読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

大沢在昌著「海と月の迷路」

2015-05-01 | 大沢在昌
戦後復興期の長崎県軍艦島を舞台に描かれた密室ミステリー警察小説。
昭和34年、小さな要塞のような島で5000人余の職住一体の炭鉱の島。
そんな海に閉ざされた閉鎖社会で満月の夜一人の中学生の少女が不審死を遂げる。
赴任したばかりの若き警察官・荒巻正史は殺人事件を疑い“許されざる捜査"に一人挑む。
その行いは身分差別の残る複雑な人間関係の中、暴かれていく人々の過去が明らかになりにつけしきたりや掟に
支配された島に少しづつ波紋を広げていくとともに、孤立する荒巻。
やがてよく似た事件が8年前にもあったことが浮かび上がりそんな中次の満月の夜、殺人者はふたたび動き出す。
濃密な人間関係、登場人物が細やかに描かれてまるでドキュメンタリーを見ているような展開で面白かった。
犯人も最後まで予想がつかずさすがです。
2013年9月毎日新聞社刊
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大沢在昌著「獣眼」

2014-11-05 | 大沢在昌
腕利きのボディガード・キリのもとに、河田早苗と名乗る女性から警護の依頼がくる。
警護の対象者は17歳の森野さやか。1週間、昼夜を問わず彼女を守ってほしいという。
彼女はプロの殺し屋から狙われているらしい。さやかに人の未来や過去を見抜ける「神眼」という特殊能力が近々開花するのを恐れ、さやかの抹殺を企てる「ツブシ」と呼ばれる暗殺集団が、ロシアの殺し屋を雇ったとかの情報が・・・。
神眼という超能力や表題の著者が「獣眼」と呼ぶ「人の弱み、憎しみの対象となるもの、それを見ることで人を信じられなくなったり、また逆に人を傷つけたり利用するのが容易になる」…能力。

余りリアルティーのある話でないので読みつらかった。謎解きよりも人間関係の複雑さが絡み展開されるので
後半明らかになる神眼の継承や生まれ変わりも納得いかなかった。
人物描写も中途半端で薄ぺラい感じで何が言いたいのかもわからず著者らしからぬ駄作かも。
2012年10月徳間書店
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大沢在昌著「語りつづけろ届くまで」

2013-06-11 | 大沢在昌
1作目の「走らなあかん、夜明けまで」2作目「涙はふくな、凍るまで」に続くシリーズ第3弾。
大手菓子会社ササヤ食品に勤める坂田勇吉は新商品センベイの草の根宣伝のため、東京下町でのボランティア活動に精を出していた。彼にはひそかな楽しみがあった。言葉は悪く化粧気はないが、老人たちにはとても優しいサッコこと小川咲子が気になって仕方ないのだ。
祖父仕込みの将棋と自然体な配慮で男を上げつつあったサカタに、健康枕販売のセールス指導のバイトが持ちかけられる。
サッコの冷たい視線が気になりつつも、打合せのために会場に出向いてみると、そこには死体が転がっていた。
さらに詐欺事件に巻き込まれつづけ事態はひどくなる一方で、それでも抜けられなくなっていく。逼迫した緊張感が希薄、なんでこうなるの?というご都合場面が目立つ。
登場人物の設定にもそれは感じる、意外なご老人たちやあまり現実味のないヤクザ、チンピラたちに振り回され普通のサラリーマンのコメディータッチの災難物語でした。
2012年4月講談社刊
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大沢在昌著「冬芽の人」 

2013-05-22 | 大沢在昌
「冬芽」とは寒い冬にずっと耐えて、冬が過ぎた時に花や葉に成長する芽のこと。6年前練馬で起きた強盗殺人事件の捜査中に自分をかばった先輩刑事・前田光介を亡くし、その責を負って警察を辞めた牧しずりは、前田の命日の墓参りの折その同僚の息子・岬人と出会う。
未来への希望を捨て、心を閉ざして一人で生こうと過去を封印してひっそりと暮らす普通のOLの彼女に彼がもたらしたのは解決したはずの事件に関わる新情報だった。
やがて岬人との出会いが彼女を変えてゆく。
16も年下の岬人に魅かれてゆく“しずり”、そんな自分に戸惑い、何度も会うのをやめようとした“しずり”だったが次々と消息を絶つ関係者等に、調べれば調べる程に得体のしれない悪意の存在が見えてくる。
すでに片が付いた事件のため事件を掘り返したくない警察。
味方も武器も持たない「しずり」は、事件の真相を暴き、失われた人生を取り戻すべく見えない敵に戦いを挑む。
東京から、沖縄、福島の過疎の村へ、孤立無援、たった一人で戦う暗闇のラストシーンは圧巻でした。
「大きな敵に闘いを挑む勇気を持つ人だけがヒーローでない、例え小さな問題でも解決しようと挑むことは私にとってヒーローなのです。」
2013年1月 新潮社刊
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大沢在昌著「鮫島の貌 新宿鮫短編集」

