一昨日の記事では、自分磨きがシミュレーションパートとして組み込まれている「ときメモ」を恋愛ADVとして最初にプレイし、その後にADVパートのみの「同級生2」をプレイしたことで、自分の中にある種の観念(疑念)が形成されたと書いた。それはすなわち、「相手が今のビジュアルを作り上げるのに相当な努力をしていることを自明のもののように考え、一方で自己陶冶の努力をしないのは欺瞞の極みでは?」というものである(ちなみに私がやりたいのはルッキズム批判でもポリコレ的主張でもないことを事前に述べておきたい)。
いやもうね、こういう突っ込み視点を持っているならそもそも恋愛ADVに向いてないって話で(笑)、まあだから「恋愛ADVの主人公が鈍感な理由」やら「心の底からIしてる」なんて記事が生まれてもくるわけだが、なぜか初めて買ったエロ本が18禁PCゲームを紹介する『メガストア』だったことや、友人が謎の置きゲーマンだったことにより、こういう観念を持ちながら、むしろ「同級生2」の後に全年齢版で移植された「同級生」やら「放課後恋愛クラブ」なんかのプレイを通じて、PCの「放課後マニアクラブ」や「Natural」なんかをプレイするようになった・・・というゲーム歴はさておき、ここでは冒頭で触れた疑念について掘り下げてみたい。
なお、以降の話は恋愛ADVに限らない話なのだが、そちらの事例を元に説明していくので、先に補助線を示しておくと、これは漫画などの原作でブサイク・ブスとされているようなキャラを、ドラマや映画でイケメン・美女が演じる際に指摘される違和感を想起すればよい。もちろんそれは、ブサイクなキャラについてイケメンではない俳優・女優を当てるよりも、イケメン・美女を配した方がそれ目当ての観客を呼べるだろうといった製作者サイドの計算も考慮しなければならないが、そういった現象が起こる要因・違和感などを念頭に置きつつ、以下を読んでもらった方がよいだろう。ちなみに、恋愛ADVをプレイしていたのは社会人になる前なので20年近くが経過しており、取り上げる作品が古いものばかりなのはあらかじめご了承くだされ。
さて、前回も触れたように、ここで取り上げたいのは、恋愛ADVにおいて、「デブなキャラ」も「ブサイクなキャラ」も攻略対象としては登場しない、ということである。確かに、太ましいキャラが好きな人向けにそういうデザインのキャラしか出てこない同人ゲーなんかはあるし、また「ブス専」と呼ばれる人向けのAVも存在はする。しかし、そういうコンテンツでは逆に「そういう傾向のキャラしか存在しない」のであり、スレンダーな体型で一般的に美少女・美女と呼ばれるビジュアルのキャラクターが存在するゲームの中で、彼女らが攻略の(もっとあからさまに言えば性的な対象)として登場することはない。
先に紹介した同級生シリーズのように、そもそも登場さえしないことも多いが、仮に出てきたとしても、以前紹介したflutter of birdsの草間茂美ように、それはあくまでギャグキャラ・お邪魔キャラ≠攻略対象なのである。
ただ、もう少し微妙な事例も存在する。それが同級生2の加藤みのりや「Piaキャロットへようこそ!!2」の縁早苗である。
前者はそのBGMからしても「ブス」≠攻略対象のカテゴリーに入るようにも見えるが、実は「鈴木ひろ子」と名前を変えて近所のコンビニでバイトをしていて、その鈴木ひろ子は加藤みのりが「メガネを外して髪を下ろした美人といういかにもあるあるな設定を持っている(ちなみに、家計を支えるため校則で禁止されているアルバイトをやっているためらしいが・・・ってそれホンマに大丈夫なんかいな😅なお、このメガネを外したら・・・は少女漫画も含め一種鉄板の表現技法で、この精神性を掘り下げ始めると記事がいくつ必要になるかわからんため、ここでは触れない)。
