陰謀論の訴求力

2019-08-19 12:41:18 | 感想など

 

この動画でも述べられていることだけど、陰謀論というのは、つまるところ宗教やイデオロギーと一緒で、世界をある統一的な視点でクリアカットに説明にしているから、訴求力があるんだよねえ(ちなみに科学も類似の視点から始まっていることに注意を要する)。

 

だから、それが都合のいい事実だけパッチワーク的に繋ぎあわせ、都合の悪い要素は無視するという欺瞞の上に成り立っている事実を指摘することはとても重要なのだけど、これまで数多くの宗教やイデオロギーが世を席巻してきたのと同じレベルで陰謀論というものの浸透力を考えないと、「なんでそんな馬鹿な話に踊らされるのか」程度の発想で対抗するのは極めて困難だろう(ということもあり、私は都市伝説偽史の背景にも興味があるわけだが)。

 

こういうフェイクニュース的なるものはこれからますます増え、それに踊らされる人の数も増えていくと私は思っている。そもそも背景に以下のような状態があるからだ。

1.多様性・複雑性が増している現代社会では不安が増大しやすい(アノミー状態)。この表出がトランプ現象やブレグジット、ル=ペンを党首とするFNの躍進などである。

2.情報が多いのはいいが、多すぎて処理しきれない

3.ネットの特性として、見たいものしかみないという傾向を助長する=サイバーカスケード
 (最近では、人工知能がこちらの履歴からわざわざ好きそうなものを選択して下さるので、この傾向はさらに強化されている)

 

1の傾向について、今後対立が激化することはあっても、歯止めをかけるのは今のところ困難であろう。似たようなマインドを持った小さなコミュニティ単位でまとまることはあるかもしれない。しかし、国というより大きな単位でそのような状態を作るのは無理だろう(北朝鮮みたいにすればまあ話は別だろうが)。となれば、スコットランドやカタルーニャの独立問題のようなものが各地で起こって分裂が加速するか、あるいは外交や安全保障などのために国家内はバラバラだけど外殻は残すという違いはあっても、モザイク状態が加速するのは避けられない(というか、近代という「大きな物語」が終焉した後でポストモダンという「小さな物語」が乱立する時代が来るとは数十年前から言われ続けていたわけで、これは今さら驚くに値しない)。どちらにせよ、社会的流動性と複雑性が高まるために人の不安は増大し、1の傾向は促進されことすれ鎮静化するとは考えにくい、ということだ。

 

2は3とも連動するが、情報過多・時間的制約・リテラシー不足というトリアーデの結果、個人の思考・嗜好がある方向に偏っていき、それがどんどん加速化されるという傾向は歯止めがかなり難しい(ちなみに陰謀論とレッテル貼りの横行は同じ要因から生まれていると考えられる)。人工知能の発達によって人間の労働時間が減り、古代ギリシア人みたいな状態になったなら、先のトリアーデのうち「リテラシー不足」だけが残り、それも市民教育という形で社会の中に防遏のシステムを組み込めばある程度手当てできるかもしれない。がしかし、その状況下では「一部の超大金持ちとその他の貧乏人」という構図になる可能性が高く、放っておけば暴動とシステム破壊が生じる可能性は十分あり、中毒性のない薬物(?)で見たいものを見させて快楽に耽溺させ、(自分で選択しているように思わせて)反抗の意志をなくさせる、とかそんな感じになるんではなかろーか、と思ったり。まあ要するに、今の視点からすればどっちにしろディストピアじゃないですかねーという話である。

 

あれこれ述べたが、その他にも「専門知への疑惑」とか『日本国紀』を支持する人たちの層など様々な興味深い話も出ていた。前者については藤村新一の旧石器捏造(学会という名の象牙の塔)、後者については中島岳志の動画(調査からすると、いわゆる「ネトウヨ」的な発言やその支持層は、実は中年男性が多い)を紹介だけして今回は終わりとしたい。


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