限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

沂風詠録:(第338回目)『良質の情報源を手にいれるには?(その43)』

2021-06-13 22:06:42 | 日記
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X-1-1 "Encyclopedia Britannica" (Part 2)

さて、バークレー出張時にEncyclopedia Britannica (以下、EB)の第1版(リプリント)を本屋でみつけて日本で購入したことは前回述べたが、この時、バークレーのUCBの図書館でEB 11th版に初めて出会った。11th版は1911年に出版されたので、実に100年も前に印刷されたものであったが、案外、保管状態が良かった。じっくり見る間がなかったが、大項目で構成で、内容的にもしっかりとしている印象を受けた。帰国後、英語版のWikipediaで調べてみて、学術的に非常に高い評価を受けている版だと分かった。



14thと15th は最近の版なので入手したが、さすがに 11thは 100年も前の出版なので入手不可能であろうと思って当初は全く気にしていなかった。ところがある時、ふといたずら心でWeb検索してみると、日本の古本屋サイトでは、なんと100万円で売りにでていた。博物館入りではなく、売り物もあることに驚いたが、「やはり時代ものなので高いのだな」と諦めかけたが、物はついでとばかりドイツの古本屋サイトをチェックしてみた。すると、何と8万円程で売りにでていたことに二度びっくりした。早速、問い合わせてみると、日本への送料は3万円ほどかかるので11万円程度というのだが、それでも日本で買う1/10の価格だ。



早速購入手続きをして楽しみにまっていると、段ボール2箱に丁寧に包装された11thが届いた。 11thは、どうやらインディアンペーパーで印刷されているものが人気らしく、いつも私が使っている14thより半分程度の薄さだ。インディアンペーパーはめくりにくいので私は好きではないが、普通の紙にすると倍の分厚さになることを思うと、やむをえない選択だったのだろうと思える。ところが、うれしい誤算があった。装丁がバークレーで見たような布地ではなく、総革であったことだ。ただ、出版後100年も経っているので、背中の部分は茶色でぼろぼろであるが、うれしいことに両扉部分は未だに元の姿を彷彿とさせる格調溢れて、「これぞBritannica」という威厳を感じさせてくれる。

11th版は学術的に優れているので、南方熊楠も輸入して所有していたようだ。内容の素晴らしいのは言うまでもないが、挿絵が非常にリアリティに富んでいる。俗に百科事典には原爆の作り方も書いている、と言われるようにこの Britannica は技術的なディテールも懇切丁寧に書かれている。



以下に、アメリカのアマゾンでの11th Editionについてのコメントのいくつかを抜粋して掲げる。

"The fresh clarity of the articles in the Eleventh was a happy change from the forbidding monumentality of the treatises found in other encyclopedias."

"The arrangement of articles tended to make the Eleventh Edition a practical reference work for layman rather than an erudite work largely for scholars and educators."

"The Encyclopedia Britannica was famous for both its lofty intellectual nature and its utilitarian side. It gave detailed instructions and advice on how to make liquid glue, how to tie knots, how to make gold lacquer, how to fashion snowshoes, how to perform sleight-of-hand tricks, how to collect butterflies, how to construct cheap farm bridges, how to make putty, how to build an icehouse, how to shoe a horse, how to devise flies for trout fishing."

"The Encyclopedia Britannica was an educational heritage that needed to be brought within the reach of every person able to read English. It was designed to be a ‘thorough library of knowledge.'"

"What was the average student's verdict after a year's use of the EB? "Most readers will, I believe, say it is one of satisfaction. It reaches a high standard of accurate and full statement on important matters, and rarely fails to give some information even on an obscure or little-known subject. It is, when all deductions have been made, the most useful of all books of reference, and represents the combination of learning, research, co-operation and organization in a higher degree than perhaps any other of the monumental works of literature and science. It is the high-tide mark of human knowledge. And it is knowledge brought to the service of all."

これらから言えるのは、11th は実用的なことも非常に多く記述されているということが分かる。現代用語でいえば、『実用百科』あるいは『家庭百科』のような内容も書かれているということだ。

出版された100年以上経った現在でも11th の評価は全く落ちていない。英語のWikipediaでは時たま直接11thから引用されている文章が見える。それもそのはずで、100年経過しているので、著作権が切れているので、自由に引用できる。また複数のサイトで、内容を直接見たり、検索したりすることができる。そのいくつかを紹介しよう。テキストだけだったり、図がついていたり、元のページのイメージ図が載っていたりと、各サイトでそれぞれ特色のある使い方ができる。

[1] 1911 Encyclopaedia Britannica
[2] Encyclopedia Britannica 1911
[3] The Encyclopaedia Britannica
[4] Wikisource:WikiProject 1911 Encyclopadia Britannica


続く。。。
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