2012-09-16 | 大沢在昌
新宿鮫シリーズの新宿署刑事鮫島のエピソードを綴った10本の短編集。
新宿署異動直後の鮫島を襲う危機を描いた「区立花園公園」や、腐った刑事や暗殺者との対決「人気コミック「こちら葛飾区亀有公園前派出所」両津勘吉とのエピソード・・・「幼な馴染み」、異色「エンジェル・ハート」冴羽獠が登場する「似たものどうし」、『狼花 新宿鮫9』のサスペンスフルな後日談「霊園の男」など鮫島と関わった10人が語る鮫島のその時々の一面が食いついたら離れない単独捜査で犯罪者には「新宿鮫」と恐れられる男を一編一編に凝縮「鮫」にしかない魅力が一杯の10編。
1篇読んだら次が早く読みたくなり10編があっという間に読めてしまった。
2012年1月 光文社 刊
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大沢在昌著「絆回廊 新宿鮫Ⅹ」

2011-08-10 | 大沢在昌
新宿鮫シリーズ、5年ぶりの登場、シリーズ第10作目。やくざも恐れる伝説的アウトローがかつて家族を引き裂いた警察官を殺すとの情念を胸に22年の長期刑を終え新宿に帰ってきた。
すでに初老だがいまだ強烈な存在感を放つというその大男を阻止すべく捜査を開始した新宿署刑事・鮫島。
しかし、捜査に関わった人びとの身に、次々と殺人者の影が。一方、恋人晶の周辺には麻薬捜査の手が。
やがて捜査中に自宅近くで襲撃され、九死に一生を得た鮫島は、これまで経験したことのない不気味な犯罪組織と対峙することになる。
冒頭から漂う不穏な空気、ひたひたと迫る見えない敵。標的は誰か?親子。恩人。上司。同胞。しがらみ。恋慕の情。荒ぶる男が帰還し各々の「絆」が交錯したとき・・・・。
リアル感ある小気味いいセリフ畳みかける展開面白くてシリーズを読んでいない人でもOK。
血のつながりや損得勘定を抜きに成立する人間同士の「絆」の尊さを込めた表題作の今回の次の新宿鮫が待ち遠しい。『法律は目に見えない。 警官は柵。 柵をこえると、自分も他人も傷つく。
だから柵の先に行かないように思わせる 存在であればいい』(Ⅱ毒猿より)

2011年6月 光文社刊
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大沢在昌著「カルテット 4 解放者(リベレイター)」 

2011-05-26 | 大沢在昌
千人もの若者を集めてゲリラ的に行われる解放区と呼ばれる野外DJイベントと、
都内と近郊で送電線の切断やJR線路に盗難車が放置されるとかの破壊工作が連続で発生させるなどを繰り返す
リベレイターと呼ばれる一団。
ふたつの集団に接点を見出したクチナワは、DJイベント解放区への潜入捜査を命じる。
そんな時、ホウの知り合いダンサーのケンに心奪われて行動がおかしくなるカスミ、それを見て燃える嫉妬に苦しむタケル。
チームの不協和音から各人への信頼が揺らぐとき、最大の危機が訪れた。
そして無関係と思われた情報の断片が集めていくと、巨大な敵と目的が明らかになる。
1~4までチーム今後とカスミの行方と話はまだまだ続く展開で「4」は終るからまだまだ続きそうです。
法を超えた捜査機関を描いた「ブラックチェンバー」と同じような裏社会を描いた大沢ワールドは面白いし
読みやすいのだが字を細かくして少し厚めの1冊で収まる分量なのに4巻で4千円以上係るのは高いと思うのだが。

2011年2月 角川書店 刊
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大沢在昌著「カルテット 3 指揮官」

2011-05-25 | 大沢在昌
カスミはタケルとホウを父・藤堂の知人郡上が運営する山奥の廃寺の麻薬中毒者の更生施設に連れて行き、二人に初めて藤堂の組織と活動について、そしてクチナワとの関係についての身の上を打ち明けた。しかし、その日の深夜、施設が何者かのグループに襲撃され、全員惨殺され施設は爆破された。その時用いられたのは、タケルの家族が殺された時に使われた特殊な戦闘用ナイフと同じ「グルカナイフ」だった。その背後には、殺人者グルカキラーの存在が・・・。
「指揮官として最もしてはならないこと・・・戦いに負けることでも作戦をあやまったことでもない。・・・部下をみすてたことだった。」(P195)
登場人物の謎が少しずつ明らかになる展開。

