関心空域 ━━ す⊃ぽんはむの日記

元「関心空間」の日記(引っ越し後バージョン)です♪

春夏ニッポンの味覚💗 さざえ🐚の肛門は「どこ」にある❔ ─── その身体の構造に密着して迫ってみた。【排泄映像🎦あり】

2019年08月07日 | 日記

世のなかには、人の眼には「食材」としてのみ映ってて、それ以前に「生きもの」であったことが忘却されがちな動物が、数多く存在する。

それは、進化史という時系列上の「より下等な動物」に属するほど顕著で、もっと言い切れば「爬虫類・両生類」という「ふだん日本人が食べなれない動物類」の主たる含有層を以て、徹底的な「意識の断層を成している」ように思う。つまり……カメやトカゲは「観察&愛玩するペット」としてアリだが、魚類以下になると俄然、「自然に湧くもの」「特定の鑑賞魚を除き原則、食いもの」という一方的に過ぎる見方が、臆面もなく意識の先に立ってしまう。

どのくらい心底に沁みついた先入観か❔と言うと、それは植物に対して「特定の観葉植物・花卉類を除き原則、食いもの」と認識するのと同じくらいだ。何せ、そうした魚介類を公然と海中から強奪することに対して、われわれは良く「捕獲する」という動詞でなく、「収穫する」という動詞を(いとも無意識に)宛がう。哺乳類であるクジラだと意識して「捕獲する」という語を用いるのに、一般の回遊魚は「勝手に海で"採れる"雑草の延長」❔とでも言わんばかりだ。まして、それより旧い原型動物……貝やらウニ・ヒトデの類いとなれば「なおさら」だろう。

こういう「感じかた」は「人の愚かなる驕(おご)り」の一環だ、と筆者は思う。当ブログでは常々、「現代人の思い上がりを糾弾する"文明"批判」も論じてきた。

今回の記事では、「言うまでもなく、貝は地球古来の生きもの」という当たり前の目線に立って、巻き貝サザエの身体に「全うな生物としての」スポットライトを当ててみることにした。きっと、ただ「調理の対象」としてだけ眺める平板な景色とは、また違った世界が見えてくるように思う。

先ずは、さざえの身体をCTスキャンして、3DCGで描画した2枚の「立体図」からだ ──。

[図A]:さざえの「前部」拡大図
 

向かって右手、頭蓋触手だの口蓋だのが付いてる辺りが、いわゆる「さざえの足」と言ってる部位で、巻き貝から表に覗かせた『胴体(=身)』の、アタマ(?)が岩場にぴたりとへバり付いてノロノロ進む、その接地部位だ。調理のとき、この「足」の接地部分は(蓋といっしょに)スライスして棄ててしまう。

口蓋は肉質で(まだしも人にも)食えるが、そのすぐ奥の「歯舌」という部位は硬くて表面が鑢(やすり)状に研がれており、さざえの一番「硬い臓器」。包丁で切り出して、やはり棄ててしまう。調理の用語で「くち」と呼び習わしているのは、この「歯舌」だ。さざえはこの臓器で、捕食した肉片やら骨片を「粉々に」すりつぶして胃へと運ぶのだ。言わば、天然界で原始「最強のシュレッダー」である。

さて、ところで。 上のCG図でターコイズ(青緑)色に塗られた部分については、若干の解説が要る。

「外套膜腔(がいとうまく・くう)」

「外套膜」によって空けられた"隙間の空間"のことを、こう呼ぶ。ターコイズ色に満たされた領域は「ただの空間」で、厳密に言えば「さざえの体外」。ふだんは、外の海水に浸されている…と考えてほしい。

じゃ、その「外套膜」とは何か。単刀直入に言うと、貝殻の内側一面に張られた「薄皮(うすかわ)」のことだ。皮、というくらいだから、もともと「さざえの身体」の表皮、皮膚として生成されている。発生(=体の成りたち)的に言うと、さざえなど巻き貝類は、生まれながらにしてゴツゴツいかめしく分厚い貝殻を持ってたワケじゃない。最初は、「外套膜」という半透明の「皮膜のマント」で全身を包んでいた。この膜からは(外側に向かって)カルシウム分が絶え間なく分泌されるので、それが凝固し層を重ねるうちに、徐々に「巻き貝」の形を呈してゆくのだ。

ちなみに、最後まで(半透明な)外套膜のまま❕❔海中を縦横に泳ぐようになった種族が、巻き貝類の親戚こと、イカ類である。

この前胴部の手前っかわには、その外套膜を維持補修するための成分を分泌&供給する「外套膜腺(がいとうまく・せん)」という器官が複数、整列する。当然、さざえの胴体と周りの薄皮=外套膜は、この外套膜腺を介して「つながっている」格好になる。

さざえを調理する際は、この外套膜腺が並ぶ辺りに"金べら"や指をコジ入れ、ぐりっ❕と周回させることで「身と貝殻を切り離す」…… が、生物学的に捉えた「さざえの身」とは、貝殻の内側に薄く透明に張っている「外套膜も含めて、さざえの身」、なのである。

