。
とても不安である。仕事だって安定した仕事ではない以上続くとは限らない。

もっとも、楽しみもあることは付け加えておく。
ただその楽しみも理想や夢物語だけにとどまり、
苦痛ばかりにならないか・・それだけが不安なのである。
そうなるとスケールの小さい自分はたえられるかどうか・・。
よき父親になれるかどうか・・。
未熟な部分が時折垣間見えるのが、また苦痛で仕方ない。

とりあえず、毎年当たり前のように行っていた日本ダービーを初めとする
大好きな競馬場参戦はしばらくお休み。
５年ぶり仕事休みで行けると思っていた有馬記念も出産予定日で中止。
というより、妻がしっかり出産を迎えるようにサポートしなければならない。
まだまだ囁かではあるが我慢がいよいよ始まった感じがする。
頑張れ自分。そして強く在れ。