犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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端渓の箱書き

2018年03月20日 | 書の道は
[あらすじ] 自宅に、端渓が有った。
池のところに梅の彫刻が有るので、あんまり実用的な気がしない。
使ったら洗いにくそうだ。


友だちが、漢字のほうの先生を紹介してくれた。
使ってみろ、と言う。
硯は濡らすと、石が違った表情を表す。
それは是非見てみたい。

しかし、書を能くしたという祖父が使っていたかも分からない物を、
ずぶっずぶの素人の私が汚すわけにもいかない。

「観賞用だと、漆が塗ってある場合があります。
濡らすと水を弾きます。」なるほど。

言われて、仔細に眺めていると、梅の枝の間に、墨の痕が見えてきた。
と、同時に先生からも、
「使ったかもしれないですね。墨が溜まるところが少し黒いです。」と言ってきた。
写真をよく見てくれたのだろう。

彫刻のせいで洗いにくそうだ、と思ったとおりなのだろう。
枝のわきに、墨が着いている。



蓋の裏に、箱書きを見付けた。

「河邊将軍 恵存
汪兆銘 敬贈
癸未春日

他山之石
志士之心

兆銘拝題」

オウチョウメイ?
記憶のどこかにある名前だけど、何の人だっけ?

癸未は、みずのとひつじ。調べると、1943年だった。

祖父は、陸軍の大将であった。
悪名高いインパール作戦を敢行した牟田口中将を止めなかったことで、
愚将コンビと呼ばれる。
作戦は1944年だ。

汪兆銘を調べたら、当時の中国で、日本寄りな立場の政権を執った主席であった。
一国の主席が隣国の大将に、偽物を贈るわけもない。
直接の付き合いが有ったのだろう。

「対の硯を贈る事に意味があるのでは?
普通なら一面贈るのに。」
と、先生は言う。
お互いを志士と認め合う気持ちだろうか?
ここで他山之石と言っているのは、どこの事あるいは誰の事なのだろうか?

先生は更に調べる。どこかから引用してくれた。
「また、比喩的に他の時代の人物や外国人に対しても使われることがあり、
第二次世界大戦中に日本へ亡命したスバス・チャンドラ・ボースなどのインド独立運動家を指して
"インド独立の志士"とも呼んだ。」
「ここまで来て、3名の繋がりがあったように思えます。」

ふーむ、なるほど。
チャンドラ・ボースも汪兆銘の硯をもらってないかしらね。

つづく

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