読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

柴田よしき著「さまよえる古道具屋の物語」

2019-08-06 | 柴田よしき

その古道具は、客の人生を支配する。時間も空間も超えて、突如現れる古道具屋。訪れた客に商品を選ぶ権利はないのだ。やがて買い主は、店主が選んだ品物に、人生を支配されていく・・・。その店は、人生の岐路に立った時に現れる。さかさまの絵本、底のないポケットがついたエプロン、持てないバケツ、金色の豚・・・。古道具屋は、役に立たない物ばかりを、時間も空間も超えて客に売りつけ、買った人を翻弄する。不可思議な店主の望みとは何なのか。未来は拓かれるのか? やがて買い主達がその店に集結した時、裁きは下され、約束が産まれた。

SF・ミステリー風ファンタジー風妖艶な雰囲気のなかオムニバス形式で展開される。著者が東日本大震災の年、平成23年に「さかさまの物語」を書き始めて第6話が完結したのは平成279月。短編が連作になり単行本化にして完結するために第6話の「最後の選択」を書いたような感じで読んでいて不安な気持ちに一時はどう決着つけるのかと気をもんだ作品だった。最後はオカルト的な落ちで個人的には不満だった。「この世界には最初から、生まれてきて良かった存在も、生まれて来なければ良かった存在もないんだ・・・生まれてきたことそれ自体が大事なんだ、って。その人の人生が何かの役に立っていたとか、その人がどの程度社会に貢献していたかなんてこととは無関係なの・・・生まれて来たら、あとはひたすら生きるしかない。人生はそれですべてなんだ。」「他人にどう評価されるかじゃなくて、自分が生きているっていう実感を求める。それでいい」(P156)

201612月新潮社刊


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「ワイルドスピード/スー... | トップ | 赤松利市著「ボタ子」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

柴田よしき」カテゴリの最新記事