ティコ・ブラーエ


パパとママの視点から
子供と建築探訪
こどものおやつから考える体にやさしいレシピ

光と影

2009-12-29 | パパ
以前、家族で食事をしていたとき、突然、渉一がなにかに背後から声をかけられたかのように大きく後ろを覗き込んだ。不思議に思いつつ、ふと上を見ると太陽の反射光で照らされた天井が、いままさに影で覆われようとしているところであった。影が、生き物のように部屋の中に入り込んできて、渉一の頭の上を乗り越えて天井の光を飲み込もうとしているような光景に思えた。彼は、天井の光の強弱に反応したのではなく、影がもつ気配のようなものに反応したのかもしれない。いや、影は雲の動きと連動して変化するのだから、雲の気配に気づいたのかもしれない。そのとき、何故かふと川端康成の小説「日向」を思い出した。
恋してまもない頃の二人が海辺の宿で会っている。主人公の男がいう「やっぱり顔を見るかね。」何故か、この主人公は、変な癖をもっていて、傍らにいる人間の顔をじっとみてしまう。この日も、娘からそのことを柔らかく指摘されたのである。彼は、この癖がなぜ身についてしまったのかをずっと悩んで生きている。そして、娘を見まいとして眼をやっていた砂浜の日向が、彼に埋もれていた祖父の記憶を呼び覚ます。そういうなんともない短い話ですが、不思議と心に残る小説です。
太陽が作り出す光と影は、我々に遠い昔に忘れてしまった何かを気づかせるのではないか。なぜなら、いつの時代の人間も同じ太陽を見て生きてきたのだから。


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