原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

未修以上,既修未満で未修入学したLS新入生の方へ

2011-04-08 | 勉強法全般
遅ればせながら,LS新入生の皆様,ご入学おめでとうございます。新生活に慣れるまで,ちょっと大変な日々が続くかとも思いますが,法曹になるためのトレーニングの日々ですので,有意義な時間を過ごしてください。

さて,今日は,表題に該当する方へ。制度設計段階では,未修者といえば純粋未修(主に社会人でしょうか)を想定していましたが,実態はそうではない人が多いです。法学部卒・非社会人で未修入学する方が非常に多いのが実際のところです。新司法試験受験生全体との比較でみても,かなりの部分を占めると思います。

そういった方に向けて,今日はちょっと厳しめのことを。

正確なデータはないんですが,私が知る限り,上記に示した法学部卒・非社会人で未修入学の方が,最も三振率が高いのではないかと思います。私が知っている三振してしまった方というのは,ほとんどがこの類型に属する人です。

なぜか?私見ですが…

①既修入学を目指して一度本気で勉強をしたことのある人に比べて,知識の定着度が低い。

②純粋未修の方は,自分が純粋未修であることを意識して1年目から本腰を入れて勉強するが,法学部卒で未修入学の場合,最初は周りよりもちょっとできるので,気の緩みが出てしまう。結果,どこかで純粋未修の人に逆転されている。

③仕事を辞めて(退路を断って)法曹を目指す人よりも,勉強の精度が落ちる。

これは,結構よく言われることで,確かにそうしたこともあるように思います。ただ,私が思うに,一番大きな原因は…

法学部卒であるのに既修入試に挑戦しなかった,あるいは既修入試に受からなかったのはなぜか

という点に集約されるのだと思います。

厳しいことを言ってしまえば,4年間も法律の勉強してモノにならなかったのはなぜか,ということです。

一つには,学部4年間,ろくすっぽ勉強しなかった,ということのはずです。同じようにもう3年間過ごしても,到達点は知れています。

もう一つ,さらに大きな原因は,勉強の方法を間違えた,より具体的なことを言えば,表面的な勉強しかしなかった,ということだと思います。定期試験前に,いわゆる論証パターンを暗記して,知っていることだけ答案に書く,そういう勉強を重ねてきてしまった人,いませんか?あるいは,テキストなり基本書なりを読むだけで,法文にあたらない,問題を解かない(論文を書かない),ということをしてきた人はいませんか?

以下,ご気分を害するかもしれないので,「嫌!」という方は読まないでください。

現在の(新)司法試験は,対出願者数でいえば,合格率は既に1割台です(報道される2割台の合格率という数字は,対受験者数です。その背後に,その年の受験を諦めて受け控える人が数多く存在するわけです)。そして,論証パターンを暗記するだけ,法文にあたらない,論文を書かない,といった法学部4年間を過ごしてきた人は,間違いなく三振予備軍です。何かを変えなくてはいけない。リスタートのチャンスは,これを逃したら,もうありません。

だからこそ,LS1年目は,腰を据えて勉強してください。課題・予習に追われて,その場しのぎをしていては,事態は改善しません。

7年間(+2年間=9年間)も法律の勉強をして,成果がなかった,そういう状況にしてはいけない。が,それは現実にある。成果を出すための,有意義なLS3年間にしてください。勉強の方向性に迷ったら,気軽にコメント欄で質問してください。他ならぬ私が,上に書いたようなケースの一歩手前までいったもんですから,気持ちはよくわかります(笑)

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8 コメント

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Unknown (はら)
2011-04-26 22:55:01
いえいえ,とんでもありません。またいつでもどうぞ。

苦労の先に,バッジがあるはずです。
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Unknown (ぐらぐら)
2011-04-26 20:40:35
コメントありがとうございます。

構成をたくさんやる、むやみに択一の問題をつぶす、これが粗さの原因のひとつというのは、その通りかもしれません。
いろんなものが点のままで繋がりづらいというのも、まさにこれが原因ですよね。
ここを直さないと論文がぐらぐらなのも当然なわけで。基本書を読むのは苦手なんですが、それがこういう結果になっていると思います。
読みやすいものを使って、箇所を絞って、飽きないようにしながら、取り組んでみます。

長々と相談にのっていただき本当にありがとうございました。
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Unknown (はら)
2011-04-25 19:12:56
まず,論文についてですが,「構成をたくさんやる」というのが,大雑把な勉強になっている一因のように思います。これ,実は私も失敗してるんです…。

構成は,「構成の」勉強にはなります。ただ,さらに進んで実際に「答案にする」という段階があって,構成段階ではいいかなー,と思っていても,答案にすると実は細部が書けない,ということがあります。

ですから,構成の数をこなすことも大事なのですが,「その中のいくつかは」きちんと答案にする,ということをしてください。「粗さ」に気付くと思います(私はそうでした…)。きっちり規範を立てる,的確に認定(あてはめ)する,こういった力は構成だけだと養われないのです(で,ここが点数を左右する)。

