「ドキュメンタリー」番組は歴史編纂の夢を見るか

2024-02-20 11:26:45 | 歴史系
 
 
 
テレビでやってるヤツってついマジモンだと思い込みがちだけど、実際には短くまとめるためにもキャッチーにするためにもあんれやこんやれと加工しまくってるからね・・・てことを思ってない人間はさすがにもう絶滅危惧種だと信じたいところだが、しかしここに「ドキュメンタリー」という看板がつくと、相も変わらずそこは演出なきものを描き出してると思い込んでる人間が多く、そのハレーションがSNSが急速に拡散して無視できない悪影響となっている、というお話。
 
 
まあここについては、「嘘を嘘と見抜けない人は・・・」というお定まりのセリフだとか、一方で組織内にいる人間の謎の上から目線の痛さとか色々興味を引く部分があるわけだが、よくよく考えたら、歴史とかでもそういうことって散々起こっているようなあと思ったり。
 
 
 
 
 
 
 
まあ建国神話とか、皇帝の列伝なんかドラマチックさの演出でこれほどわかりやすいもんもないよねえ。ただ、ここまでぶっ飛んでると逆に盛ってることが明らかなんで、盛り方のパターンとかその意図を考えることも容易だったりはするんだけど。
 
 
 
 
 
 
この動画は、「史料批判なしで描写された内容をファクトとして論理的に考えていくとどうなるか?」の好例である。たとえ論理的であっても、考察の材料が間違っていれば、どんどん明後日の方向に話が進んでいくということやね。
 
 
信長の幼少期っていうと「うつけ」ってイメージが強いかもしれんが、その大きな要因は『信長公記』の首巻だけえらい内容がぶっ飛んで錯綜もしてることからきていて、かつその首巻てのは太田牛一が自分で書いたものじゃなく、後から付け加えられた可能性が高いんだよなあ。
 
 
『信長公記』の著者である太田牛一は信長の傍にいながら通時的に記録していったものをまとめており、多少の錯綜はあるもののある種地味で手堅い史料となっているのとは大きく異なる、てことやね(もちろん牛一の書いたものが全て正しい、なんて話ではないので悪しからず。オフィシャルな情報でも、以下の動画のようにそれが盛られてるなんてのはよくある話だしw)。
 
 
 
 
 
 
さらに言うと、その『信長公記』を元にして小瀬甫庵てヤツが逸話なんかを加えながらおもしれー読み物として作り上げたのが『甫庵信長記』なわけだけど、実際そういった江戸時代の軍記物の内容が世間のイメージを作り、さらには公教育まで侵食したりしてたわけだから、まあ笑えない話ではある(ちなみに『信長公記』と『甫庵信長記』の関係性がわかりにくいなら、『三国志』と『三国志演義』を想起するとよいだろう。まあ前二者は成立年代にほとんど開きがない点が違うけどね)。
 
 
つまり、幼少はうつけだった信長クンが、後には室町幕府や朝廷、仏教勢力など旧来の権威を否定しながら天下を統一していくという人物理解なわけだが、ここでは下げて上げる構造・・・いやむしろ、彼は始めから「枠に収まらない生粋の革命児だったんや!!」なーんて見方もできるかもね(・∀・)
 
 
まあこうして作られた信長像は、後に一次資料を用いながら、「藤原信長」なんて名乗ったり、劒神社のようなものを保護したりした他、幕府や朝廷という旧来の権威についても相当配慮しながら政策を運営したことが明らかになってきているし、何だったら蘭奢待なんかへのミーハーな憧れとかもある、というおまけつきであるw
 
 
まあ何が言いたいかというと、かつての「うつけ」が天下人になる!なんてのは冒頭の「ドキュメンタリー」的なものの構造と類似したものがあり、あるいはドラマや漫画の人物描写にはこういう技法ってしょっちゅうあるものだけど、そういう構造なんて理解してるって思いながら、割合簡単に人間って騙されるもんだよねえって話である。
 
 
それはおそらく、虚構の話に限らず、世の中の話って自分の都合のよい所だけ話したり、あるいは相手が理解できるようにそもそもall redactedな感じでしか説明しないってことが忘れられがちなんだろうなあ(宗教とかに見られる「不合理ゆえに我信ず」なんて発想は一見馬鹿げてるんだけども、要するにガッチリ整合的な話は、読む側をたばかるために都合よく加工されてるって懐疑的態度があるわけよね)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
前に「学校であった怖い話」を何周もプレイすることで、物語の先読み・メタ読みをするクセがつき、それが歴史への興味や「ひぐらしのなく頃に」にハマることに繋がったと書いたが(だから偽史の編纂と都市伝説を同列に語ったりもするわけで)、それをより一般化して色々な分野をブリッジする書き方をすればまあこんな感じでアル(・∀・)と述べつつこの稿を終えたい。

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