逝きし世の面影

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免税の消費税『ゼロ税率』と、免税でない消費税『非課税』

2010年07月11日 | 経済
『払う消費税。もらえる消費税』

与党だった自民党の中川秀直政調会長(2006年)や党、政府税調は『2010年代半ばまでに消費税10%を実現することが必要』と主張しているし2010年総選挙のマニフェストにも消費税10%増税の必要性を掲げている。
現与党民主党管直人首相も自民党と消費税10%増税で話し合いを選挙後に行うと語っているし、景気回復優先(当面の消費税増税反対)のみんなの党の渡辺代表も無駄の削減後の消費税の増税に言及する始末である。(消費税に反対しているのは共産党など極少数)
ところが『広くみんなが公平に負担する消費税』との政府や自民党、民主党、みんなの党、大手マスメディアなどの一致した主張は、一部は正しいが大きな抜け道(正反対の部分)が隠されている。
大金持ちも貧困層も区別することなく全く同じ税率で、日本国民全員が等しく平等に負担する(払う)消費税とのうたい文句と『消費税の実体』とは違う。
『同率の税率で国民全員が負担』は大嘘で、正しくは『同率の税率で消費者全員で負担』するのが消費税なのです。
似ているようだが『国民全員』と『消費者全員』では、一字違いで基本原理が大違いになる。
そのために一部の特定の者(消費者と看做されない企業、業界)にとっては『払う』どころか正反対の『貰う』(還付される)税金になっているのです。
この不都合な真実を政府民主党や自民党、マスメディアは絶対に語ろうとはしない。

『消費税の「非課税」はまやかし』

現行の消費税が悪税であると言われる所以は高額所得者よりも低所得者に負担が重くなる逆進性であると言われている。
これを緩和する必要から、食料品など生活必需品に対する消費税の非課税範囲の拡大が議論されているが、現行消費税を見る限り非課税は、『よりマシになる』よりも『より悪くなる』可能性の方が高い。
今の消費税の現状を見てみよう。
世界的に例を見ない過酷な税制として日本式消費税は、無差別絨毯爆撃風に病院での妊婦の出産や歯科治療などの診療費や授業料など教育費にまで税金をかけていて、全ての商品やサービスに課税されているかの如く見える消費税ではあるが、現在でも『保険診療を含めた一定の医療費』については非課税になっている。
ところが、lこの『非課税』方式にこそ日本式消費税の根本的な問題点が隠されているのです。
なんと、消費税の非課税制度により『税の負担??』が出来て仕舞い、大きく病院経営を圧迫しているのです。
何故、免税目的のはずの『非課税』方式なのに。日本型消費税では過酷な『税の負担』が生まれるのか。?

『ゼロ税率と非課税とは全く違う』

消費税は、個々の商品や流通、サービス等の付加価値に対する税金であるが、税金を『納付する者』と、税金を『負担する者』とが同一では無いので、『直接税』ではない。
『最終消費者』が全額負担する、『間接税』の性格を持っているのです。
間接税としての日本の『消費税』は、取引が生じたときに個々に課税がなされ、流通過程における各段階の中間取引の事業者であっても、それぞれが消費税の納付を行う制度である。
このように最終消費者に辿りつく以前の中間での取引でも消費税を個別に計算して遣り取りする仕組みにもなっており、そのために中間取引業者(最終消費者の代理で)が払った消費税は全額が控除の対象となるのです。
ここが消費税が制度的に複雑で、ややこしく皆さんが混乱する所以である。

『原則、消費税は最終消費者が全額支払う』

納付税額は,課税売上高に対して税率5%を乗じた金額から,仕入れ時に支払った税額(5%)を控除して得られる
消費税とは、全てに対して其々に別々に課税が行われる。
同時に各段階で仕入れ時に『支払った消費税』は、消費税の納付時に控除(払い戻し)が受けられるのです。
日本式『消費税を課さない』筈の『非課税』制度とは、『最終消費者』(患者)に提供した役務提供に対してのみ『消費税を課さない』という風に、日本では限定的で、摩訶不思議な解釈になっているのです。
欧州諸国では日本のような『非課税』ではなく原則消費税の『ゼロ税率』を採用している。
何処が違うのか。?
欧州の付加価値税のゼロ税率(保険診療費×0%=0)も、日本の消費税非課税(0円)の保険診療での窓口支払での患者の消費税負担額は0円で『同じである』となる。
ところが医療機関側は大違いで、欧州型の0税率では病院側が負担している薬品会社とか問屋等の仕入れ段階ですでに支払っている消費税は還付されるので、病院と患者双方の消費税は『0円』で負担はない。
日本型の『非課税』とは実に不思議な制度で、消費税を払う『最終消費者』が今までの患者ではなく、突然唐突に医療機関であると看做されて『消費税の原則』(最終消費者が全額負担)どおり、病院が薬品会社等に既に払っている消費税は1円も払い戻されない。
そのために今の非課税制度のままであると消費税の10%増税分はまるまる医療機関の負担となり経営を圧迫する。