過去問については,きっちりと「答案」を書いて,出題趣旨・採点雑感・ヒアリングを採点基準として,自分で採点するのが効果的です。

短答の場合,思考が要求されると止まる,という症状の場合,それは「単発の知識は入っているが,論理体系としては理解不十分」ということかもしれません。とすると,まず誤肢の書き換えなどを通じてどこが不理解であるのかを明らかにする,そして基本書をしっかりと押さえることから出発した方がいいのかな,とも思います。憲法だったら,芦部・高橋,行政法だったらサクハシ・リークエ,会社法なら神田・リークエ,民訴だったら講義案,刑訴だったらイケマエくらいの厚さのものでかまいません(もちろん他の本でもOK)。すべての科目でなくても,科目を絞っても構いません。制度そのものの理解,制度趣旨の理解があると,知らない問題でもだいたい対処できるようになり,短答ハイスコアの人はそんな感覚で解いていると思います。

肢別は単発の知識の確認には非常に有益な本で実に多くの受験生が使っているのですが,それだけでは十分条件を満たさない,ということなんですね。

なお,短答・論文問わず,条文をしっかり素読・通読して,正確な条文知識を入れていくことは何よりも大事です!
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Unknown (ぐらぐら)
2011-04-21 23:42:01
大雑把になってるところの書き出しと、適度に几帳面に生活するように、心がけてみます。
ご指摘、ありがとうございました。

ただ、それでも大雑把な私は、インプットだけだと、のべーっと読みがちで、問題解いてみたら間違う、、みたいなのを今まで繰り返してきました。
こういったタイプだと、アウトプットをどの程度取り入れてやるのがいいでしょうか。
(今までは論文:構成をたくさんやるなどアウトプット中心、択一:どちらかというとインプット重視過去問中心、でやってきましたがその結果どちらもぐらぐらなままです)

対策として、たとえば民法の肢別を回しながらムラ潰しをしていくのは良いでしょうか。やったことはあるのですが、時間はかかるわりに、結局やりこなすだけで処理しきれなかったのか何なのか、相変わらずぐらぐらなままで今に至ります。
少し考える問題にされると対処できなかったりします。思考が、思い出そうという方に向かった瞬間、柔軟さが失われフリーズした感じになって考えられなくなります。で、必ず間違います、後で答えを見たらほとんどわかるのですが。これもつめの甘さでしょうか。。。

結局要領が悪くて、全部中途半端になってるのかと思います。やり方は人それぞれだと思うのですが、自分はいろいろ試したけどどれも身についてなくて、どれが合うのかもわかっていないままとにかく勉強する→試験がやってくる、というのを繰り返してる感じがします。
ただ、お恥ずかしいのですが、未だはっきりとした打開策が見出せません。


とりあえず、誤肢の書き換えと、大雑把になってるところの書き出しは実行していきますが、正確性を安定させるには、他に何を、どうすれば変わっていくと思われますか。

修習生バッチをとるためなら何でもします。
何かアドバイスしていただけると嬉しいです。
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Unknown (はら)
2011-04-19 19:27:23
そうなんです。試験で要求されるレベルは,才能云々ではないと思います(実際に自分がやってみてそう思いました)。強いて言うなら,根性でしょうか。あるいは,良い意味での,適度な,几帳面さ・神経質さ。

誤肢の書き換えに加えて,自分なりに大雑把にやってきてしまったところを洗い出してみてください。おそらく,かなり深く理解しているところと,浅い理解に止まってしまっているところと,ムラがあるんじゃないかと思います。

こういったところをしっかり詰めて,自ら「打つ」んです。もう少しのところなんですから,バッジを獲得しましょうよ!

さしあたり,修習生バッジなんですが(笑)
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Unknown (ぐらぐら)
2011-04-14 22:05:19
はら先生

早速のお返事をありがとうございます。

私、どこかで見られてるのかな?というくらい
ぴったりなことばかりで驚きました。

「正確性」自分でもそう思っていましたし、去年落ちた時合格者にもそう言われました。

自分なりに気をつけてるつもりが、本当にざっくり大雑把な性格なので、つめが甘い、が抜けてないのだと思います。
もう、試験に向いてないのかも、と、何度も思ったのですが、試験に合格する程度のきっちり度なんて、きっと努力でなんとかなる範囲内ですよね。苦手だし、できなくて、逃げていただけです。
そして、なーんとなく詰めた風でよしとして「回した」とカウントしてきた結果、こんなことになっているのだと思います。

対処法として、まず、五肢の書き換えからやってみます。その後どういった方向で自分や自分の勉強方法を変えていけば良いかをその都度修正していくと思うので、その際にはまた相談させていただいてよろしいでしょうか。


