七七ブログ

タダの詩人「七七」による人心体実験の記録 

カットアップについて

2007-11-29 01:08:11 | おしらせ
 カットアップの次のやり方を模索するために、
「落とし天狗文の」のストックを放出してしまおうと思いまとめてアップしてみました。
自分のカットアップを進化させていこうと思ったのは
コメントを書き込んでくれたXoufelmさんのコンピュータカットアップに触れたからです。

Xoufelmさんのサイト
Plants and Flowers
http://xoufelm.cocolog-nifty.com/blog/

教えてもらったカットアップ(?)サイト
圧縮新聞
http://pha22.net/comp/

「落とし天狗文の」第八回

2007-11-29 00:58:50 | カットアップ
 子供がぱっと顔を輝かせる。こんな場面、もう少し見ていたい。おれは言った。
「では由美。やっぱりわしは大天才だ」
しかしまだ小松左京がいる。弁明はえんえんと続いて、何も言えず、頭は乾燥してむず痒いし、苦笑している。でもおれの好みじゃない。風がないときは壁の方を向いてじっとしている。
 娘と何やかや話しはじめたおれを見て、突然主演の美人女優がやってきた。気ちがいを見る眼でおれを見るが、女の方がどれだけいいか。網に載せて焼いてやる。夕飯を食べて、執着心は失われ、女はガータベルトからコルトを抜き、土手の急な斜面を、やがてもう一羽がやってくる。共演者の人たちは本当にぼくに嫉妬して、常に腸内にガスを溜めておくよう心得ているのだそうである。このことはひたがくしにされた。
 美女は紬を着ていて、きっとして、「どんどん暗くなってきてるなあ。」などと泣きわめき、貴重な休日を売ったのだ。まーったくもう、やってもらわなきゃあ。暗闇の中で追いかけあい、悲しみのあまり全員死んでいたに違いない。
 
 父親が死んだ通夜の晩のことである。郵便局に二人組の強盗が入った。それは起らなかった。政治家は気落ちしたままで車に向かい、そこには手話通訳の女性がいたのだが、暴漢に襲われて貞操の危機に陥り、帰っていった。ゆっくりしか歩けず、降りていかないと公園を出られないのでそのまま進む。東京を離れ、相手に恋い焦がれ、どんな脅しにも負けず、ご苦労様でございます。
 ところが戦争が終わり、次第に遊びに夢中になりはじめ、しばらくしてから会いに行ったA氏に、わざとあんな言いかたをするんだろうか。
「お前の妻のからだを使わせろ」
このことばに胸を打たれ、手を休めるべきでありましょう。かえって本質を衝いている場合があり、驚嘆の思いで眺めたことがあった。

 陽子はプロトンである。風呂場で時どき石鹸を落す。二、三の文壇パーティーに出たが、面倒だから返事しないでいると、どこかからかすかに電話の音。ほっとしたものの、立ちあがった途端に貧血を起したお嬢様は、発作的な憎悪で力のかぎり由美を殴りつけた。
 いったん壊れた関係はもとに戻らず、A氏がなかばあきらめかけていた頃、追い打ちをかけてしまう。通常の挨拶のしかたも知らないのだった。まだ誰も警察に電話してないのだろうか、くれぐれも軽率な行動は慎むように。

 それもまた自分の夢だ。一瞬にして自宅のベッドの上ではないか。翌朝目醒めれば何も憶えていない。彼の名は死後に変えられ、土下座右衛門となった。
 以後、力の限り、故障してしまう。

「落とし天狗文の」第七回

2007-11-29 00:58:12 | カットアップ
 地下トンネルの中ほどで動けなくなってしまった。ここはもうだいぶ奥ですね。出てきたところを見た者はいない。
「ねえ。なぜ人を殺しちゃいけないの」
いささか気落ちした様子で、吹き出しの形で喋るのだ。だから彼は文書係として重用されていた。もし行くつもりなら自分も一緒につれていってくれと申し出てきた。小便したくなりゃあ、詰問する。気づいているようだ。自信が生まれ、慕われるようになった。
 鉄蓋を跳ねあげて三十九階へ出て見れば、複体蟹の恐怖を世間の人が噂している。電車は車止めを通り越して、被害者は瀕死の重傷を負うなどの事件があったものの、酒を飲んで酔っぱらい、その味の背後からは複雑系の客体蟹が別の物語の味を背負って出現する。金魚が口をあけたまま、深夜ひとりで納戸へやってきた。そのうちもっと無茶苦茶になってきて、パンティをひきずりおろし、腹の中では「アホやっ。アホやっ」と思い続けている。会議を中止または延期にしようかという話になったが、なあに大丈夫大丈夫。警察内部にも私どもの仲間がおるから、あなたは何に利用されるわけでもなく、この中からどれでも、免疫過敏症になって効果は次第に上昇する。その日に限ってなかなか見えてこない。だが、やらなければならない。おれも相手もついにふらふらになってしまう。彼のいた場所や歩いたあとはいつも紙屑でいっぱいだ。死んだ人間の霊魂を食べている。そして見すぼらしい身装りをしている。医者がとめるのもきかず、気に入らぬマッサージ師をそれまでに四人ばかり片輪にしていた。
 こうなってくると本人にはもはや純文学作家になる道しか残されていない。それまで彼の趣味はスカイダイビングであったのだ。「家に入れてやらない」といったようなことを言われ、寂しいだろうなあと思っていたのだが、約百二十枚の傑作ポルノを書き、だが完成に近づくにつれ、モノの虚しさを悟る。そして何通りもの自分の未来が見えてきて、包丁を振りかざしてボーイを追いまわすのだ。おれはそうならないように、いいことばを思いつかぬまま、今は泥棒をして暮らしている。テレビもなければラジオもない。時間が極めてゆっくりと流れた。そんなことをして毎夜のように遊んでいるうち、書かずにいられないのが作家の業というものだ。また幻覚や妄想があれば、捨ててしまうには惜しいので、A誌に送った。うけているらしい。その小説は時評で褒められたりもし、そうであればあるほど、おれはうんざりした。
 書類と本でいっぱいの1DKのわが家には、鍋の中に冷えた味噌汁が残っている。トロの色は紫になって、旨そうだった。ましてイタリア料理や韓国料理の大蒜の匂いなど、外国からどう思われるか。魂の抜け殻にしか見えないのではあるまいか。おれは机の上に飛び乗った。だが何も言えず……。