『キャノンやトヨタは消費税増税で笑いが止まらない』

ところが輸出では保険診療の非課税扱いではなく『消費税の0税率』になっているので仕入れ段階の全ての消費税の支払い分は(実際に支払った中間業者ではなく)輸出企業一社に払い戻されているのですから、消費税は増税すればするほど輸出大企業の取り分も大きくなる。
現状の5%の消費税率でも輸出上位10社の消費税の還付の合計額は1兆円を超える巨額な金額であり税率がアップすればするほど払い戻し金額も増える仕組みになっているので、これでは経団連が消費税増税に賛成するのも納得できるというものだ。
日本の消費税では『輸出』についてのみ、最終消費者に消費税を負担させない仕組みであるゼロ税率『真の意味での非課税』(完全非課税)が行われているのです。

『消費税の国庫納付率は50%』

税務署に消費税を納付するのは企業や業者など事業体であるが、支払っている『実体』は事業体ではない。
消費税の根本原則は『最終消費者が全額負担』なので、事業者ではなく全ての一般市民の消費者なのです。
消費税の最大の問題点はこの、『税金を支払ったもの』(個々の市民)と『税金を税務署に納付するもの』(企業や業者など事業体)が同一でないばかりでなく、多くの場合には利害が相反する関係にあることでしょう。
これで何も問題が起こらなければ、その方が不思議すぎて可笑しいといえる。
一般消費者から『消費税』として徴収されている『消費税の総額』と実際に国庫に入る『消費税の総額』が同じではなく、必然的に『益税』(企業の取り分)が生まれる事は大問題でないだろうか。?
集められた消費税は欧州のように個々の商品伝票で厳密に管理される事はなく、実際の実効税率との間に大きな乖離があるが政府による統計すらないのが現状で、上村敏之東洋大学経済学部助教授によると半分は企業・産業界の利益となっているとの恐るべき調査もあるぐらいです。
消費税ですが、『益税』が生まれないように欧州のように多少面倒でも完全に伝票管理を行う方式に改善するべきである。
それとも(直接税方式の)完結型取引税(流通税)として個々の消費税の控除をなくして、極低率の『売り上げの0・何%』を支払う仕組みに簡略にして『売り上げ』から自動的に消費税が確定する仕組みに作りかえる必要がある。
それとも商品価格と完全分離して税務署に消費者が直接納税するなどの方法に変えない限り、今のような納税段階で消費者から集めた『税金』の半分が『益税」として何処か(業者や企業)に消えるなどの不正が罷り通る、到底先進国とは言いがたい第三世界以下の不道徳で不公平な制度は改善されないだろう。

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国民は一円も払いたくない! (伴睦)
2010-07-12 14:11:31
日本のGDP大凡530兆円を基に考えますと、内数で輸出総額がザックリと50兆円でその部分の消費税(5%)2.5兆円が申告した輸出企業に毎年還付されている訳です。
更に、考察しますと、この輸出総額と経常収支分の15兆円を差引いて、465兆円で消費税税収(5%)を試算しますと、約23兆円となりますが、実際発表されております消費税税収は約10兆円ほどです。

預貯金へ回る部分もありますが、ご指摘される
『消費税の国庫納付率は50%』は、その通りと言えます。
各流通での取引収益にも消費税が含まれるので、おっしゃる『益税』もあると思いますが、大きな部分は現行の「消費税法」の持つ「あいまいさ」が生み出しているように思えます。
制度上、納められていない消費税が多くあるということです。所謂、「脱税」です。

財務省の狙いは、「制度があいまいな」内に消費税率を25%程度まで引上げて、後に、制度を補正しさえすれば絶対額で税収の50%以上を消費税で補完出来るマジックを労しているに違いありません。

企業も個人も、誰だって、余分な税金を一円だって払いたい者はいませんのに・・・


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合法的な脱税行為 (逝きし世の面影)
2010-07-12 17:22:50
>『余分な税金を一円だって払いたい者はいません』<

