ひぐらし憑落し編:詩音と沙都子の*について

2008-05-11 21:53:53 | ひぐらし
憑落し編とは、ひぐらしのPS2版オリジナルシナリオのこと。以下の内容は完全にネタバレなのでこれからプレイする人は要注意。






<詩音と沙都子の死亡イベントについて>
憑落し編では、鉄平殺害を目撃してしまった沙都子を詩音が匿うという流れになっており、後に北条宅で二人の死体が発見されることになる。全体的にホラー・グロが緩和されているPS2版ひぐらしの中では、割とインパクトの強い部類に入るイベントシーンとして記憶している人もいると思うが、これについてちょっと考えてみたい。


刺された詩音の上に喉を掻き毟った沙都子が横たわっている状況から、祭囃し編までプレイしていれば、何が起こったのか推理するのは簡単だ。詩音に匿われる前に鉄平殺害を見た沙都子は、既に症候群悪化(崇殺し編ラストを想起)のスイッチが入っていたと推測される。そして目を覚ました沙都子の前にいるのは、まさに先ほど殺人を行っていた詩音…沙都子には彼女が自分を(口封じに?)殺そうとしているように見える。実際には詩音に害意がないため無防備で、暴走した沙都子に正面からざっくり刺されて死亡したと思われる。そこからの細かい経緯はわからないが、そのまま沙都子は末期症状で喉を掻き毟り死亡。かくして件のイベントCGが出来上がり、というわけだ。


なお、第三者(という山狗)が殺した可能性も考えられるが、そんな瑣末なところに罠をしかける意味がわからないので、この推論は却下される(ついでに言えば、澪尽し編における鉄平とのアナロジーは成立しない。なぜなら鉄平は富竹の代わりに5年目の崇りで死ぬという役割・必然性があるが、沙都子にはそれがないからだ)。


まあそんなものはすぐ想像がつくわけで、そのイベントにどんな意味・効果があるのかが問題なのだ。もちろん推理との絡みもあるが、ここではテーマとの関係について考えてみたい。このイベント、あるいは憑落し編の特徴の一つは、沙都子が発症して死ぬことにある。沙都子が鉄平に捕らわれ、それを助けようとする話は崇殺し、憑落し、皆殺し、澪尽しと四つあるにもかかわらず、憑落しだけ沙都子が発症して死ぬという最も悲惨な(と一応言っておこう)終わり方になるのはなぜだろうか?


そこで、以前取り上げた憑落し編のテーマ、「不完全な団結と団結の害悪」が思い出される。要するに、殺人という「間違った方向」で団結してしまえば、単独の時(崇殺し編)より悲惨な結果(死)を生み出すことを暗示しているのではないだろうか(言葉にすればありきたりだが、「団結そのものが大事なのではない」ということだ)。


もう一つとして、沙都子の死ぬ姿を見せることは、お魎の「沙都子を無理をしてでも助ける必要があるのか?」(そのくらいで死にはしないだろ)という趣旨の発言に対する答えにもなっていると思われる。沙都子は、すぐに救わなければ、「人形のようになる」どころか死んでしまうことさえありえる(正確には、本来は死こそ必然であって、他の話で描かれていないに過ぎないのだが)。この描写を念頭に置くと、「時間をかければそのうち何とかなる」という態度はますます不適切なものとなり、積極的かつ迅速に救出しようとする姿勢が結果として肯定される。すると、反響の大きかった皆殺し編の団結イベントに必然性が生まれることになるのだ。


以上が、憑落し編における沙都子と詩音の死亡イベントの意味と効果である。もう一度まとめると、まず推理としては沙都子の末期症状による詩音の殺害及び喉を掻き毟っての自殺と考えられる。そしてそれを描いた狙いは、間違った目的で団結すればより悲惨な結果を生んでしまうことを描き、そして皆殺し編の団結イベントに必然性を与えることであった。


ああ…予想外、というかいつも通り長くなったので、残った分はまたの機会に…

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