[図B]:さざえを全部、貝殻から抜き出した全体図
 

さざえの「身の全体」スキャン。この、貝殻の中の方にウネウネ詰まっている部位に関し、さざえメニューのド定番《つぼ焼き》にすると……あろうことか「ここは排泄物(うんち)。汚いから食えない」という人が時折、いるとか。もちろん、(排泄物だ、という認識は)明瞭にして歴然たる誤りだ。この部位を(単なる)食いものとして捉えた場合、その栄養価は誠に高い。

しかし、だ。

ニッポンという空間量の限定された世間的に「正しいとされる理解」の中身も実は、100%学術的に正しくはない。

ちなみに日本の世間じゃ、(この部位を)どう言ってるだろう❔ おそらく、典型的な説明は『クルクルと回しながら身を取り出すと、最後に出てくるのは生殖巣。これが緑色なら雌、クリーム色なら雄』、というものだろう。この、21世紀初頭における「巷の主流説」、まったくの間違い✖…ではない。答としては、60点くらいの出来だ。同様な論調を説くに当たっては、「生殖腺」という用語を口ぐせにしてる人もいる。

…が。

これまた発生学的に言うなら、件(くだん)の部位は上のスキャン画像にある通り、「消化腺」と呼ぶ器官をベース(基底)としている。消化腺とは、胃や腸などの消化機能を助ける消化補助物質を生成分泌したり、消化過程の物質を留め置いたり、胃腸が消化して栄養分をなったものを貯蔵したりする、要するに「消化いろいろサポート器官」の総称だ。

高等生物になればなるほど、ここは「境界のぼんやりした、大きな塊り」ではなく、次第に十二指腸、肝臓、脾臓、すい臓…等々といった「具体的な専門臓器」に分離独立してゆく。だが、さざえなど原始の【Gastropods|腹足網】では、あいまいな「ひと塊りの腺臓器」のまま、漠然と消化酵素を生成したり、栄養分を貯め込んだりしてるのだ。

特に後部の、貝殻の奥に行けば行くほど(サポートする胃腸からは位置的に遠ざかるワケだから)、同じ「消化腺」と言っても役割は「栄養を貯め込む」すなわち、「栄養の貯蔵庫的な部位」で占められるようになる。学術資料によっては消化腺の前方部分を「中腸腺」と呼び変え、後方を「肝臓」ならぬ「腎臓」❕❔ と表記している図説すら見られる。※腎臓は上掲[図A]の通り、消化管や消化腺とは機能的に隔絶して(別位置に存在して)おり、この記述は「肝臓」との混同では?ないかと勘繰られる。

[図C]:「口~消化器/消化腺~肛門」のラインを黄緑で色分けした模式図
 

模式図/出典: ©小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

そして…!

基本「栄養の貯蔵庫」だからこそ、自ずと、さざえの成体では同部位に沿うように「生殖腺」が生成されるのだ。消化で余った養分は「まっさきに子孫繁栄のために」割り当てるのが、生物の根幹。精嚢なり卵嚢なりと言った「生殖のタネ」はここで優先的に養分をもらい、ぬくぬくと肥大し、やがて消化腺の後方スペースをぺちゃんこに押しつぶし、その場所に取って代わるワケである。

だいたい さざえ漁なるものは個体の多くが繁殖期で、身の奥にスジコやシラコが詰まってる時季に集中して行われる。結果、身を貝からエグり出したら、奥からこぼれ出るのは「ぷりぷりの生殖腺」ですよ、という「ざっくりとした解説」「調理上の知恵」が世間一般に定着した……というのが真相なのだろう。

だが、さざえを"その生涯"を通した「生きもの」としてみれば、さざえの「どれもこれもが」年365日、常にスジコやシラコを膨らませてるワケじゃない。そこは基本「消化腺」から始まった部分で、栄養豊富な「肝=きも」に相当し、旬の季節ともなれば生殖腺でパンパンに満たされてる「極上の部位」なのですよ🎵 というのが、輪郭こそ朧(おぼろ)だが「100点満点に近い模範解答」なんである。

さてさて。

もう一度、ふたつ前の[図B]を見直していただこう。

中ほど上部に「肛門」という名称が見える。が、(現実には)そこに「さざえの肛門」があるワケじゃない。この図の「肛門」とは、外套膜を除いた、いわゆる調理上の「身(み)=さざえ本体」の肛門管が、ここから"外へ"出ていることを示している。

身の外に出て❕❔ 肛門管よ、どこへゆく?

