前作「風のベーコンサンド」続編。東京の出版社をやめ、百合が原高原にカフェを開業した奈穂。背水の陣で始めたカフェも二年目を迎え、地域の人々にも認められてきた。シンプルなベーコンサンド、百合根のポタージュ、チキンのコンフィなど、地域の女性の助けや励ましを得て、地元の食材を活かしたメニューを生み出す日々は、モラハラ夫との離婚で疲弊した奈穂に生きる力を取り戻してくれた。村役場で働く涼介との出会いにも支えられ、穏やかな日々を過ごす奈穂の前に、ワイン醸造の夢を抱く、元人気ミュージシャンの青年が現われる。世間を騒がせた過去を持つ彼の出現は、静かな高原の町を揺さぶり、この地で自立することを決意した奈穂にひとつの決断を迫る・・・。名物のローストビーフ、林檎入りのカトルカール、ケータリングの洋風おせち、そして優しい味わいのコック・オー・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込み)。読むだけで美味しく食べたくなるご飯の御パレード、人の機微を繊細にやさしく掬い取る人間ドラマです。
2018年9月文藝春秋社刊
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