大江戸余話可笑白草紙

お江戸で繰り広げられる人間模様。不定期更新のフィクション小説集です。

百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~ 十三

2011年10月11日 | 百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~
 兄様。十六日には、神君家康公が、三方ヶ原の戦に破れはしたものの、難を逃れた事をお祝いする、吉祥のお祝いが行われました。
 十六個の餅や菓子を神様に供えま、御目見え以上のお女中には、御台様より餅が下賜されます。
 表では、お大名、お旗本が総登城なさり、将軍様から菓子を賜るのだそうにございます。
 そんな目出たいお祝いの晩にございました。
 西之丸が火炎に包まれ、全焼してしまったのです。御嫡子様が住まう西の丸にございます。将軍様におかれましては、御嫡子様はおられませんので、大事には至りませなんだが、どうにも火事の多き事よ。
 やはり千代は、御火之番のお役目に就きたいと瀧山様にお願いを申し出ました。
 「何が不満かえ」と聞かれましたが、元より不満なぞありませぬ。
 ただ、御火之番なれば、大奥の全てに通じる事ができます。千代の願いは、そこにありまする。
 御火之番は、火の元を確かめるだけのお役にはございません。武芸に長けた者が、大奥の警備を担うのです。
 兄様が奉公に出られた後の事にございますが、千代は山本満次郎先生の道場で剣術、薙刀の手解きも受けております。多少の覚えはありまする。
 先生が、小唄や諸礼躾なども万事お教えくださいましたことが、大奥勤めに役立っております。


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