「落とし天狗文の」第六回

2007-11-29 00:12:58 | カットアップ
 四条の橋に腰掛けて、三人は際限なく絶叫し続ける……。どうすればいいのだろう。社員全員が集まった。源氏名もほとんどがカチューシャ、気がつけばうす暗くなってきている。このまま飢え死にしては可哀そう。それともあれは演技なのだろうか。女の姿かたちをした蚊なのである。健康には甚だ悪いと言わねばなるまい。歩行者も振り返り、おれも家にひとりでいる妻のことが気になったが、相手を見るなり、黄色と混ざりあって、それで味が損なわれることもなく、中央部と根もとの二カ所をセロテープで巻く。
 家庭用品や妻のモノ、525円硬貨とか10500円札とかである。李麗光が歌い出すなり、十九時四分発の紀勢線特急くろしお29号は11番線から出ますが、今まで取り締まっていた警官までが男根垂らして巡回しはじめ、点滴をしながら走りはじめた。羽生氏がとりなした。
 いくら功成り名遂げた人だって、奥行き三十八メートル。ついに政府は対策に乗り出した。ステーキはまだあらわれない。まだ炭火の熾しかたまでは知らないらしい。記者たち「ああ」と、悲しげに納得。おれは安心する。水やおしぼりを持ってこようともせず、へとへとに疲れてぐっすりと眠り込んでしまうだろうから。何か大きなものが決定的に欠落しているのだ。しかるにおれは良識とは無縁であり、話している僧侶のななめうしろに突然うっそりとあらわれて、透明感も増し、溜息は「ぶあお」であったり「ピイ」であったり、建築現場の下を通るたびに釘などの金具がばらばら落ちてきて磁力でからだに吸いつき、すぐさま引き返してウェイトレスの二の腕をぐいとつかみ、市民参加の長距離レースに出るのだと言い張るのだった。
「ほんとにぃー」と、弟橘媛は言った。日野さんは眼を丸くして首をすくめ、まだ会ったことのないふたりは、たちまち殺戮欲にとりつかれ、本人はそう思っていないのだが、焼いたゴキブリがよほどうまかったらしいのだ。もうパーティはとっくに始まっている。固唾をのんで見まもる客の眼の前で、仏さまが、「いいよいいよ、もう」と、言う。いきなりドーンとくる。数時間後に見ると、下層階級の貧民、浮浪者、乞食たちが自分たち独自の貴族社会を勝手に作っていた。原稿依頼かたがた話があるといっておれの宿泊しているホテルへやってきた。動物の本を読んで、次つぎとやってくるのだが、塀を乗り越えて入ってくれば蠅取り紙で身動きできなくなり、隣りのテーブルに倒れ込んで料理を全身に浴びる。いやしくも原稿を書いている時にそのようなことをなすべきではありません。
 挨拶しなければならないのに。やりたい放題。しかたなく祖父は作戦を練り、ワープロに打ち込んだものの、六十年も生きていると、真実の姿はもはや虚構の中にしか存在しないし、当時は不思議に思ったものだが、それは単純に言えばジャーナリスト魂とでも言うべきものだろう。
 夢中で抵抗するうち、十七、八の姐さんが、ねぎらってくれる。「じゃあ、一曲やろうか」と言ってピアニストが気軽に立ち上がる。次第に賑やかになる筈が、次に進み出たのがど厚かましいおばはん。通り過ぎて行く若い娘たちを見ながらの、残り少ない人生、無我夢中でやるべきです。ふたりとも、遊び続けた。

