読書備忘録

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貫井徳郎著「邯鄲島遥かなり」下巻

2022-05-04 | 貫井 徳郎
戦後・平成編。感動の終幕へ、そして新たな始まりへ。一ノ屋の血を引く信介の獅子奮迅の活躍で、神生島は戦後の復興に歩み出した。それぞれに重荷や悩みを抱え、決断を迫られながらも、穏やかな営みが続くかに見えたが・・・思いがけず、島の暮しは一変する。
第14部 明日への航路・・・顔の半分に大火傷を負って復員したひ孫の信介が、本土との交通の途絶えた中で、帆船を使って本土に渡り、島に必要な物資を運び、連絡船の会社を再開させ、島の復興に貢献。信介と一緒に住む戦災孤児の勝利は、信介の幼なじみで、相思相愛の良子を結び付けようと奮闘するが・・・。第15部 野球小僧の詩・・・中学高校と島の野球部で活躍する玄孫の静雄の話。甲子園を目指して本土の予選を勝ち抜き、決勝戦へ。青春野球小説。第16部 一ノ屋の終わり・・・一ノ屋本家の跡取りなのに、同性愛志向の、女性を抱けない松人の苦難の人生。歌手になった同級生南野理香との友情。第17部 邯鄲の島遥かなり・・・イチマツから数えると公孫。静雄の娘で、平成直前の昭和65年1月生まれの育子の物語。島の火山噴火で全島民8千人全員の避難で、本土の高校、大学と進学、両親は復興した帰島。大学4の時に東日本大震災が起き、ボランティアに行く。本土の銀行に就職するが、ボランティアで知り合ったアルバイト青年ヨシアキと、同棲生活に入る。やがて、ヨシアキが神生島に熱烈な関心を示すようになり・・。島民は本土のことを〝くが〟と呼んでおり、島のはっきりした位置は不明だが、東京の離島・神生島に生きたある一族の150年の群像歴史ドラマ全17部全巻1700頁ほどの長編でしたがいろんなジャンルの混ざった連作で意外と長く感じず読了できました。一ノ屋の血を引く人も、引かない人も、自分の人生を一所懸命に生きてきた。そうした人々の連なりが歴史となるのだろう幕末から令和に至る日本の近代史の小説でした。
2021年10月新潮社刊



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