
倉木さん(仮名)との出会いのきっかけはリンパ浮腫。
そうそう。
ポンがセラピストを目指そうと思ったきっかけをくれた方でした。
倉木さん。
最近、リンパ浮腫が悪化しているので、どうしたらいいのだろう?って外来から連絡がありました。
私がセラピストの資格を取る前の時期のことなので、考えうる手立てを取らせていただいて、とりあえず、様子をみることになりました。
セラピストの資格を取った後、倉木さんを担当させていただく機会はありませんでした。
病院の診療報酬の手前…。
看護師の私が治療を行っても報酬につながらないので、何とか報酬につながる職種の方が治療の担当になっていました。
倉木さんは、うちの病院で手術を受けたわけではありませんが、手術を受けた後、リンパ浮腫になって、自宅から近いポンの所属する病院に「このむくみはなんとかならないのか」と受診された方でした。
リンパ浮腫についての文献はいろいろ読んでいましたが、施術したことのなかったポンは、とりあえず、自分が持っている文献のありったけを参考に、倉木さんの初回の施術に当たりました。
今思えば、なんてラフな治療だったのかっ!と思うくらいの治療でしたが、奏効しまして…。
まるで、劇的「ビフォア・アフター」でした。
病院のシステムの関係で、その後、私が倉木さんを担当することができない時期が過ぎます。
その後は、別の担当者が治療にあたっていました。
倉木さんは、それでも、私のことを「先生」といって、慕ってくれていました。
病棟に属する私は、外来通院されている患者さんが自分を訪ねてくれることをとてもうれしく思っていました。
わざわざ、緩和ケア病棟にまで訪ねてきてくれました。
本当に嬉しくて、嬉しくて。
たくさん、たくさん、話をしたいけれど、病棟じゃ、ポンにはそんな時間がなくて、できるだけの時間をとってお話をしてきたものの、足りないっ!
そんな気持ちが、倉木さんとお会いするたびにありました。
晴れて。
私はリンパ浮腫のセラピストの資格を取りました。
残念ながら、倉木さんを担当することはありませんが、倉木さんを担当しているセラピストが「何かあったら、相談しますね」って言ってくれていた…、そんな矢先。
担当セラピストに、倉木さんの状態を尋ねたところ。
そのセラピストは私に言いました。
「倉木さん、亡くなったそうです。外来の予約日に来ないので、連絡したら、亡くなったって。」
信じられませんでした。
倉木さん、逝っちゃったの???
本当に???
何で???
そんな気持ちでいっぱいでした。
倉木さんが亡くなった原因は未だにわかりません。情報がありません。
自分の中で、思いが駆け巡ります。
直接、治療にあたることができなくても、間接的にお手伝いすることができたのではないか。
私だって、倉木さんとお会いすることが嬉しかった。
倉木さんも楽しみに会いに来てくれていた、そんなお付き合いを、せめて続けたかった。
他愛もない話をいっぱいしたっかった。
リンパ浮腫だけじゃなくて、ほかの病気も抱えつつ、自分のことは自分でやるんだと凛としていた倉木さん。
その倉木さんを応援したかった。
診療報酬が、一般病棟で取れないというのなら、倉木さんが「いいよ」って言ってくだされば、緩和ケア病棟でリンパ浮腫の集中的な治療をしてもいいのでは?なんて真剣に考えてた。
緩和ケア医にも、リンパ浮腫の治療のための短期入院は可能か?って相談してた。
去年は結婚50年の記念の年だった。
お祝いのプリザーブドフラワーを買った。
メッセージも書いた。
でも、病院ではさまざまな組織の「掟?」のようなしがらみがあって、私は外来の患者さんに携わることが許されず、出過ぎた真似をしちゃならんと自分で思い込んでしまい…。
買ったプレゼントを渡すことすらできなかった。
メッセージは破り捨ててしまった。
私の部屋に、写真にあるプリザーブドフラワーは飾られてある。
思い返すと、後悔ばっかり。
もっと、もっと、倉木さんのお手伝いをしたかった。
もっと、もっと、倉木さんとお話をしたかった。
このままでは心が軋む。
このままではいられない…。
時間を作って、何とか、ご家族に連絡をとるつもりです。
倉木さんに会いに行かなくちゃ…。
そんな気持ちでいっぱいです。


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