が、社会とは全員が担ぐお神輿と同じ精神で、いくら重くても全員が平等に負担するなら我慢ができるし、社会的に是非とも必要な事柄なら我慢するべきでしょう。

ところが我が日本国という名のお神輿ですが、普通の市民は全て単なる消費者であるので『担いでいる』(消費税を払っている)のですが、
ところが担ぐどころかみんなとは逆にお神輿にぶら下がっている輩がいる。
あるいは最初からお神輿の上に乗っていて全く担がない連中が大すぎるのです。
現在の日本の消費税ですが、そもそもの仕組みが曖昧で構造的に脱税が出来る仕組みになているのです。
消費税の本場で長い歴史がある欧州では、このような日本のような曖昧に制度を作って組織的構造的な脱税行為が発覚したならば、ギリシャを見れば分かるように間違いなく市民みんなが怒り狂って警察署とか税務署は政府官庁は、いまごろ軒並み焼き打ちにあっていますよ。
1ユーロでも益税が出れば自分で支払った消費者市民が怒りただでは済まさない、大問題になる。
だから消費税徴収時に完璧に書類を管理して全額納付する仕組みに出来上がっている。
日本のような税金が業者の懐に入るなど言語道断。話にもならない。
欧米社会では『脱税』は反社会的な行為であると考えられていて経済犯としては重い懲役刑か罰金など刑罰が課されますし、中国ではもっと厳しく多分死刑ですよ。
何故日本ではこれほどまでに杜撰ないい加減な消費税が導入されたかは不思議で不思議でなりませんが、過去に日本で一度だけ終戦直後に取引高税という名の税率1%の一般消費税が導入されたのですが、評判が散々で一年で廃止されています。
何故廃止されたかの原因ですが、直接の税務署に税金を納税する取引業者や企業の協力が得られなかったのが大きい。
このために一年で廃止されたのですが、日本の財務省としてはこの時の教訓から納税する業者の利益になる(消費者の利益に反する)ように制度設計(わざと益税が出るように)したのかもしれない。
この敗戦直後の消費税では仕入れに支払った消費税分の払い戻しは無く『益税』が生まれる仕組みにななっていなかったのですよ。
だから一般市民(消費者)も取引業者も利害が一致しているので全員が消費税に反対したが、
今の日本の制度では合法的にに利益(益税)をえている業者や企業や商店が生まれる仕組みが最初から設定されているのです。
何らかの取引業者は、何らかの益税の恩恵に浴しているのですから、普通の一般消費者とは利益が一致しないのです。
日本の消費税とは欧州の消費税とは名前が同じだが中身が正反対。何とも社会精神的に堕落した不完全極まる腐敗した納税システムですね。
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伴睦さん、コメント有難う御座います (逝きし世の面影)
2010-07-13 11:24:06
>『輸出総額がザックリと50兆円でその部分の消費税(5%)2.5兆円が申告した輸出企業に毎年還付』<

この部分は少し数字が違い、
消費税の控除(還付)は輸出に限らず全ての国内流通でも其々の取引で生まれているのですが、これは仕入れ価格の中の消費税分が必ず控除される仕組みなのです。
例えば、100円のアイスクリームの消費税は税率5%なので消費者が払う税は額5円ですが仕入れ価格を60円とするとこの時にもやはり5%税率で消費税は3円です。
ですから税務署には5円-3円(仕入れの消費税額が控除される)=2円となり小売店の納税額は消費者から受け取った5円ではなく2円しか納税しなくて済むのです。
(売上額が一定以下なら減税処置があり、そもそも1000万円以下なら納税義務そのものがないので全ては益税として国庫には入らない)

ですから輸出の場合には消費税は税率が0税率なのですが、控除(払い戻し)は輸出商品全額の金額にではなく『仕入れ価格』に対する消費税なので50兆円として仕入れ原価が6割と仮定すると2・5兆ではなく、ざっと1・5兆円になります。
この金額から分かる事は輸出上位10社で1兆円超の消費税の還付を行っている今まで知られている実績から分かる事実は驚異的です。
日本の輸出業とは多くの企業が参加しているように見えているが、実は金額的には実質十数社とか多く見積もっても数十社の有名企業が独占しているのですよ。
それ以外の輸出企業は微々たるもので日本国の輸出事情は超寡占状態であるということなのです。
今のような80円台などと言うような信じられない円高の為替相場で、日本国内の部品会社や労働者は中国などの安い労賃の地域や国と否応なくなく競争させられているのですが、全ての原因はこれ等の十数社の日本企業の国際競争力の抜きん出た驚異的な強さが影響しているのです。
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