原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【LS既習入学予定の方へ】入学までにすべきこと

2011-02-16 | 勉強法全般
今日は,里親検事(←検察修習では,指導検事の他に「里親」と呼ばれる副次的な指導検事が付されるという制度があります)から事件をもらってきて,その検討(終局処分の検討をします)。自動車運転過失致死事件なのですが,記録を読んでいるだけで切なくなってしまう…(そんなことではいけないんでしょうけど)。一般的な刑法犯や薬物事犯と違って,多くのケースが過失なんですよね。やろうと思ってやったわけではない事故が大半。車の運転には注意しなくてはいけません。弁護士はあまり車を運転しない,と言われますが,その意味を実感しました。

さて,表題のことについて少し書いていきます。今日は,既修者の方を対象に。

いよいよ入学まであと1か月半。司法試験まで2年3か月。この2年3か月って,あっという間なのです。今日まで,どのくらいの期間,法律の勉強をしたかはそれぞれ異なるかと思いますが,すでに2年3か月以上勉強をした方も多いのではないかと思います。とすると,勉強をはじめてから司法試験まで,すでに半分以上の期間が経過したことになるのですね。

で,それを踏まえて言うならば,LS入学前と言えど,やるべきこと・できるとはどんどんやるべきです。長く予備校講師をしてきて思うことは,試験に受からないのは端的に言って,「時間切れ」が原因だということです。時間切れ→実力不足→不合格,なのです。

では,何をすべきか。難しい本をびっしり読んで行こう,というのはいけません。モノには順序というのがありまして,また,司法試験で要求される水準との兼ね合いもありまして,世間で難しいとされる本を読んでいくことはさほど効果的ではありません。まずは,確固たる土台を築くこと,それが先決です。一般的に定評ある基本書にしっかりとあたる,百選レベルの判例の理解を深める,そしてそれより何より,条文をしっかりを把握するためにも素読をする,こういったことを「万全に」しておくべきです。「法律家として当たり前の主張・判断を,当たり前にできること」こそが,2年3か月後に目指すべき到達点です。王道を行ってください。

以上に書いたインプット中心のことよりも,実はお勧めしたいのが,アウトプットです。インプット(読む勉強)って,長い時間がある中で,独力でやるには向かないのですよね。集中力を欠く状態で読み進めていって,結局あまり残らなかった,というのもよくあるパターン。

いっそ,短答過去問の検討・演習を開始してみてください。能動的にする勉強こそ,こういう時期には成果を期待できるものです。そして,司法試験が要求する水準を,早いうちに理解してください。そのうえで,何をどのように勉強していけば1発で合格するか,イメージができるようにする,それがこの時期の理想的な時間の使い方であると思います。

LSに入学すると,かなり忙しくて,なかなか腰を据えて過去問検討をする時間はないものです。だからこそ,この時期をうまく使ってください。

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6 コメント

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Unknown ()
2011-02-18 18:29:07
いつも楽しく読ませていただいてます。

本文の内容とはあまり関係のない質問になってしまうのですが、民法の答案の書き方について質問させて下さい。

要件事実を学んでから、答案を書く前提として訴訟物、請求原因、抗弁等を整理するようにしています。しかし、それをそのまま答案に反映させると、答案が長くなってしまう傾向にあります。特に、旧試の問題でそうなる傾向にあります。
要件事実による思考は有益だと思うのですが、答案への上手い反映の仕方がみつからず悩んでいます。なにかよい考えがあれば教えていただけないでしょうか?
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Unknown (はら)
2011-02-19 19:42:42
本文と無関係な点は,何ら問題ないですよ~。

その点,実は受験生の時に,私も悩みました。私が到達した結論からいうと,あまりに要件事実に引っ張られてはいけない,ということです。

新司法試験で要件事実が問題になる時は,わりとわかりやすく出題されます。「この要件は主張立証するころが必要か」といった形で出されるパターンが多いです。ここは,思いっきり要件事実的な思考をアピールしなくてはいけない。

そうではない限り,通常の「法律関係を論ぜよ」と同旨の聞き方がメインです。この場合,主として問題になるのは法律構成と事実認定。ですから,あまりにも硬直的に要件事実的に思考してしまうと,やりずらくなってしまいます(さして問題にならない点も万遍なく書いてしまいがち)。