ネットで実写版「カルテット」のHPを見つけた。
タケル役(松下優也)、警視庁組織犯罪対策部特殊班のクチナワを(上川隆也)、ホウの代わりに弟を謀殺され失った女シュン役に(福田沙紀)、カスミ役に(夏菜)。http://www.quartet-tv.com/story/



2011年1月 角川書店 刊
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大沢在昌著「カルテット 2 イケニエのマチ」

2011-05-19 | 大沢在昌
前回怪我をしたホウの傷も癒え、最初は渋っていたタケルとホウだったがいよいよチームとしての行動指令がクチナワから下る。
それは、産業廃棄物処理工場跡地の川崎・ミドリ町への潜入捜査だった。
この街の周辺では、四人の子供が死体で発見された。
何棟ものアパートに二千人もの中国人が住みつき、治外法権の無法地帯となっているという。身分を偽って街に入り込んだ三人タケル・カスミ・ホウは、街の自警組織「保安隊」に食い込むが、三人の前にサルや麒麟の面をかぶった異様な集団が現れて・・・。
この事件を通じてやっとチームらしい動きと互いの絆が築かれる展開。
本の厚みが増え275ページの体裁だが
後半以意外性もなく捻りもなく展開が呆気ない、解決法も物足りない感じを受けた。


 2010年12月 角川書店 刊

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大沢在昌著「カルテット 1 渋谷デッドエンド」

2011-05-18 | 大沢在昌
8年前の子供の頃、家族3人を何者かに惨殺され孤児なった。そんな怒りを生きるエネルギー変え身体を鍛えて格闘技術を身につけたタケル。
中国残留孤児三世に生まれたことで鬱屈を抱え日本人を憎むホウ日本名アツシ。
登場はヤクザの女・・・出自から目的まで、すべてが謎に包まれたカスミ。
そして、三人を特殊捜査チームに仕立てようと目論み、車椅子に乗って指令をだす警視庁の異端者クチナワ。
それぞれの想いを秘めた三人と異端の刑事の四人が巨悪な犯罪に立ち向かうここに「カルテット」の結成に至る過程が描かれる。
4人の視点で交互に語られストーリーが展開される。
いつもの独特の荒唐無稽な大沢ワールド、著者のファンなら直ぐ溶け込める世界だが・・・。
躍動感ある早い展開で字も大きくコミック本のような182ページで直ぐ読めました。
カルテット4まで発行されているようですから、もう少し読み進めてから評価したいと思います。

2010年12月 角川書店 刊
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大沢在昌 著 「やぶへび」 

2011-01-03 | 大沢在昌
「金もない、女もなし」で迎えた40歳の年の瀬。
だがこれは元刑事・甲賀悟郎にとっては悪いことでもないと思えた。
運命の分かれ道には、かならず最悪の選択をしてきたからだ。
ところがそこに「奥さんを保護しました・・・」という警察からの電話。
以前借金苦で戸籍を売り偽装結婚した中国人女性・李青珠が、怪我をしたうえ記憶喪失の疑いがあるという・・・。
甲賀悟郎と李青珠。初対面の“夫婦”がなにやらややこしいことに巻き込まれる事態。頭ではいつだって自問自答、「やめとけ、俺」・・・「わかってる、でも」。
装結婚の相手とはいえ打ち捨てる訳にもいかず、その女性が誰で、どんなトラブルに巻き込まれたのかを追ううちにヤクザや見知らぬ中国人達から逆に狙われたり。
追いつ追われつの展開のうえに思いもよらぬ方向に話が展開していく。
でも、この中国人妻が意外にもカンフーの全国大会入賞の使い手だったなんて
都合が良過ぎるのだが相変わらずの大沢ワールドがノーストップでしっかり楽しめました。
2010年12月講談社刊
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大沢在昌著「 ブラックチェンバー」

