読書備忘録

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貫井徳郎著「紙の梟 ハーシュソサエティ」

2022-12-27 | 貫井 徳郎
「人を殺したら死刑」のルールある世界を描いた5つの連作物語。ここは、人を一人殺したら死刑になる世界。私たちは厳しい社会(ハーシュソサエティ=過酷な社会)に生きているのではないか?そんな思いに駆られたことはないだろうか。一度道を踏み外したら、二度と普通の生活を送ることができないのではないかという緊張感。過剰なまでの「正しさ」を要求される社会。人間の無意識を抑圧し、心の自由を奪う社会のいびつさを拡大し、白日の下にさらすのがこのシュミレーション小説である。恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く。被害者のデザイナーは目と指と舌を失った重症の姿で発見されたていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?重傷だが殺されてはいないが――「見ざる、書かざる、言わざる」。電話圏外の孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの男女6人の中にいないことになるのだが、正当防衛や殺人者をかばったらどうなるのか・・・「籠の中の鳥たち」。いじめによって自殺したらどうなるのか。頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?・・・「レミングの群れ」。俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ。大事な姉を姉の恋人に殺されたと思っている男の復讐譚・・・「猫は忘れない」。死刑を望んでいない被害者は遺族。作曲家の笠間耕介は、8ヶ月前からつき合って結婚を考えていた書店員の恋人を殺されます。犯人の供述から、恋人の意外な一面を知らされることになり、さらに刑事から、恋人か偽名を使っていて素性不明であることを聞いてショックを受けます。笠間はツイッターで恋人の情報を必死に求め、そして最後にたどり着いた場所にいたのは。・・・表題作「紙の梟」。死刑制度とかイジメとか罪の重さと罰の軽重、被害者や加害者に対するネットや世間の風評等、深く考えさせられました。重いテーマとミステリーが融和した物語ですが、死刑制度に関しての蘊蓄が繰り返される展開にはうんざり。
2022年7月文藝春秋社刊



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