答は、外套膜上を這い伝い、貝殻の「出口」近くでプっツンと切れている。その切れ口こそが、本当の意味での「さざえの肛門」である。オドロくべきことに、さざえの肛門は「身の側に付いてた」んじゃなく、「貝殻の内側に、ひも状の管(くだ)として貼り付いていた」のであったw いゃどーりで、さざえを何個も調理した人も「ピンと来てないハズ」である。

模式図上に「肛門」を配置すると、[図C]青いマルで示した部分のようになるが、実際には"ここまで"貝の入口真際まで(肛門管の末端が)出てきてはいないようだ。この図はゴチャゴチャし過ぎてて「外套膜腔」が判別しにくいので、自分なりにアレンジし直してみたのが、下に掲げた[図D]
 
[図D]す⊃ぽんはむが描き直した、さざえの解体模式図
 

実際の調理で、さざえの身を貝殻の中から捌(サバ)き出すときには、指なりヘラなりで中身を「ぐりっ」と引っ張り出すと、必ず3ミリくらいの太さの、灰色(もしくは薄茶褐色)の紐(ひも) がピロピロ~っと付いて取れてくるのがワカるはずだ。それが、「まさかのさざえの肛門管だったんである。ご納得いただけたろうか。肛門から放たれた糞は、外套膜腔を通って貝殻の外へ吐き出される……そう、もちろん「巻き貝の奥に💩うんちが累積する」なんてのは冗談もどきの都市伝説✖で、さざえの身の奥の奥=「さざえの肝(きも)」は栄養価バツグン💗の『芳醇つぼトロ』、なのであった。
 

それでは、もうひとつ最後に……「巻貝の肛門は、身でなく貝殻内側の縁(へり)に付いてました」と説明しても、まだ多くの皆さんは半信半疑💧 だろう。

なら、論より証拠❕❕  巻貝の脱糞シーン トドめ❔としてご覧いただこーではないかっ


 
 
【番外企画】さざえ"探偵団"─── あの「なぞのグルグル」は、さざえの何なの❕❔❕❔
 
さて。本記事を締めくくるに当たり、あとひとつだけ「さざえの身体(からだ)」番外企画を。

さざえを一度でもリアルに捌(サバ)いた経験のある人なら、たいてい「意識のどこかで引っかかってるアノ疑問」に関し、クリアに⚡解決させておきたい。それは、さざえの「身の左側面」に幾何学的な渦を巻いている「なぞのグルグル臓器」についてだ。

けっこー、生物学的には「どーでもいい、重要性の低い臓器」のようで^^; これについて具体的に解説された資料はネットの内外とも、ほとんど存在しない。

やっとのことで探り当てた説明文が、下記の模写図を掲げるPDFファイルだ。カリフォルニア大学はサンタクルーズ研究所の、電子書庫の片隅にあった。その模写図には奇しくも、さざえと同じ部位に、さざえと瓜二つの「ぐるぐる」が描き込まれていたのだ…❕❔

[図E]:ニシキウズガイ科の身体構造
 

で、この資料を著述した研究者に拠れば、このグルグルは「スパイラル・シーカム」だと記されてる。

そんなカタカナで言われると(どこか妙に)カッコいい響きの臓器であるが、直訳すると「渦巻き盲腸」だ。…おいおい、盲腸かよ❕❔ である

どうも最終結論としても、「ここは盲腸」ってことで正解らしい。この、ぐるぐるしてる渦巻の正体は「さざえの腸管の一部」で、ぐるぐるキレイに巻いたあげく中央部分で「行き止まり」。人間の虫垂なんかより、はるかに「ワケ分からん、無駄に長~~く伸びた腸の"最長の枝"」なのだとか。

ただ、一応は「さざえの名誉のために」釈明しておく必要がある。

これらの、一見「無駄に」思える盲腸とか虫垂。人間の場合は「もはや用済み」で退化しつつある❔臓器だが、生きもの全般にとってはけっして「そうではない」。ごく身近で高等な哺乳類ですら、盲腸や周辺の腸管が「らせん状」あるいは「渦巻き状」に巻きまくって発達してる種族が数多くいる。

[図F]:らせん状、渦巻き状の盲腸を持つ動物たち


地球上の動物は食物を(最終的に)自らのエネルギー源に換えるために、腸内に膨大な数の異生物=腸内細菌を寄生させてる。人間の飼ってる腸内細菌は多様に専門化した「適性バラエティに富む」者たちなので、たとえばという有害なバイキン軍団が腸内に侵入して3割の腸内"住民"が活動を削がれても、残りの7割の"平気な住民"がそのロスをカバーして軍団を無害化できる。

ところが、ヒトほどには腸内細菌の活動適性が多様化してない多くの動物は、ある種のバイキン軍団を(誤って)食べてしまった場合、これら腸内細菌の「ほとんどが死滅」という体内アルマゲドンさえ襲いかねない。

最新の研究成果による有力な仮説は、盲腸が実は、「非常事態に備えて造られた、腸内細菌のための緊急退避シェルターである」とする推論だ。さざえもキツネもウサギも、この重篤な「食当たりを回避して、腸機能のダメージを最小限に抑え込む」ために、異様にグルグル巻いた「盲腸空間」を抱えてきたのである… そのように想いを馳せてみれば、さしもの「さざえのグルグル」も気味悪さが薄れ、言わば「抗菌力に優れた強健な生体メカ」❕ として、多少は頼もしく映ってくるのではなかろうか。
=了=

タグ:サザエ,ぐるぐる,ぐるぐる巻き,砂抜き,壺焼き,刺身
 
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