関心空域 ━━ す⊃ぽんはむの日記

元「関心空間」の日記(引っ越し後バージョン)です♪

何がどーなったらピーカン☀️の朝7時半、だだっ広い海の上で「こんな船舶衝突」が起き得るんだろうか❔❔❔

2018年11月06日 | 日記
地中海、と言っても広いので、各所に「海や湾の名」が付いている。仏領コルシカ島の北に拡がる一帯は「リグリア海」。約1ヵ月前、このリグリア海で巨船同士の衝突・油漏れ事故があった。


フランス/コルシカ島の沖約30キロで10月7日朝(午前7時30分頃)、貨物船同士が衝突した。衝突したのはチュニジア航海公社の貨物船「ユリス」号と、リベリア船籍の「CSLバージニア」号。衝突で「CSLバージニア」側の燃料槽に穴が開き、推定600㌧余りのオイルが漏出した。事故海域は『コルス岬およびアグリアート海洋保護区』の一角であり、環境への被害が懸念される。
船名に冠した「CSL」とは、運航するギリシャの船会社《キプロス・シーラインズ》の略である。


何ともまァ、見事にコンテナ船の横っ腹に⚡貨物フェリーの舳先(へさき)がグサリと突き刺さっている。刺した側の「ユリス」号は、直後に自力で後退を試みるも「抜けなく」なって立ち往生してしまったようだ。刺された側の「バージニア」号は浸水しかねなかったが、破れた船腹から(逆に)燃料が噴き出したことで船自体が軽くなり、衝突時より船体が浮いた。「ユリス」号は相手の浮力で鼻先を持ち上げられ、ますます舳先が(引っかかって)抜くに抜けなくなった…という格好である。




さて、ここでクイズを1問。

船舶免許を持ってるかたなら問われるまでもない「初歩中の初歩問題」なのだが……この、刺されてる黒いバージニア号と、刺してる白いユリス号。2隻が衝突直前まで航行していた(もしくはエンジンだけでも回してた)とすると、衝突の責任はどちら側にあったと考えるべきか❔

正解は……バージニア号。でっかい方の、船腹を突き破られた船の側が「悪い」。

理由は、当然ながら「海の交通規則」に基づく。1972年に定められた『海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREGS)』に準拠した日本語法『海上衝突予防法』第15条には…
 
  2隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。

…とある。洋上では基本、右側通行だから、ぶつかりそうな船が見えたなと思ったら、相手の船が右手に見える船の側が右に舵を切り、右方向から迫る船の船尾後方へと回り込み、衝突を回避する。

今回衝突した二隻は❔ と見れば、この場合の相手の船が右手に見える船の側とはバージニア号側である。したがって、バージニア号はユリス号の船首の前を横切ってはならず、それを(違反して)横切ったから「優先権」のあるユリス号の進路を無謀にも封じ、結果、ユリス号はバージニア号に激突を余儀なくされた……と(発生状況を)読み取れるんである。

…だが!!!

物事は得てして、そんな単純ではないワケで。


報道によれば、何とCSLバージニア号は「停泊中」であったという。

航行していなかったところへ、一方的にユリス号が突っ込んできたというのだ。これでは、さすがにユリス号の分が悪い。晴天の朝、辺りは見晴らし良くなかったのだろうか❔

しかし念のためググってみると、意外な事実が。衝突の起きた朝、コルシカ島の日の出時刻は「7:27」。10月の事故海域は、あろーことか1年で最も日の出が遅くなるのだ。この特異性の原因はズバリ、「地形」。 リグリア海の10月は、太陽が東方(ユリス号から見て左舷方向)遥かに連なるアペニン山脈の、なかでも高い峰(みね)越しに上ってくる時期に当たるのだった。

辺りの海原は(高峰が西方にかざす長~~い影に阻まれ)まだ暗かったらしい。おそらく衝突まっしぐらの7時20分過ぎ、ユリア号から左舷=イタリア半島側の地平を望んでも、こんな感じの明るさだった?のではないか。


とは言え、ユリス号ほどの現代航行制御装置(ナビゲーション・システム)を備えた貨物船が、周りが薄暗かったくらいでバカでかぃ船に突入していっちゃ、言い訳にも何にもならない。まさかとは思うが、ユリス号の操舵者は「バージニア号が(接近してくる)自船を見て、相手を優先して通すためにユルユル減速し(停船しようとし)ていると錯覚」したのか。それで「"なら、ぶつかるハズない" と妄信したまま直進し続けた」ために激突の危険察知が(著しく遅れ)手遅れになったのか。

互いの進行方向と速度が一定のまま接近する状態を、俗に「コリジョンコース」と呼んだりする。視界のなかで相手(の車両、機体など)が動いてないように見えるから、視神経が麻痺って「真っすぐ接近してくる」という動態認識ができず、ただ「遠くに留まってるだけの、背景の一部」に思い違えてしまう。いよいよ目前に迫ってきて、「あ! 来た」と気づいた時には衝突している。

だが、いくら薄暗がりの大海原だから、って……今回みたく巨船同士の遭遇に「コリジョンコース」なんて落とし穴が潜んでるだろうか。そもそも、一方は「同一速度で同一方向」に動いてたんじゃなく「ゼロ速度ゼロ移動」。全く動いてさえいなかったのだ。


ぶざまに横っ腹に大穴掘られた「CSLバージニア」号

考えれば考えるほど、謎だらけの衝突事故だ。バージニア号の船長は怒り心頭だったらしく、チュニジア船側の「操船を厳しく非難した」と(衝突翌日の)外電は結んでいる。さしもの日本語なら「あいつら、どこに目ぇ付けてんだ!!」…的な台詞でも(取材記者に)吐いたのであろう。


事故後も就航し続けるユリス号↑ 。

「貨物船」といっても、前半分の階上には客室建屋がドン❕ と載ってる。"甲板1階"上に満載するコンテナの、運搬トラックのドライバーたちも(コンテナと一緒に)宿泊させて海を渡るので、こんな船形となった。日本の感覚で言うと、むしろ「ジャンボフェリー」と呼ばれそうなジャンルに入る船舶だ。

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