こんな私ですが、最後にヒット、打ちたいのです。
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Unknown (はら)
2011-04-14 18:12:52
ぐらぐらさん,なるほど…。ぐらぐらさんと同じような悩みを抱えた人は多く,私のLS同期(今年5年目の年),LS・学部の後輩,友人の友人,多くの人から同様の相談を受けます。

そういう判断で受験を1年「延期」するのであれば,それは間違ったことではないと思います。ただ,当然ながら,13か月後に向けてもうスタートするという前提です。

どうすれば合格するか,「凡人レベルのもの」ということは,まさにその通りです。実務家登用試験ですから,「普通の実務家(もっと言えば,新人の弁護士・裁判官・検事)が当然に考えるルートで考えられるようになる」,それが合格レベルです。それ以上のものは求められていない。しかし,それ以下では合格させてくれない。

要するに,合格に求められているのは,まずは知識の,思考の「正確性」なのです。採点官があっと驚くような思考方法ではないのです。

察するに,その正確性の部分が不十分なのではないかと思います。受験期間と短答のスコアの関係から判断してそう思います。条文を勉強するに,判例を勉強をするに,「詰めの甘い」勉強をしていないでしょうか?例えば,条文の留保部分の確認が甘い,判例の事案を押さえていないので短答の肢と素材判例が結びつかない,判例の事案との相違が判断できない。論文でも同じく,素材判例と結びつかなかったり,判例がいかなる事実をいかに評価して結論を出しているか,素材判例との事案の相違が判然とせず的を射ないあてはめをしてしまう,など。

まず必要なのは,正確性の不十分な知識を正確な知識に変化させていくことです。条文を熟読する,短答の「誤肢」を正解肢に書き換えていく。百選レベルの判例については規範部分だけでなく事案やポイントとなる事実を意識して押さえていく。

そして,「そのうえで」,白紙の段階から自力でアウトプットを重ねていくことが必要です。

知識が正確であるかどうかのチェック,そのトレーニングには,上に紹介した「誤肢の書き換え」が有効です。5年分の過去問をすべてやって,確認してみてください。いかに正確な知識が要求されているか,わかるはずです。

1年で飛躍的に伸びる例はいくらでも存在します。重要なのは,「そうしよう」と思うか否かだと思います。できるのかという疑念は,それを阻害するように思います。あと1年と決めたんのであれば,徹底的にやるべきです。

3回目でようやくヒットを打った私はそう思います。頑張ってください!また,何かあれば遠慮なくどうぞ!
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Unknown (ぐらぐら)
2011-04-14 16:34:36
はら先生

いつも参考になる記事を書いてくださりありがとうございます。

私は上記受験生と似たような状況にあり、5月に三振目を振り切るか迷った末受け控えを決意しようとしている者です。
今後についてアドバイスしていただければと思いコメントしました。

私は大学4年生(非法学部)で突然弁護士になろうと決意し、1年だけ予備校の基礎講座を受講しどうやら旧司法試験はなくなるらしいと知りました。そこでロースクール未修進学に目標を変更し、入れたローに翌年入学しました。(いわゆる下位です)
しかしロー中はがむしゃらに勉強していたけれど力は、、、といった状況で、卒業後1年受け控えて受験対策をしました。

もっとも1回目の結果は択一で落ち、二回目の昨年は択一は合格したものの(+3点というぎりぎりです)論文が散々たる結果で、文句なしの不合格となりました。

落ちてから、自分なりに本試験を分析し、答案を合格者に見てもらい、弱点を分析しました。
その結果、ぼんやりとですが何が求められていて、どういったレベルのものが書ければ受かるのか(凡人レベルのもの)はわかりました。

ですが、結局直前期になっても自分がコンスタントにそれを書けるようにならなくて(なんというか安定した最低限の底力のようなものがないぐらぐらな感じ)、たった3点上だっただけなのにおろそかにしていた択一の不安も相まって、これじゃ合格に手は届かない、と冷静に思ってしまいました。


ローで3年、卒業後4年の計7年もやってきてこんなレベルで本当に情けないのですが、最後の一回を、少なくとも自分が受かるはずもないと思ってる状況のまま振り切っていいのか考えました。
その結果、どんな結果だったとしても時間切れだからと(間に合わせられなかったのは私の責任なんですが)無理やりうけては、後悔してしまうと思いました。
そして、どうしても諦めがつかず受け控えることを決意しました。

ただ7年もやってきて無理だったものが、あと一年やったからと言って劇的に変わるとは思えないし、やはり可能性も低いと思うんです。
「何か」が「違う」んだと思うんです。

私は7年かかってこのレベルなので持ってる素養も相当低いです。
でも、こんな私なんですが、なんとかして弁護士になりたいのです。
何かアドバイスをいただけないでしょうか。

どこがどうできないとか具体的なことは書いてませんし(コメント欄なので)受験指導を行ってはいけない修習生というお立場からアドバイスできることは限られているとは思いますが、何かアドバイスしていただけたら幸いです。

コメント欄なのに長々と私的な相談を書いてしまい、失礼しました。
よろしくお願いいたします。
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