読書備忘録

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貫井徳郎著「新月譚」

2012-10-06 | 貫井 徳郎
好きになり愛した浮気男を取り戻す為に整形手術を受け外見を変えたり、男の関心を買うために小説家になり賞を取るまで努力する女の心の様を描いた小説。
八年前、突然絶筆し、現在、57歳になった作家・咲良怜花を、26歳の若い編集者・渡部敏明が訪ね、熱心に復活をすすめる。
やがて彼女は、半生を語り始める。なぜ、小説の作風が変わったのか。なぜ、突然、絶筆したのか。
そこで明かされたのは、ある男性木之内徹との出会いと恋愛の顛末であった。
主人公の和子(怜花)は作家として成功、名だたる賞を次々と受賞しながらも突然断筆をしている女。
整形手術して外見を変えてブスから美しくなったのに、まわりの人から疎まれるとか、その虚しさに気がつくシーンなど、スリリングに変わっていく彼女の心理や背景が気になって最後まで一気に読ませてくれた。
整形して復讐する女を描いた百田著「モンスター」のようなサスペンスやミステリーでもない呆気ない突然の終り方に失望感が残る。作中主人公が小説を書く苦労語るのは著者自身の愚痴かも。
整形して昔の顔を捨て新しい顔を手に入れた主人公は家族とその男以外は誰にも気付かれることなく賞を取り有名になるが、・・・・人は外見に惑わされる。その人だけが持っている面白さを見落とす。
「そうか、今日は新月なのか。星はいくつか瞬いているものの、夜空を照らす月の姿はない。どこかに行ってしまったわけでなく、確かにそこにあるはずなのに、見えない月。まるでわたしのようだと思った」(P470)
2012年4月 文藝春秋刊

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