「落とし天狗文の」第五回

2007-11-25 23:44:35 | カットアップ
 大雪のためダイヤが乱れた日の、いよいよやくざの数は膨れあがり、大喜びで見に出かけたものの、子供たちは信じない。
「依頼されたからですよ」
 遥か彼方を眺むれば、いかにもそれらしいタイプの人選が行われていて、さいわいなことだと思い、別段これという理由はなく、おれはうろたえた。孵卵室にあった卵を、これを狸の化けたものと思いこんだ。ランチ・タイムが十一時半からだったので、しばらく無言だ。最初の一羽が食べに舞い降りてくる。おれたちはまさに犯されているようだった。談合をはじめる。
「夫の名前がハムサラダ。妻の名がアブラ」
 友人はそのことばをエロチックな意味にとらえ、東京の従姉妹たちから、泣きそうになりながらどんどんと遠ざかって行き、ついにたまりかねて店を出ようと決断し、踏み出しかけた足をはっと引っ込める。そしてたいへん美人の、ヨシコサンガ、野菜と一緒に、いつまでも、ひとりやきもきすることになる。
 彼女は俺を見るとつかつかと歩いてきて原稿用紙の上にハイヒールの片方を乗せ、仕送りの金が残り少なくなってピンチなのでと弁解し、ふたたび熱湯をざばーっ。もちろんビールやら酒も。ジーザス!それにちょっと頭が痛い。このロリータちゃんは、金もなく、わが家の門前で毎夜のように小便をし、見ず知らずの連中と一緒に近所の公園で夜明かししたんやが、たまたま隣りに掛けた文学部だという学生に打ち明ける。
「このうすら馬鹿のぐうたらが」
と言い出し、しかたなく酒を飲ませることにした。その夜、口を開く。心の闇に降りて行かねばならなかった。素粒子物理学の超ひも理論によって、彼はすっかり追いつめられてしまった。タケノコかかえて泣いている。いよいよ食べようという時に彼は、孤独の中で苦闘し、粘り気のある肉は何層にもなった恨みと屈託でもって身をよじり、ビルもネオンの明るくきらびやかな光もなくなって、またコンパクトにされて無限小のボールとなった余分な六つの次元や、トムクルうた反応で世界中のマロブラドはちっともトムハンクすることなく、いざ渡す段になってためらいが生じ、しばらくそのままだ。
 その美しさに見惚れていた西尾が、そのお返しにとディキシーランド・ジャズを鳴らして気が狂ったように手足を動かし、そのかわり奢ってほしいなどと言い、A氏は承諾したものの、力なくかぶりを振る。午後おそく、いよいよ次はおれの番だ。

「落とし天狗文の」番外編1

2007-11-21 23:49:45 | カットアップ
 ある学者。流行のファッションばかり追い求める無知な妻にあきれ果て言った。
「やめてクレー」
「あなたの大きなお腹の上を乗り越えると、ひと山超えたような気がして気持ちがいいの」
「わかっておる。わかっておる。早く注射してくれ」
「すごくリアルだったわよ」
「じゃあしばらく部屋でお待ちを」
「人間、こうなったらもう、おしまいね」
ぼくの眼はもう、泪でいっぱい。
「じゃあ、一曲やろうか」
「うっそー」
「両方の中間がいいな」
「あなたの送るテレパシーをいつも受け取っていますので、あなたのことはよく知っています」
「あはははは。嘘だあ」
「うん」
「……」
もう三十年以上昔の話になる。
「誰か、待ってるの」
「はい。マネージャーに電話下されば、連絡がつくようにしておきますので」
「何が始まるんですか」
「焼き肉しまひょか」
「妻を世話してもらいたい」
「まだ子供じゃないの」
「ドヒャー。すげえ別嬪。まるで女優か王女さま」
「なによ」
「ああ。綺麗だな」
「見ないで」
「最近の女の子は、モデル並みに綺麗になってきたね」
相手を見るなり、ふたりとも、わっと泣き出してしまった。
「ああ。やっと出て下さったのね」
「見たらいやになるで」
「かまいません、お待ちしますので」
「走りまんねん」
「どんな御用で」
「宇宙人がやってきて」
「茶色ですか」
「それを訊くなーっ」
「可哀想に。したかったのねえ」
「二十年ぶりで帰国したんだから無理ないけどね。でも、すぐに慣れるよ」
セックスしている間も彼女は、片目を強く閉じ、ニッカリ笑ったままであった。
「オーライ。オーライ」
「毎晩パックしてますから。パックしてますから」
「やれやれ。これでしばらく休憩できる」
「怖いよう」
「先に言わんか先に」
「アナタ、カワイソウネ」
「あたり前だろうが」
「バックします」
「そ、そんな危険な。や、やめろっ」
「どうしました。不調に終ったんですか」
「出ます」
こうなってくればもう、しめたものだ。見ていた編集長がよだれを垂らしながら感心して言う。
「ほらほらほら。例の。何が何した、それ例のあれ、あれあれあれあれ」
「もう言ったじゃないか」