緩和ケアで行こう

へなちょこ緩和ケアナース?!のネガティブ傾向な日記です。

患者さんのことを大切に思えないご家族の思い

2012-04-29 13:55:45 | 患者さん

 「息子に会いたいなぁ…。」


 桜井さん(仮名)は、折に触れてそうおっしゃっていました。

 実は、桜井さん。
 家族関係がすこぶる、複雑。複雑とは奥歯に物が挟まったような言い方ですが、単刀直入にいうと、家族関係が「悪い」。


 
 家族関係が悪いこと自体は、別に珍しいことではありません。
 よくあることです。
 

 医療者は、患者さんと過ごす時間が長いことと、自分たちの業務の負担軽減の目的もあって、ご家族の面会を期待して、面会に来ないご家族をネガティブに捉えがちです。
 「もっと、面会に来てください」なーんて、患者さんのことを思ってご家族に発信するメッセージは、実はご家族にとって、とてつもなく大きな負担であり、ご家族が負担感を増してしてしまって、さらに面会に来ることができなくなるという悪循環を起こします。


 桜井さんも、患者さんの側に立てば、ご家族に面会に来てもらいたい、そう思ってしまう状態でした。
 もう、残りの時間は長くはないだろうな…、そう思っていたので、ことさら、ご家族に対して「可能なら、面会に来てもらいたい」と思う、そんな状態でした。


 
 全く面会に来ていただけないご家族の、本当の思いはどこにあるのだろう?
 ご家族に電話を何度も致しましたが、まったくとってもらえず…。
 時には、「あ、●●病院だ」なーんて声が聞こえた後、電話がぶちっっと切れることもありました。


 ご家族の、桜井さんに対するネガティブな思いはよくわかっていましたが、ご家族はいったい、どういうお気持ちなのだろう?そう思って、お手紙を出しました。
 主旨は、桜井さんのために面会に来ていただきたい、というものでしたが、ご家族の負担にも配慮して書いたつもりでした。




 そしたら。




 案の定。

 ご家族からは怒りのお電話がありました。


 1時間近く(しかも…、不意の電話でした…想定内とはいえ、業務を行うには痛い所要時間でした…

 ポンは、ご家族の怒りを受け止めるしかありませんでした。
 そして、ご家族の今の思いを知りたかったので、ずーっと話を聴きました。

 実は、私たちは、ご家族に面会に来てもらいたいと腹の底から思っているわけではありませんでした。


 面会に来たくないということは、重々わかっていましたが、いったい、どんな思いでご家族が面会に来たくないと思っていらっしゃるのかを知りたかったので、手紙を出したといっても過言ではありません。
 もちろん、あわよくば、 面会に来てもらえるかも?という期待も若干、ありましたが、そんなに期待はしていませんでした。




 
 ご家族の話を電話で伺って以降、ご家族に面会に来てもらうという期待は、捨てました。
 もしかしたら、ひょこっと面会に来てもらえるかもという期待は捨ててはいませんでしたが、期待しないようにしました。




 家族関係の複雑さには、患者さんを取り巻く周りの家族の方々だけに問題があることはまれだと思います。
 患者さんにも、お元気だったころの関係やふるまいに、家族関係の複雑さを喚起するような側面があるものだと認識しております。


 桜井さんは、ポンが接している限りの中でも、きっと、難しいところがあったのだろうな、と想像が容易かったお方でした。





 しかーし。


 私たち医療者が、ご家族と同じスタンスでは、もうすぐこの世とお別れをしようとなさっている方へのお手伝いはできない。
 そう思いまして、せめて、私たちスタッフとの絆を…、ご本人が思うようなご家族のとの絆を深めることは無理だとしても…、せめて、この病院という環境の中で、安心できる関係を作りたいと思いました。

 桜井さんのご家族との絆の希薄さからくるつらさを少しでも和らげるには、それしかないと思いました。



 ああ。この時間は大切にしないと!
 そう思った時間を、桜井さんと持つことができました。


 詳しくは、次回の更新の時に。
 

 

不評な?お部屋

2012-04-27 00:10:24 | 緩和ケア病棟

 うちの病棟の、あるお部屋には、日当たりが悪く、不評な?部屋があります。

 
 んんん。
 確かに、そうかもしれんけど~~。
 お部屋で過ごされた患者さんから、この部屋では過ごせないからどうにかしておくれ、という苦情は聞いたことがないし…。
 いや、いや。
 患者さんは言いたくても言えずにいるのかな…。


