大江戸余話可笑白草紙

お江戸で繰り広げられる人間模様。不定期更新のフィクション小説集です。

百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~ 十八

2011年10月16日 | 百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~
 兄様。葉月一日は、八朔のお祝いにございました。このお祝いは、神君家康公が、江戸に入府された日に因んだものにございます。
 尾張様からは鮎、紀州様からは鯛、水戸様からは初鰹が献上になりました。
 元は、百姓が田の神に供え物をして豊作を祈ったことが起源と聞き及びます、なれば千代にとっても大切なお祝いにございます。
 吉原では、花魁たちが白無垢の小袖を着て祝うそうにございます。
 千代は吉原んぞついぞ知りませぬが、粋が尊ばれる江戸で、大福餅のような化粧を施しているのは、大奥の女中と吉原の女郎と言われているのは真にございましょうか。
 十五日のお月見の宴の後、天璋院様が、宮様に新御殿を明け渡し、新築なった西之丸にお移りになられました。
 これにて、これまでの諍いを収めようといった天璋院様のお心配りに思えます。
 ですが、天璋院様が本丸大奥で睨みをきかさなければ、実成院様の御乱行の箍が外れられる気が致します。
 瀧山様の御負担が増さなければよろしいのですが。
 京では、十八日に、会津様、薩摩様と長州様との間に御所にて諍いがあられたと聞き及びます。
 何やら京は物騒にございますれば、兄様はとうに江戸にお戻りの筈。千代は安堵致しております。


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