議論するときによもめる原因として、複数の要因が絡み合っているというのがある。関係していることが一つだけだとすると話は単純である。ただ一つの原因や要因についてのみ、分析し議論すれば結論を導き出すことが出来る。しかし、複数の要因が絡み合っているとすると複数の要因を考慮した上で正しい結論を導き出す必要が出てくる。前回も話したように、そのような場合においてどのようなものを正しいとするかで実は対立が起こる。
印象的なイスラム教徒の民主主義発言で紹介したように、原理や理論を忠実に信奉している人たちが、複数の要因を考慮して導き出された結論に納得できないということがよく起こる。民主主義を信奉している人たちが、民主主義に反対する人たちを弾圧するのではなく、複数の要因を考慮して得られた民主主義的な政治制度を信奉する人たちが、それに反対するより民主主義の原型に近いものを信奉するということが起こる。このようなことが起こると、本来の民主主義に近いものが正しいと考えている人に取ったら、なぜ本来の考え方に基づくものに反対しそれよりも遠いものをそれを理論に基づいているものとして支持し、本来の思想に近いものに反対するのだろうと考えることになる。
しかしながら、そのような結論にいたるのは物事を総合的に考えているからで、その結果複数の要因を満たすものが正しいと結論付けられているのである。しかし問題は、本当にその結論が正しいのかどうかということだろう。複数の要因を考える必要があるかといって、それだけならば複数の要因が関係する非常に広い範囲が正しい答えが存在し得る可能性がある場所となる。しかしながら、その中でどこが正しいかを決定する必要がある。そういう難しい問題を抱えているといえる。