 その部屋で過ごされる患者さんは、お気の毒…なのだろうか。
 そうなんだろうね…。
 そうなんだろうか…。

 云々。


 いろいろ考えました。


 そしたら、不評な?お部屋自体が気の毒に思えてきました。
 不評な?お部屋も、不評に思われる筋合いはない!とか考えておらぬだろうか???なーんて。



 で。



 事務長さんに直談判しました。

 「不評な?お部屋の前に、桜の木を植えてほしいっっっ」と。


 何か、見どころを作らなきゃっと思った末の提案でございます。


 事務長さんは、うちの病院の庭の番人さん。

 「だから~~、カクカクシカジカデ~~」と説明をしますと、桜の木の購入をあっさりと了承してもらえました。



 うーん、ラッキーー


 桜の木は年中、楽しめるものではありませんが、せめて、春の季節くらい、どこの部屋よりも素敵な桜をみれるように…。
 今の時期だから、そう思えたのかもしれません。


 

 うーん。
 ほかに、何かええ方法はあったじゃろか??


 今はほかには思いつかないから、ま、えっか。

 

看護学生さん、いらっしゃい

2012-04-22 04:57:34 | 触れ合ってくださる人々

自分の緩和ケアの経験や思い出を彩ってくださっている方々の中に、看護学生さんがいらっしゃいます。


看護学生さんの受け入れとなると、いろんな調整が大変なところはありますが、実りも多いものです。



その昔。
ポンが看護学生(これは、ほんまに若いころの学生時代の話)の時には、実習というと、実習指導者さんがとっても厳しくて、びくびくしていたものです。
ポンの正直な感想は、看護学生は、「虐げられていた」。



虐げられていたから、学生を経て就職をしていた病院での自分の学生さんの態度というものは、「先輩が自分にしてくれていた態度」で接していました。

ある日、その病棟のスタッフから、声があがりました。


「ちょっとーー。学生さんが帰る挨拶してるんやんか。ちゃんと、こっちも挨拶せな。」


この一言。
私にはすごく大きくて、今も心に残っています。



そうそう。
学生さんが気持ちよく実習できる場を提供するのが私たち、病棟のスタッフの役割のひとつだ…。


指導といいつつ、自分たちの忙しさにまみれて、学生さんへの態度が御座なりになっていないか。
これは、病棟のスタッフ全員が自分自身に問わなくてはならないところです。



私は、病棟のスタッフに、お願いしています。
「自分の学生時代に経験した指導者のいやなことを、学生さんにしないでほしい」



おかげさんで、学校からの実習場としての評価は、上々です…。




それと。
ポンが何よりも大切にしていること。

7~8年先を見越して、学生さんとお話をすること。

一人でも多くの学生さんに、「将来、緩和ケアをやりたい」と思っていただけるように…。
学生さんと語る時間はできるだけ持つようにしています。
時には、学生さんとのカンファレンスの時に喋りまくるときもあります。


やっぱり。
実習は、厳しいばかりでは身にならんっ。
「うちの病棟には、現実はうまくいっていないところもあるけれど、こんな面白さがあるのよん。」

これを伝えずしてどうするっ!!でございます。



はちゃめちゃに忙しい現場でありますので、指導をする人間には「気長さ」も要求されるところではあります。
じっくりとやっていくことで、私が知らないところで…、はるか未来の時に、学生さんが一人前になって、看護の本質を見失いそうになったときに。


「お願いよ。あなたたちが一人前になった時期に、ぜひとも、この病棟で学んだことを、思い出してほしい。」

これは、学生さん全員への、ポンからのメッセージです。




いつか、どこかで再会できるといいね…。


後悔ばかり

2012-04-08 15:48:42 | 患者さん

倉木さん(仮名)との出会いのきっかけはリンパ浮腫。

そうそう。
ポンがセラピストを目指そうと思ったきっかけをくれた方でした。


倉木さん。
最近、リンパ浮腫が悪化しているので、どうしたらいいのだろう?って外来から連絡がありました。
私がセラピストの資格を取る前の時期のことなので、考えうる手立てを取らせていただいて、とりあえず、様子をみることになりました。

