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SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

池谷裕二著「脳には奇妙なクセがある」

2013-01-29 | 雑感
東京大学大学院薬学研究科准教授で脳科学研究の日本の第一人者である池谷裕二先生の新刊「脳には奇妙なクセがある」を読みました。以前から池谷先生が述べている脳機能における身体性の重要性はもちろん、オカルト的なこと、幽体離脱、睡眠術などさまざまなトピックスについて論文データを引用しながら楽しく解説しています。以前、私と早稲田大の河合先生で企画した研究会に講師として池谷先生をお招きした時に、音楽と空間認識の話が出たのですが、今回の本にそれに関することが書かれていました。とにかく楽しい本ですのでお勧めです。

米国臨床腫瘍学会ASCO GI 2013

2013-01-25 | 学会
2013年1月24-26日、つまりまさに現在米国臨床腫瘍学会が開かれており、膵がん切除後のS-1(TS-1)の有効性が発表されます。膵がん切除後にS-1を半年間服用した場合の2年生存率は70%、5年生存率は45%前後、生存期間中央値は4年以上になるようです。膵がんに対する大規模な臨床試験としては初めて50%近い5年生存率を達成していることは高く評価されます。

なぜこれほどS-1が効いたのかは分かりません。一つの可能性としては、S-1が経口薬であり小腸で吸収されて、門脈経由で肝臓にも持続的に流れたことに関係があるのかもしれません。膵がんでは肝転移が非常に多いので、これを抑制できたのかもしれません。これからも静岡がんセンターを中心とした研究グループのデータの発表に注目したいと思います。

膵がん術後補助療法におけるTS-1の優れた効果

2013-01-24 | 治療
静岡がんセンターを中心としする研究グループは、膵がん術後にTS-1を半年間服用することにより、これまで標準治療とされていたゲムシタビンを半年間投与するよりも良好な生存率が得られたことを発表しました。多施設共同臨床試験の結果、膵がん術後の2年生存率が、ゲムシタビン投与群で53%だったのに対しTS-1投与群で70%と著明に改善したのです。

既にTS-1は、切除不能の膵がんに対してゲムシタビンと同等の効果があることが多施設共同臨床試験により証明されています。また、現在日本では膵がん術後の補助化学療法として普通にTS-1を使用しています。しかし、TS-1の方がゲムシタビンよりもかなり良い結果であったことは驚きでした。ただし、TS-1は欧米人にはほとんど使われませんし、日本人でも全身状態の良い人でないと半年間投与するのが難しいという問題点があります。

吉田修一著「太陽は動かない」

2013-01-22 | 雑感
太陽光発電に関する日中のプロジェクトを巡る、裏の情報戦争を中心としたサスペンスタッチの小説です。吉田修一氏のサスペンスは初めて読みましたが、息つく暇を与えない展開でかなりテンションが上がりながら読み終えました。映画化される気がするのですが、ずばり主人公は西島秀俊さんの印象です。

辻村深月著「ロードムービー」

2013-01-21 | 雑感
辻村深月氏の短編小説集「ロードムービー」を読みました。何れも子供や若者の心の動きを丁寧に描いています。辻村氏は、私と同じ千葉大学を出ていますが、その小説を読んだのは初めてでした。もう1-2冊は読んでみたいと思います。