高齢者の運転
10月14日の毎日新聞プレミアムメールに,精神科医和田秀樹さんの『なぜ堂々と許される!?「高齢者差別」』という論文が紹介されていた。
わたしは,9月27日付のブログに『エイジズム (年齢による差別) 』についての一文を草し,その中で「高齢者の免許返上のキャンペーンは,「俺はまだ若い」という老々差別(老人の老人による差別)のエイジズムに対するものといえる。」と記し,これはエイジズムには当たらないという考えを述べた。
ところが,和田さんは高齢者に対する免許返上キャンペーンは,いわれなき差別であると主張されている。では,わたしの考えは間違っていたのかと,『論文』を読んでみたが,考えを変える気にはならなかった。
和田さんは,アプリオリに運転免許返上キャンペーンは高齢者差別だと決めて論を立てているように思われる。だから,その前提に都合のよいデータを集めている節がある。
例えば死亡事故のうち,運転者自身が死亡した割合は75歳以上が44%,未満が19%,他人をはねた割合が19%と44%で,高齢者の運転が危険とは言えないと言っているが,免許者に占める死亡事故を起こす高齢者の割合は,75歳未満者に比べて3倍になっていて,高齢者の運転が未満者に比べて危険でないとは言えない。また,他人をはねるのに比べて,自爆する方が危険でないなどとする,危険の質を比較することはナンセンスである。
和田さんは,ペーパードライバーの割合が30%であるが,生活に運転が必要な高齢者はその割合が低いだろうと推測している。ペーパードライバーの数を免許保持者から差し引いて,運転者あたりの事故数などを比べれば,免許者あたりの数値より,高齢者はより不利な結果になるのではなかろうか。
人口10万人当たりの一般の事故数が,85歳以上が498.4,75~79歳が372.1,21~29歳が414.8,20~24歳が697.2ということから,高齢者の方がかえって安全だと,和田さんは述べているが,この事故の頻度は0.5%前後で,統計的な有意差には至らないだろう。
また,75歳以上の場合,以上述べてきた統計には,すでに免許証を返上した人は含まれないはずである。もし,統計的にそれほど高齢者の運転が危険でないという結果が得られるなら,それは免許返上の効果であるともいえるのではないだろうか。
運転免許を返上した人に比べて,運転を続けている人の方が,認知症になりにくいということがいわれるが,認知症の危険を感じたり,気配を覚えたりする人の方が免許返上に積極的になるだろうと考えれば当然のことである。比較する母集団の質を考慮しないと,原因と結果が逆転することになる。
からだの機能が歳とともに衰えるのは自然の摂理であり,運転能力も当然低下する。免許返上のキャンペーンは,自信過剰への警告と素直に受け取るべきだろう。
和田秀樹さんは1960年生まれだから,まだご自身は後期高齢者ではない。いろいろな本をお書きになって,わたし自身は読んだことはないが,高齢者よもっと胸を張れとエールを送っているようだ。それはありがたいが,あまり無責任に応援すると迷惑することもあるので,気をつけられることを老爺心から申し上げる。
STOP WAR!
やはり自分がその年齢になら無いと分からないことがある。そう思いました。
年取ると言うことは、細胞が日々死んでいきます。できていたことが、生物学的に出来なくなる。わたしは自転車で、年に3回ころんだ時に、シニアカーに切り替えました。今は日々自分の体の老いを(能力の減退)を感じています。