2010-05-13 | 大沢在昌
題名の「ブラックチェンバー」とは?進化する国際犯罪に対抗するため作られた地下組織。
犯罪組織にダメージを与えると同時に、奪ったブラックマネーを資金源としている。
指定広域暴力団(山上連合)とロシアマフィア組織(アルガニザーツィヤ)が共同経営する
六本木のストリップバーを内偵中に拉致された警視庁組織犯罪対策二課の河合は、
殺される寸前(ブラックチェンバー)と名乗る組織に救われる。
ブラックチェンバーは世界各国に支部を置き、国際的な違法取引を監視し犯罪組織に対抗しているという。
刑事捜査のプロとしてスカウトされた河合は、警察を辞めてブラックチェンバーに加わることに。
犯罪組織のブラックマネーを狙って河合は、違法取引を追うべく台北、バンコク、東京へ。
そして河合は、格闘・銃撃戦のプロである女性元北朝鮮の工作員、キム・チヒとチームを組むことに。
山上連合とアルガニザーツィヤが扱おうとしている「商品」とは何か?
そして人類を崩壊に導く恐るべき犯罪計画とは?
法を超えた捜査機関は、はたして正義か強欲か?強欲と正義は両立するか?
やがて、・・・・恐るべき犯罪計画が姿を現す!
広がり複雑化する国際犯罪に対して警察も有効に対処しきれていない現状を国際的地下組織がそれに対抗するというストーリー展開にリアルさが欠けるのが難点だが面白い。
500ページ以上の長編で展開が遅く犯罪の全貌が明らかになるまで、誰が味方で誰が敵か明確にならずイライラさせられるが後半たたみかける展開は流石。
新型インフルエンザや国際的株取引での株価操作などグローバルな話題を織り交ぜて大沢ワールド全開。

2010年3月角川書店刊
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大沢在昌著「欧亜純白ユーラシアホワイト」Ⅰ・Ⅱ

2010-01-22 | 大沢在昌
1巻2巻で1100ページを越える長編です。1997年4月~1999年11月まで「週刊プレイボーイ」誌連載されたものの10年越しの単行本化作品。
有名芸能人が覚醒剤所持・使用で逮捕され、学生が大麻草栽培で検挙されたり中学生までこの国に不法薬物が蔓延しつつある現状を憂いてか何故今頃の答えを求めて読み始めた。
1997年香港・マカオの中国返還という大変動を間近に控え、ヨーロッパ、アジアの覚醒剤、ドラッグルートに異変が相次ぎ、世界中の犯罪組織のあいだで生き残りを
かけた激しい抗争が展開されていた。
そのカギを握るのは、中国本土を経由し、香港からアメリカ国内に持ち込まれる「チャイナホワイト」と呼ばれるヘロイン。
世界最大のヘロイン輸出湊の香港が、中国公安局の厳しい取締を受ければ、ヘロインの流通地図が一変する。
そうした機に乗じて、「黄金の三角地帯」と「黄金の三日月地帯」という世界二大ケシ産地を抱えるユーラシア大陸をまたにかけて新たにヘロインビジネスを
牛耳ろうとたくらむ謎の人物「ホワイトタイガー」が出現。
その動きを牽制しながら虎視眈々とビジネスチャンスをうかがう、ロシアマフィア、シチリアマフィア、中国マフィア、日本の広域暴力団坂本組。
その野望を打ち砕くべく、熾烈な闘いのなかに果敢に挑戦していく、DEA(アメリカ麻薬取締局)のベリコフと厚生省麻薬取締官事務所の三崎。
二人の視点で壮大なユーラシア大陸を舞台にアメリカ、ロシア、グアム、台湾、香港、沖縄、東京などで広げられる日米潜入捜査官の苛烈な闘いを
描いたハードボイルド麻薬犯罪小説です。
ロシア、中国、日本―ユーラシア大陸に広がる“白い悪の連鎖”を潰せ!謎の男ホワイトタイガーを追いつめられるのか潜入捜査官三崎とべりコフ達。
国境・人種を超えた犯罪組織の熾烈な抗争と罠、謀略、暴力の渦。
それに絡む中国公安部、台湾人華僑、CIAなど。
グローバルな視野で見た政治や経済の流れと世界の動きを反映させてリアルな現実感のあるスリリングな展開の小説です。
『21世紀人類が直面するのは、犯罪との戦争だ。民族の軋轢、宗教の対立、そうしたものに加え、犯罪との戦争が人類の大きな課題となる。』(Ⅱ226P)
『いいか、どこの国の、どんな肌色の人間だろうと金と鉛玉のどちらをとるといわれれば、答えは決まっているんだ。・・・麻薬組織の連中にとっちゃ、国境も人種も関係ない。
銭がどこにあるか、誰からうまい汁を吸えるか、それだけが問題なんだ』(本文より)
暗脈する敵役の元CIAの二人のアメリカ人のサリー・ヤンとモートンの動きも複雑で面白い。
この本を読んでいて何度も出てくる場所を2004年タイ・ミャンマー・ラオスの国境が交わるメコン川の ゴールデントライアングルを目指したことを思い出していた。
バスとテンソウ(乗り合い小型トラック)を乗り継いで旅し、そこにあったタイ側の観光化された現実と反対にミャンマーとラオスの方は、家も人々も見えない緑と土との自然の風景だけの貧しそうな対比だった。
唯一ハウス・オブ・オピウム(麻薬博物館)などの施設で見た過去の阿片の吸引器や芥子栽培の写真の展示物がその過去の痕跡を残しているようだったが、今は表向き芥子栽培はなくなったようだが現実のその裏事情はどうなっているのだろうと感じた。
長編だが内容が面白いので長さを感じずに読了出来た。流石大沢ワールドよく取材調査され手いるように思えた。
2009年12月 集英社 刊
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大沢在昌著「罪深き海辺」

