斎場より徒歩一分の梅の世か この刹那黄金に染めて猫生まる 大人びた猫の子昔はよかったと 亀鳴くや着信履歴にわたしの名 再臨はこれで三度目蝶の昼 木の芽風山田夢子の実在す(所属誌で結社賞) 花辛夷アダムはエヴァの異名なり 雪柳白さの由縁亡父に問ふ さかしまな虚空横たへて夜の梅 まだ誰も殺めてをらず梅真白 梅の夜やウォルト・ディズニーの「ファンタジア」
俳句総合誌のニューウェイブ「俳句界」を読み始めたのは2014年の11月号からだったように思う。ブログ仲間に勧められて、読者投稿欄に投句をするためであった。当初は、KADOKAWAの「俳句」などに比べて紙厚で文字も大きく、記事も比較的少ないというイメージが強かった。しかし、投句を中心に記事にも目が移ってゆくうちに、逆にそのハンディでコンパクトさが利点となっていった。投稿欄も別冊付録となり、投稿者は他誌の半数程度のため毎号誰かの佳作には入るため大変に勉強になる。上位に入れば懇切丁寧な選評も得られる。さらに、何と言っても目立つのは、【北斗賞】という40歳以下を対象とする新人発掘企画である。今月号もこれまでの受賞者の競泳が特集の一つになっている。各人の作品評は次記事に回して、まずは読み込んでみたい。受賞回の新しいものから抜粋した。・・・《続く》
ストーブや一秒ほどの夢を見て 西村麒麟
手袋を取らねば出来ぬことばかり 抜井諒一
歌ひをる喉を冬の泉とも 藤井あかり
風見鶏ほどのかがやき枯芒 涼野海音
千円の骨壷であり春隣 高瀬祥子
蝶猛くやさしく猛く交りけり 堀本裕樹
咳ひとつまだ見ぬ沼にひかりけり 川越歌澄