原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

司法試験問題漏洩事件に関する関するコメント

2015-09-09 | 日記

今般の司法試験漏洩事件について,意見を述べます。

 

司法試験は,最難関の国家試験の一つであり,合格すれば,事実上,法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)になる資格が与えられます。かつての,「苦節10年」,「合格率数パーセント」の試験から,今の新しい試験へと制度的な変化はあったもの,その難しさは変わっていないと言えます。問題・解答の分量は増え,また,試験科目も増えています。何より,今の司法試験は,法科大学院修了あるいは難関予備試験を突破した者のみが受験する点で,見た目の合格率よりも厳しい試験であります。受験生は,「人生をかけて」試験に臨みます。

 

司法試験については,かつても問題の漏洩が疑われる事件が起こりました。私は,その年に不合格を経験しています。今振り返れば,その年に私が不合格になったのは他ならぬ私の力不足であり,問題漏洩が疑われた一件が私の合否に影響を及ぼしたことはないと言えるのですが,その年に受験生であった私は,強い憤り,やりきれなさ感じたことを今も鮮明に記憶しています。自分が人生をかけて挑んでいる司法試験とは何だ,と。

 

今般,報道されていることが事実であれば,人生をかけて試験に挑む受験生を指導する立場として,また,法曹として,強い憤りを覚えます。私は,上に述べた経験から,今年,残念な結果となってしまった受験生の心中も何がしか察することができます。世間からすると,もしかしたら,「それであなたが不合格になったわけではないのだから。」と捉えられるかもしれませんが,人生をかけた挑んだ受験生からは,試験そのものが茶番にしか見えず,やり場のない怒りのみが込み上げてくるものだと思います。

 

今回,問題となっている憲法の先生の著書は私も読み,その内容が優れたものであったことから,私は,受験生に試験対策として勧めておりました。当該先生の教えを受けた者から,その面倒見の良さは聞いております。それだけに,残念でなりません。

 

周知のとおり,司法試験には受験回数制限があります。受験生は,失権の恐怖と闘いながら,人生の大一番に挑みます。「他の受験生の合否に影響がなかった」では済まされない問題です。徹底した再発防止策を講ずることを切に望みます。


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
来年以降の問題について (高梨)
2015-09-09 18:34:33
いつもブログを拝見しております。
来年司法試験受験予定の受験生です。

今回の一件で、発言力の強い問題作成担当者が作成から外れましたが、来年以降の憲法問題の傾向は、相当変わると予想されますか?
先生のお考えをぜひ伺いたく、宜しくお願い致します。
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Unknown (はら)
2015-09-09 22:11:09
大きく変わることはないと考えます。というのは、これまで憲法の問題そのものが批判されてきたわけではないからです。また、問題の傾向を変えれば今回のような問題が起こらないわけではないからです。こういう場合、おかしな憶測に振り回されず、地道にこれまでのように対策をした者が勝利すると思います。
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Unknown (高梨)
2015-09-09 23:21:16
早々にご返答いただき、ありがとうございました。
気にせずに、今まで通りの対策をしたいと思います。
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Unknown (受験生)
2015-09-10 00:32:48
似たような質問ですみません。
青柳先生の黄色の基本書は、基本書としての価値はなくなってしまったのでしょうか。
個人的には気に入っていたので、質問させていただきました。
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Unknown (はら)
2015-09-10 08:23:45
「考査委員の本である」という付加価値はなくなりますが、基本書そのものの価値は変わりません。誤植はあれど、内容的には優れたものであり、今の司法試験の傾向を踏まえたものですし、クセのない、学生向きのオーソドックスな記述の本です。使い続けて頂いて何ら問題ありません。
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Unknown (受検生)
2015-09-10 10:55:59
ご返答ありがとうございました。
参考にさせて頂きます!
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Unknown (真田)
2015-09-10 11:03:46
今年、不合格だった者です。
先生、我々の気持ちを代弁してくださって、ありがとうございます。
少し、気が晴れました。
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Unknown (はら)
2015-09-10 21:54:33
私は、コメントしたように思います。やはり、受験生もそう思うのですね。こんなことにめげず、自らが行くべき道を進んでください。
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