2009-08-18 | 大沢在昌
『サンデー毎日』に連載されていた「ゾンビシティ」の単行化本。
アメリカらやって来た主人公の干場功一が、爽やかで強くてカッコイイ。
そんな奴が、財政破綻寸前の港町に突然現れた、大地主の遺産相続人らしい。
地元の有力者、市長や警察、やくざに殺し屋、多くの派閥がしのぎを削り、騙し、欺き、互いの盤面をひっくり返す為に暗脈する。
激化する地元の暴力団と広域暴力団の攻防、連続して起こる相次ぐ不審死、進出企業の陰謀か・・・
誰が敵で味方か。騙すか騙されるか。
長い間、大きな石の下に隠れていた“毒虫”たちが動きだし、一気に町に不穏な空気が立ち込める。
そんな中定年間直かの老刑事が命をかけて、町の「禁断の事件」の真相に挑むハードボイルド小説。
大沢ワールド全開一気に読ませる面白さ結末には意外な展開も。特殊ではあるがありそうな地方都市に舞台を設定して、個性豊かな登場人物達の
活き活きとした描写がジメジメした陰湿な話なのに読む人をひきつける
欲望と憎悪の連鎖から逃れられない人間の闇に迫るミステリー。
2009年7月  毎日新聞社刊
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大沢 在昌著 「鏡の顔 傑作ハードボイルド小説集 」

2009-05-14 | 大沢在昌
大沢在昌のすべてが堪能できるハードボイルド短編集というふれ込み。短編12編を収録。初出展が何処かが抜けているが何処かで読んだ作品もあった。酒場の話しが多くてややこしい気がした。
新宿鮫シリーズの短編小説、破門されたヤクザからの電話・・・「夜風」
ゴルフ熱が醒めて久しぶりに釣りに出た男の話・・・「年期」
閉店間際のバーに現れた別れた女にバーテンは・・・「Saturday」 
過去を捨てにやってくる客を待つというバーを探す・・・「二杯目のジンフィズ 」
かつての少女と11年待ち続けた男の再開・・・「Wednesday」 
「借りもののひとり」を楽しめる酒場で・・・「ひとり」
親友の遺した酒場を続ける男。親友に対する身内の悪意も引き継いで・・・「空気のように 」
女が待つ家に殺し屋が差し向けられて、濡れ場が2回もある・・・「ゆきどまりの女」
別荘地の見回りをする管理人、主人公の・・・「冬の保安官」
佐久間公シリーズの短編小説、戦死した旧友の娘を捜す元傭兵からの依頼を受ける・・・「ダックのルール」 
ジョーカーシリーズの短編小説、大学時代の友人の消息を知りたいとの依頼だったが・・・「ジョーカーと革命」 
殺した相手の幻影に怯える殺し屋と他人の顔を切り取ることに執念を燃やすカメラマンが出会ったとき・・・表題作の「鏡の顔」。
『「なぜ私の年を訊いた?」 「どんな約束であろうと、口でしか、守ることはできない。絶対確実な約束など、この世には存在しないことを、あなたが知っている年だと思ったからです」 「なるほど」 ダッグは眼を細めた。眠たげな表情になる。夢でもみているかのようだ。 「私はちがう。いつでも約束を守ってきた。だから君にも守ってもらう。もし破ったら、その時は、約束しよう。君を殺す」 ダッグが本気でいっていることは僕にもわかった。彼は、僕が今まで見てきたいかなる人間とも種類がちがう男だ。彼にとってルールはひとつしかなく、それを決めるのはダック自身である』(「ダックのルール」より)
2009年2月ランダムハウス講談社刊
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