ソノターネット2

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映画:十三人の刺客を見てきた

2010-10-04 23:21:52 | TV
 前情報何も無く、十三人の刺客という映画を見てきました。

 けいおん!が、二期になって商売丸出しになった感じだとか、大人気のワンピースもなかなか終わらせてもらえないみたいだなーとかブリーチもドラゴンボールも、と、アニメやマンガが商売のせいで作者の意向とは関係無いところで無理やり引き伸ばされるがユエのストーリーの無理、に嫌気がさしていました。
 で、映画はその点、決められた時間で必ず終わるので作者の意図をそのまま伝えられる媒体なのだなと思いを新たにしました。バイオハザードやアニメのヤマトみたいに節操無く続く映画もありますが。
 それまで映画は入念な情報収集のもとに意を決して見に行く感じだったのですが、テレビなんかと同じように「あ、面白そうだから見に行ってみよう」というのが良さそうです。

 帰ってきてから調べましたが、もともと1963年に公開された映画のリメイクということだそうです。これは知らないで行って良かった。


 映画の内容ですが、残忍極まるバカ殿さま(SMAP稲垣くん)が本家の老中になりそうなのですが本家殿様の意向なので異を唱えることは武士の道に反する、でも絶対やらせられない、ということで、バカ殿さまの家臣が、目をつけた「ココロがサムライの男(役所広司)」になんとかしてくれと頼み、頼まれた役所広司が他11人+1人を集めてバカ殿をやっつけようとする、という話です。
 最初、言葉遣いがかなり昔風で聞いていてよくわからず、登場人物もたくさん出てきたのでこれはワケワカランのではないかと思ったのですが、内容が上のように単純明快なので顔だけ覚えておけば大丈夫でした。
 しかし、バカ殿を稲垣くんにやらせようとした人は素晴らしい。あとで聞いたら稲垣くんはあの手の変な人の役が多いそうなのですが、なかなかキャスティングの時に思いつかないように思います。はまり役でした。

<そろそろネタバレ混じり>

 見ている途中で、なんかご都合主義だなと思って素直に見られなかったのですが、終わってみて考えてみたら理にかなっているものでした。例えば、バカ殿が参勤交代で戻るとき、あらかじめ先回りしておけばわざわざ雨の中馬を走らせたりすることもなく、相手方の家臣が待ち構えさせていた浪人に鉢合わせすることも無かっただろうに、と思ったのですが、いくつかルートがあるので実際に出発してみなければ作戦の立てようが無かったということですね。
 あと、こちらはハテナマークが消えないままなのですが、あわよくばバカ殿を爆殺しようとする仕掛けがしてありました。そこまでするなら(非武士道なことをやる気があるなら)もっと簡単な殺し方もあったように思うし、弓矢でもっともっと敵勢を弱めておいても良かったと思います。
 が。
 これは、初回版での13人対53騎の戦いを30分も映した、をはるかに上回る13人対300人を50分映す、の演出のためにやむをえなかったのだということだと思います。

 実際の日本刀は、「叩き切る」というのが正確な表現で、人間ひとりをたたき切ったらもう刃がボロボロなのだそうです。敵を細い路地に誘いこんで待ち伏せする場所に、新しい刀を大量に各所に挿してあったのを見て、お、リアル、と思いました。もっともあんな重たいものをあんなにぶんぶん振り回し続けられるのかという言っちゃいけない非リアルな部分はずっと続くのですが。
 13人軍の人の後ろに敵がいるのに斬りつけようとしないという、時代劇を見ていていつもシラケてしまうシーンはほとんどありませんでした。これが見ていてとても気持よかったです。無勢が多勢を取り囲んでいるので、無勢側はやみくもに刀を振り回せば良く、多勢側はうかつに斬りつけると取り囲んでいる反対側の味方を斬りつけてしまう可能性があるのでうかつに手を出せないのだな、という理解ができました。
 松方弘樹のチャンバラはやはり見事極まりないものでした。

 吹石一恵が二役を演じているのですが、二役なのか同じ人なのかがわからずいろいろ考えた分、映画に没頭できなかったのが損した気分(笑。公式サイトに人物相関図があり、そこで二役と明記はされていないけどそんな風に書いてありました。

 バカ殿をやっつけることができるのか失敗するのか、はたまた今時のストーリーのように失敗はするが味方がまさかの裏切りとか難しいことになるのかとか、最後まで予想がつかなかったので面白かったです(後半ほとんどチャンバラだし)。結末は一応この行までには書かないでおきます。

<ネタバレあり>

 いっとき、振り返れば奴がいる、でしたっけ。見てなかったけどそんな感じのどんでん返しまくりのテレビドラマがたくさんやっていて、普通ではないストーリー展開がすごい脚本、みたいに思われていた時期があったと思います。僕もそう思っていました。でも、刹那的な人気というか話題にはなるものの、結局は見終わったあとの後味が良くないとすぐに風化して行ってしまうのかなーと思います。本作は、初回版が1963年ということで、そんなめんどくさいことは無く、時代劇の流儀に沿って(見ている人にとっての)勧善懲悪で終わります。
 知らなかったからラストどうなるのかと思いながら見ることができたんですけど、知っていてもどういう終わり方をするのかというところは見所かもしれません。


 本懐をなしとげたら、殿様に反逆した武士は切腹するしか無いわけですが、生き残りが妻(?)のもとに戻ったらしきシーンで映画は終わります。そのように誘導するような役所広司のセリフもあったのですが、サムライの道を進んでコトをやり遂げたのにおうちに帰ったのがどうも奇妙な感じがしていました。それでこの記事を書くのにネットでいろいろ見てたのですが、「うん、これが正解だ」という感想を書いていた方のブログはこちらこちら
 世のため人のために決起したとしか見ていなかったのですが、ココロはサムライだけど退屈な日々を送っていた12人+1人が、同じく退屈でバカなことするしか無かったバカ殿をやっつけに行くという大義名分を受けて、「やったーおれサムライできるぜ!!」と喜んでチャンバラやって死ぬ映画。なるほど。
 で、名実ともに心底サムライやってみて、ハイわかりました。もういいや、サムライやめておうちに帰ります。という感じなのかな。
 見ていてどうしても思ってしまうのが、サムライ=サラリーマン、バカ殿=バカ上司、なんですよねー(笑。サラリーマンは「武士道」という、子供の頃から叩き込まれたココロで動き、サラリーマンは毎月のお給料で動く、というところが大きな違いなので、志のレベルもそれに応じて違ってきますが。あんなバカ上司に尽くすくらいなら会社辞めてフリーターでいっかーみたいな。
 深い。