セラピストの資格を取った後、倉木さんを担当させていただく機会はありませんでした。
病院の診療報酬の手前…。
看護師の私が治療を行っても報酬につながらないので、何とか報酬につながる職種の方が治療の担当になっていました。



倉木さんは、うちの病院で手術を受けたわけではありませんが、手術を受けた後、リンパ浮腫になって、自宅から近いポンの所属する病院に「このむくみはなんとかならないのか」と受診された方でした。


リンパ浮腫についての文献はいろいろ読んでいましたが、施術したことのなかったポンは、とりあえず、自分が持っている文献のありったけを参考に、倉木さんの初回の施術に当たりました。



今思えば、なんてラフな治療だったのかっ!と思うくらいの治療でしたが、奏効しまして…。
まるで、劇的「ビフォア・アフター」でした。




病院のシステムの関係で、その後、私が倉木さんを担当することができない時期が過ぎます。
その後は、別の担当者が治療にあたっていました。




倉木さんは、それでも、私のことを「先生」といって、慕ってくれていました。
病棟に属する私は、外来通院されている患者さんが自分を訪ねてくれることをとてもうれしく思っていました。
わざわざ、緩和ケア病棟にまで訪ねてきてくれました。
本当に嬉しくて、嬉しくて。

たくさん、たくさん、話をしたいけれど、病棟じゃ、ポンにはそんな時間がなくて、できるだけの時間をとってお話をしてきたものの、足りないっ!
そんな気持ちが、倉木さんとお会いするたびにありました。





晴れて。
私はリンパ浮腫のセラピストの資格を取りました。


残念ながら、倉木さんを担当することはありませんが、倉木さんを担当しているセラピストが「何かあったら、相談しますね」って言ってくれていた…、そんな矢先。




担当セラピストに、倉木さんの状態を尋ねたところ。



そのセラピストは私に言いました。





「倉木さん、亡くなったそうです。外来の予約日に来ないので、連絡したら、亡くなったって。」





信じられませんでした。



倉木さん、逝っちゃったの???
本当に???
何で???


そんな気持ちでいっぱいでした。


倉木さんが亡くなった原因は未だにわかりません。情報がありません。





自分の中で、思いが駆け巡ります。
直接、治療にあたることができなくても、間接的にお手伝いすることができたのではないか。
私だって、倉木さんとお会いすることが嬉しかった。
倉木さんも楽しみに会いに来てくれていた、そんなお付き合いを、せめて続けたかった。
他愛もない話をいっぱいしたっかった。

リンパ浮腫だけじゃなくて、ほかの病気も抱えつつ、自分のことは自分でやるんだと凛としていた倉木さん。
その倉木さんを応援したかった。

診療報酬が、一般病棟で取れないというのなら、倉木さんが「いいよ」って言ってくだされば、緩和ケア病棟でリンパ浮腫の集中的な治療をしてもいいのでは?なんて真剣に考えてた。
緩和ケア医にも、リンパ浮腫の治療のための短期入院は可能か?って相談してた。




去年は結婚50年の記念の年だった。
お祝いのプリザーブドフラワーを買った。
メッセージも書いた。

でも、病院ではさまざまな組織の「掟?」のようなしがらみがあって、私は外来の患者さんに携わることが許されず、出過ぎた真似をしちゃならんと自分で思い込んでしまい…。
買ったプレゼントを渡すことすらできなかった。
メッセージは破り捨ててしまった。



私の部屋に、写真にあるプリザーブドフラワーは飾られてある。



思い返すと、後悔ばっかり。



もっと、もっと、倉木さんのお手伝いをしたかった。
もっと、もっと、倉木さんとお話をしたかった。





このままでは心が軋む。
このままではいられない…。


時間を作って、何とか、ご家族に連絡をとるつもりです。

倉木さんに会いに行かなくちゃ…。



そんな気持ちでいっぱいです。






誤解

2012-04-03 00:10:21 | 日々の「ケア」

どうも、病院のトップの方々は緩和ケアというものや、緩和ケアってどんなケアをしているのかということに理解が乏しいと思えてなりません。




緩和ケア病棟に、他施設から入職される方がいらっしゃいますが、その方がすぐに辞めてしまわれます。

やっぱり、原因は何だったのかな?って考えてしまいます。






当初、その看護師さんは緩和ケア病棟で勤務することを希望しているとのことでした。
再度、ポンが話を伺ったところ…。


最初から、緩和ケア病棟に勤務したいなんて希望していない、とのことでした。
長らく、老健施設での勤務が長く、病棟での勤務経験がないので、緩和ケア病棟での勤務にとても不安を抱えておられました。

