夕空ノート

管理人、天野空流の日々を書き綴る場所です。出かけた際の写真などを中心に書いていこうと思います。

見えてきた。東京~アメリカ西海岸を2時間にするエンジン。

2007-12-01 23:35:07 | 宇宙
気付けば12月。
町中のガソリンスタンドの料金表示は恐ろしいほどの価格を表示し、いつのまにか、お菓子は減量。
なんだかんだで今年もあと1ヶ月です。



さてさて、現在東京からアメリカ西海岸までは飛行機で12時間かかる距離です。
しかし、その距離がたった2時間になる可能性がでてきました。


ニュースは12月1日のことですが、東京から米西海岸まで2時間で飛べる極超音速旅客機(全長60メートル、20人乗り)の基礎研究を行っている宇宙航空研究開発機構の航空エンジン技術開発センターが、極超音速旅客機に搭載する新たなエンジンの燃焼実験に成功したそうです。
このエンジンは日本のH2Aロケットエンジンの燃料に用いられている液体水素で、高高度で取り込んだ空気は1000度にもなるため、この液体水素を冷却に使い燃焼させるという方式。
この方法での燃焼成功は世界初。


日本とアメリカを2時間で結ぶという構想自体は40年も前からあるのですが、実現にはいまだにいたっていません。
2時間で結ぶためには、現在の飛行機の速度(マッハ0.8)では到底無理なわけで、今より早い飛行機が必要になってきます。

「コンコルド」という超音速旅客機をご存知でしょうか?
パリとニューヨークなどを結んでいたマッハ2.0での飛行が可能だった機体で日本でも導入が決定していたのですが、アフターバーナーでの加速による燃費の悪さ、定員が少ない、滑走路が長くないと離陸できない、さらに原油高騰、大規模事故、時間短縮よりも大量輸送の風潮となってしまったため、退役に追い込まれてしまいました。
このため、現在では超音速旅客機はなく、速さの面では前の時代に逆戻りという形になっています。

さて、今回燃焼実験に成功した極超音速旅客機の速度はというと、マッハ5。
音速の5倍にあたります。
現在のジェット機のエンジンはターボジェットやターボファンエンジンというもので、上空で取り入れた空気が薄いため、エンジン内のコンプレッサーで圧縮して天下するというタイプのものです。
しかし、これがマッハ5になると、空気を取り入れるだけで、十分に空気が圧縮されているため、ファンを用いることなく、空気の取り込み口を除々に狭くすることで、圧縮完了になるわけです。
この方式がラムジェット。
極超音速飛行ではこのエンジンが必要になってきます。
しかし、問題なのが、ラムジェットエンジンが最高性能を発揮するのは、飛行速度がマッハ3~5.5程度のときで、これ以上の速度になると、燃焼室の温度上昇により、燃料が熱分解し、「吸熱現象」を起こしてしまうのです。
こうなると、エンジン内が温度低下し、燃料の燃焼から発生した熱エネルギーで推進するエンジンとしては、致命的な欠点です。
まして、1000度の空気を取り込むなど問題外。
おまけに最高性能の発揮・・・どころか、マッハ3以下ではエンジン自体が作動しないため、離陸は別途の推進システムが必要になってきます。


この問題を各機関がクリアしようと努力しているところで、ひとつの方法が、「スクラムジェット」方式を採用すること。
何が違うかと言うと、ラムジェットでは取り込み口をしぼることによって、取り込空気が音速以下に減速しているのですが、スクラムジェットは取り込みから、燃焼、排出までが一環して超音速のまま行うというもので、マッハ5~15まで利用できるというものです。
しかし、これもまた、超音速での燃焼は燃焼が完了しない、意図しない化学反応などの可能性があり、ここも考えどころ。
これを実験中なのがNASAで、試験飛行(別の機体で上空まであげ、途中で分離、点か)では10秒での加速で、マッハ6.8での作動に成功しています。
ただ、これもまた、静止状態では作動しません。


一方今回試験に成功した日本の方式が、極超音速ターボジェットエンジン(予冷ターボエンジン)というもの。
こちらは、現在ジェット機で使用しているターボエンジンと仕組み的には似ているのですが、取り込んだ空気を液体水素(-235℃)で、冷却して、密度を高めることで、大きな推力を得るというものです。
空気を一端冷却しているので、飛行速度範囲が非常に広くなるのが利点で、マッハ0~6程度まで作動します。
今回の試験で燃焼が確認されたため、次のステップへと進むようです。


各機関が極超音速飛行エンジンを開発しているわけですが、これは旅客機だけのものではありません。
これはあくまで基礎研究。
各機関が目指しているのは、このエンジンを宇宙往還機に採用しようとしているわけです。
これは「スペースプレーン」と呼ばれる種類のもので、現在大気圏外へでるためにはスペースシャトルを利用しなければならないのですが、これは、打ち上げをシーンなどを思い浮かべてもらえればわかるとおり、機体以上の燃料タンクを搭載し、打ち上げも非常に大掛かりです。
これは、空気の薄い大気圏外のため、自身で、燃焼用の液体酸素を積む必要があるからなのですが、機体の自重に、打ち上げに必要な燃料+燃焼用の酸素→さらに重くなり、打ち上げ重量増加。そのために燃料を積んで、酸素を・・・
つまり無限ループとなり、打ち上げ重量は頭打ちになってしまうわけです。
しかも打ち上げが非常に面倒。
そこで、新たな発想として、飛行機のように離陸して、飛行機のように飛行して、飛行機のように着陸してしまうおうという、その発想が、スペースプレーンです。

日本のJAXAにもやはりこの計画があり、この極超音速機で完成したエンジンを使用することで、スペースプレーンも実現するといっても過言ではないわけです。
JAXAの計画では、このエンジンを搭載した機体の上に、さらに外宇宙へと出るロケットを搭載し、大気圏で分離、打ち上げのコストが非常に下がるというもの。
大気圏外へという話になると、NASAが実験中のスクラムジェットでは、速度別にエンジンを搭載するという必要性があるのですが、日本の予冷ターボでは、ひとつですんでしまうため、これにかかる期待は大きなものです。

・・・これからの進展に期待!



と、テスト前本来なら、さっと触れるつもりが、宇宙+飛行機ときてしまったので、いつのまにか長くなってしまいました(^A^;





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