原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

刑事事件の判決

2011-07-21 | 日記
言渡しの前に,何となく察しがつくことがあります。

・理由から述べられる→死刑判決(これ有名ですね。ただし,「しっかり理由を聴いてもらいたい」というポリシーをお持ちで,常に理由から述べる裁判官を知っている。そのポリシーを知らずに,最初に傍聴した時は,ドキっとした)

・判決言渡期日が,午前中の短時間の枠に入れられている→猶予付き判決(一般論として,猶予の場合の方が判決は短い)

・求刑よりもかなり短い年数の懲役なり禁固→実刑判決(猶予の場合は,求刑に近い長めの懲役なり禁固が言い渡される)

で,主文の言い渡し(猶予付き)は,これもご存知の方が多いと思いますが,

「被告人を懲役○年に処する」

「刑の執行は○年間猶予する」

という二段構えでなされます。

今日,ちょっと前に,「猶予になりますように」と書いた事件の判決言い渡し。期日が,午前中の短時間の期日に指定されたので,猶予になるそうだと思って主文の朗読を聴いていたら,ドキっと。なんと,求刑よりもかなり短い懲役の宣告。「うそぉ?」と思い,裁判官を見るも,裁判官は次の言葉を発せず…。4~5秒経って,ようやく,「刑の執行は○年間猶予する」との宣告が。ほっと一息。ただ,やっぱり猶予期間は通常よりも長いものでした。猶予期間は,普通は3年,4年だと厳しいという感じ,5年だと裁判官が実刑か猶予か相当悩んだ結果,と言われます。

今日の裁判官の言葉で印象に残ったもの。執行猶予制度の説明をして,猶予とは刑が免除されるものではないことを強調したうえで,

「…ですから,今日を新たな出発点として再スタートを切ってください」

閉廷後,Aさんは先生と,それから私に対しても深々と頭を下げて御礼を言ってくれました。そして,先生からAさんに,

「私は,同じ人の刑事事件を2回はやらない主義です。『またお願いします』と言われても,絶対に引き受けませんので,よく肝に銘じてください」

…なるほど。「良かったですね」ではなくて,こう言えばいいのか。後で聞いてみると,そうは告げても「またお願いします」と言ってくる人はいるそうなのですが,本当に絶対に引き受けないと。そして,猶予付きの判決となった全てのAさんに,判決宣告後,近い時期に事務所に来てもらって,判決謄本と手紙を渡して,「悪いことをしそうになったらこれを読みなさい」と言うそうです。そこまでしてようやく,弁護人としての仕事が終わり,と考えているそうです。

猶予判決をもらって,「良かったですね。もう悪いことはしちゃだめですよ」で終わりのケースが(先生が)ほとんどだと思うのですが,ここまでしてもらえるAさんは幸せだし,再犯率も低下するのでしょう。刑事弁護人としてあるべき姿だなと感じ,生意気ながらいずれ私も真似をさせてもらおう,と思いました。

その後,先生の顧問先の会社のパーティー(何と,このパーティーで大学の後輩と数年ぶりに再会という奇跡!)。昼のパーティーだったので,私は,一応確認をしました。

「終了後,先生と○○の和解案について検討することになっていますが,お酒を勧められたら飲んでも構わないでしょうか」

すると…

「断ったら失礼じゃけぇ,飲みんさい」

そんなこんなでちょっとだけビールを頂き,やや眠くなりながらも○○の和解案を検討しました。

今日は,こんな一日。これから,本屋へ行って,法セミを買ってまいります。

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