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SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

膵癌診療ガイドライン2013

2013-10-30 | 治療
2013年10月に科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013が金原出版から刊行されました。私もこのガイドライン改訂委員の一人でしたので感慨深いものがあります。

今回の改訂では、なるべく新しいエビデンスを取り入れました。例えば、膵癌切除後の補助化学療法としてはS-1が最も推奨される、術中照射は有効性が認められない、などです。次回の改訂までにも新しいエビデンスが沢山出ることでしょう。より有効な術後補助療法、術前化学療法は有効か、重粒子線は有効か、などについても明らかになっていると思います。

石井進著「鎌倉武士の実像」

2013-10-24 | 雑感
鎌倉武士の実像という本を読みました。平安時代末から鎌倉時代における、相模国や武蔵国を始めとして多くの武士の生活や、さまざまな事件について書かれています。驚いたことに、相模国の国府が、一時伊勢原市にあったことをこの本で初めて知りました。その後国府は現在の大磯町に移ったそうです。確かに伊勢原市は、神奈川県の真ん中にありますし、相模の三の宮である比々多神社もある歴史のある町であることを再認識しました。

オレたちバブル入行組

2013-10-21 | 雑感
話題のドラマ「半澤直樹」の原作である池井戸潤著「オレ達バブル入行組」を読みました。ドラマと大体は同じストーリーですが、ドラマでは話を少し変えた部分があることが分かりました。私も実はドラマの「半澤直樹」を見ていたのですが、あの水戸黄門的な流れがやや気にはなっていました。現代の銀行を舞台にはしているものの、明らかに勧善懲悪ものでしたので。それにしても、以前読んだ池井戸作の下町ロケットでもネジが話題になっていましたが、何かネジにこだわりがあるのでしょうか?

上腸間膜動脈神経叢浸潤のある膵頭部がんに対する手術

2013-10-16 | 治療
膵頭部がんはしばしば上腸間膜動脈(SMA)周囲の神経叢に直接浸潤します。さらに進行すると神経叢だけでなくSMAの血管自体に浸潤することもあります。例えて言うと、がんが血管に「噛みつく」のです。ですから、SMA神経叢浸潤を綺麗に取り切るには高度の技術が必要です。

私は最近、SMAへのアプローチ法として、前方または左側からのアプローチを行っています。こうした進行膵頭部がんではSMA神経叢だけでなく門脈浸潤もあるため、通常の右側アプローチでは、腫瘍の門脈浸潤部がSMAの上(腹側)になり視野を塞ぎます。一方、前方・左側アプローチでは、SMAは門脈の左側となり門脈浸潤部はSMA操作の視野の邪魔になりません。SMAの左側後方まで浸潤する進行がんではこのアプローチ以外ではがんとSMAを剥離することは極めて困難です。私の手術の最大のモットーは「良い視野」ですので、今後も膵頭部がんではSMAに対して前方・左側アプローチを行う予定です。

網野善彦著「里の中の中世」

2013-10-12 | 雑感
この本は、平安末期から鎌倉時代の茨城(常陸国)の各地域の武家の興隆を述べています。実は私のルーツと考えられる中郡氏、那珂氏、大中臣氏なども登場します。この一族は源氏の御家人でしたので源氏の時代は勢力があったようですが、北条氏の時代には力を失いました。中郡氏は恩賞で幕府から出雲に土地を得て移動した人が多かったようですし、那珂氏は茨城の北部に勢力をなんとか確保したようです。こういう土地の所有に関しては、当時の訴訟の資料が残っているのでわかるようです。武士の時代ですから、武力で土地を取り合う時もあったようですが、当時も法治国家であり訴訟も多かったようです。