それでも、緩和ケア病棟でやりたいと思っているのなら、何とかなる、と信じて、いろいろお伝えしました。
その方も、「私にはこういう仕事は向いていると思う…。」と言ってくれたので。



病院を辞めるということは、その看護師さんにとっていいイベントではありません。
病院にとっても同じです。


辞めるとなると、その方とどうして辞めようとされているのか、お話を伺うことになります。



そんな時、うちの病院では誰が何を言った、言ってないということが、当事者同士で大きくずれていることがあります。
いったい、だれのいうことが本当なのか?と首をかしげたくなることが多々あります。

そうそう。
いいイベントではないので、そんなことが起こるのは致し方ないのかもしれません。



ただ、そんなこんなの中。
トップが緩和ケア病棟についていつも、
「あの病棟はゆっくりした病棟だから、じっくりやっていけばいい。いける、いける。」と言っていることがとても遺憾です。


そして、配属された看護師さんは、ギャップに慌てます。

緩和ケア病棟って、患者さんが少ないから、ゆったりと仕事ができるんじゃなかったの?
緩和ケア病棟って、患者さんが少ないから、超過勤務はないんじゃなかったの?


ってな具合で。




看護部のトップの方や病院のトップの方には常々、お伝えしています。
緩和ケア病棟は、そんな楽園のような、「楽な」病棟ではない、と。


私自身は、緩和ケア病棟は確かに、一般病棟に比べれば、患者さんの人数は少ないけれど、必要とされる自分のエネルギーは、救命救急センターと同じくらいのエネルギーが必要だと思っています。
病棟のスタッフのみんなもそう感じているところです。





配属されるスタッフには、緩和をやりたいと意気込んでやってきてくれる方もいます。
そんな方の存在は、とても頼もしいです。

ただ、うちの病院の場合は、そんな方は稀で、「事情あり」で、一般病棟では勤務しづらい方が多く配属されます。
それはなぜかというと、病院が、緩和ケア病棟はゆったりしているところだから、ゆったりと仕事ができる、と勘違いしているからです。

「事情あり」なら、納得できるところもあるのですが、「問題あり」の方も配属されます。
要するに、ほかの病棟で対処しきれないスタッフは、緩和ケア病棟に配属しておけばいい、というような感じ。


「問題あり」のスタッフがいると言い切ってしまうと非常に問題のある言い方になってしまいますが、現実的に、職場にはそんな方ってどこでも存在するものです。




…で、緩和ケア病棟で息長く勤務していただけるのなら、ありがたいのですが、短期間で辞めてしまうってことがあるんですね。


そうすると、「緩和ケア病棟がスタッフを潰した」とうわさが病院に流れます。



病院内での緩和ケア病棟の評判はすこぶる悪いです。
院内では緩和ケアの概念自体が正しく認識されていないということも大きく影響しています。



とても残念でなりません。


辞めたいと言い出すのは大変なことです。
それを切り出さないといけない、その看護師さんにも申し訳ないケースもあります。


でも。
新しいスタッフを受け入れる側としましては、続けてもらいたくて、文献をすすめてみたり、話を聴いたり、緩和ってね・・・ってお話をしたり…、励ましたり。
その労力が無駄になる、このむなしさったらありません。
おまけに、とんでもないうわさが流れる…。




今、緩和ケア病棟はスタッフが不足しています。
緩和ケア病棟ではよくあることなのかもしれません。



人員の配置について、トップに尋ねてみましたところ。

こう、言われました。



「緩和ケア病棟にかわれ、っていったら、それは辞めろってことになるからなぁ…。」



どうしてそんなことになるの????
どうして、そんなことになっているの?????

そこには誤解があるということにどうして気が付いてもらえないのかな…。






病院の緩和ケア病棟に対するビジョンが見えなくなってきています。


毎日、心身ともにエネルギーが消耗していくような感覚。

自分。
よく、イラっとしてる。
最近、よく、
イラっとしてる。


そして、消耗。


この悪循環を断ち切る術が見当たらず、日々の業務に忙殺されています。