イメージ的な表現で申し訳ないのですが,まずは少し要件事実的な思考を抑えて取り組んでみる,という姿勢を持つとよいのではないかと思います。

引き続き疑問等あれば,いつでもどうぞ~!
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Unknown ()
2011-02-20 20:03:42
ありがとうございます★少し押さえ気味で書いていこうと思います。


引き続き質問させて下さい。
民訴の自白についての質問です。

179条の「自白」と弁論主義第2テーゼのいう「自白」とは同じものなのでしょうか?
このような疑問が生じたのは以下のような事情によります。

①一般的に弁論主義第2テーゼの「自白」といった場合、そこでいわれる「事実」は主要事実に限られるとされています。そして、この「自白」の不要証効の根拠は179条が挙げられます。
②その一方で、間接事実に対する「自白」であっても証明不要になることには争いがないと言われ、この場合根拠として179条が挙げられます。
そうすると、179条の「自白」の定義(対象とする「事実」に関して)が、①と②で異なって用いられていることになって、おかしなことになると思うのです。
179条の「自白」は間接事実も含む広いもので、弁論主義第2テーゼにいう「自白」はそれよりも狭い(つまり、①の「自白」概念は、②の「自白」概念に包含される)と考えると一応納得がいくのですが、そのように書いてある基本書は見当たらず、裏付けもないままとなっています。

どう考えるべきなのでしょうか?

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Unknown (はら)
2011-02-21 23:15:38
お答えします。

>①一般的に弁論主義第2テーゼの「自白」といった場合、そこでいわれる「事実」は主要事実に限られるとされています。そして、この「自白」の不要証効の根拠は179条が挙げられます。

第2テーゼの意義の理解に誤りがあります。第2テーゼは,自白に審判排除効(裁判所拘束力)を与えるものです。

自白の効果について整理しましょう。

まず,明文上の効果として,(ア)証明不要効があります(179)。これは,いかなる事実についても妥当します(条文上の効果ですから)。解釈上の効果として,(イ)審判排除効と(ウ)撤回禁止効があります。(イ)審判排除効は,第2テーゼですね。

主要事実については,(ア)~(ウ)の全ての効果が認められます。他方で,間接事実・補助事実については,自由心証主義との関係から,(ア)証明不要効のみが認められるとするのが,判例・通説的な理解です。

結果,主要事実の自白に関しては,証明する必要はないし,裁判所は自白した通りに認定しなくてはいけない(裁判所に対する拘束力=審判排除効)。

他方で,間接事実・補助事実については,証明する必要はないけれども,裁判所はその自白された事実と異なる認定をすることもできる(裁判所に対する拘束力=審判排除効はない)ということになります。

主要事実の自白,間接事実・補助事実の自白かで,自白の意義(定義)を動かすわけではなく,あくまで効果の違いの問題なのですね。

…このテーマで,総合200番台であり民事系230点近く(←神です。私には到底できません)の合格者と,昼飯を食いながら議論するという,修習生らしいことをしてしまいました(笑)

<参考文献>

藤田「解析民事訴訟法」(東京大学出版会)70頁以下,特に,78頁以下参照
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Unknown ()
2011-02-22 21:20:40
ありがとうございます★

今まで、自白の定義を「口頭弁論期日または争点整理手続期日における、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述」と覚えた上で、そこでいう「事実」とは「主要事実」だと考え、その結果、自白とは「口頭弁論期日または争点整理手続期日における、相手方の主張と一致する自己に不利益な主要事実の陳述」と考えてしまっていました・・・。こう考えてしまっていたために、「間接事実の自白」って表現は矛盾しているのではないかと考えていました。

よく「自白の対象たる事実は、主要事実に限られる」という記述を見かけるのですが、「審判排除効が認められる自白は主要事実の自白である」と考えるべきですよね?

すっきりしました。


審判排除効
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Unknown (はら)
2011-02-24 18:27:59
自白の対象は「事実」であるから,これには主要事実・間接事実・補助事実いずれも含まれる。それゆえ,いずれの場合も179条が適用され証明不要効が認められる。

他方,第2テーゼ(審判排除効=裁判所拘束力)が認められるのは,自由心証主義との関係から,主要事実に限られる。

以上が一般的な理解です。参考になったのであれば幸いです!
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