で、このキャラクターは最初主人公にハッキリと「私はあなたのことが嫌いだ」と言い、「チャラチャラしていて女の尻ばかり追いかけているヤツだから」と理由を告げられる。まあ本作の主人公のキャラクター的にそら言われるわという感じなのだが、主人公が加藤みのりにも鈴木ひろ子にもある種同じように接していった結果、主人公が彼女が思っていた「かわいい子ばかり追いかけている軽薄な人間」ではない考えるようになり、主人公に好意を抱くと。
で、これで普通に結ばれたら何のことはない話なんだけど、詳細は省くがこのキャラクターが「鈴木ひろ子」として自分のビジュアルを利用して主人公の気を引こうとした結果、今度は主人公が憤慨するという展開が発生するのが興味深い(ここに関しては、「鈴木ひろ子」に声をかけてきた西園寺有友に「加藤みのり」として告白&玉砕した背景などもあるので、少し混み入っている部分ではあるが)。すなわち、「君は人を見た目でしか判断しない俺を非難してたけど、君も自分のビジュアルを利用して俺の気を引こうとしたじゃないか」とまあそんな具合。結果的に主人公が加藤みのりの好意を「試す」ようなイベントを通じてハッピーエンドになるわけだが、重要なのは、少なくとも製作者サイドがこういう「美醜を巡る表現の欺瞞」を多少なりとも意識していた点だろう。
そう言えば、同級生にも同級生2にも「いかにもモテなそうなオタクキャラ」が登場し、特に同級生2の長岡芳樹は見た目の問題以前に完全な犯罪者(盗撮や脅迫を行っている)なのだけれども、これは色々なキャラを登場させるとともに、主人公のキャラクターを日陰から見る視点・立場を製作者が十分に理解していたことの証左とも言えるだろう(主人公が実は異星人wという設定の「下級生」もそうなんだけど、このシリーズの製作者サイドは、その恋愛ADVの世界を「あくまで都合よくノイズの排除された空間でしかない」という点を何とか盛り込もうとしてきた節があり、そのあたりは臭作で登場する第四の壁も含め、elfという会社の作品の特徴として分析してみてもおもしろいかもしれない。そういや「ELLE」は完全に内容がトータルリコールだしねw)。
ただ、少なくとも自分の知る限り、こういった精神性が後の恋愛ADVに継承されることはなかったという意味で、一時代の徒花に終わったと言えるのではないだろうか。
さて、次に後者の縁早苗を見てみよう。
おかわりいただけただろうか・・・身長は結構高めの163cmとして、体重がそれを超える64kgとなっている。ここからもわかる通り、彼女は「ぽっちゃりキャラ」として作中でも描かれており、ホールで働いている際にその体型を客にからかわれ、それが嫌で厨房担当になったという背景を持つ(ちなみに体型を気にしてジョギングを欠かさない)。
ここからすると、「デブキャラ」とまではいかないにしても、ちゃんとそういうキャラを登場させているじゃないか!という反論が出るかもしれないが、むしろ逆だと思っている。というのもこのキャラ、立ち絵はもちろんエッチシーンを含め、どこをどう見ても太ましい描写がないのである。また、イベントや話題としても、彼女の体型は出会って間もない頃のエピソード的な話で終わっており、それが後に掘り下げられる機会は皆無だ。別にそれを強調しろと言うつもりはないが、その部分が彼女にとって「気にしているけどキャラクターの重要な一要素」である以上、その特性が皆無なのは疑問符がつく。
結果として、縁早苗の体型の話は「キャラ付け」以上の意味を持っていない。とすればこれは、キャラデザインの段階では発案されたものの、描写の中でチューニングされたことを意味するのではないか?との推測もできる。仮にこのような見立てが正しいのであれば、縁早苗というキャラクターの描かれ方は、恋愛ADVでも「デブキャラ」的なるものが描かれていることの証左というよりもむしろ、その描写がいかに抑圧されているかを逆に示しているように私は思うのである。
というわけで今回は以上。
次回は、ここでの記事にも関連させつつ、「泣きゲー」やSchool Daysについて触れていきたいと思う。
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