限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

百論簇出:(第130回目)『エントロピーが減少する、不思議の国ニッポン』

2013-03-03 21:29:24 | 日記
数学や物理の分野で、使われるエントロピーという単語は、以前のブログで紹介した。
【参照ブログ】
 数財探掘:【第25回】データマイニング・夜話(その七:情報量(エントロピー)の話)

特定の分野だけで使われる語彙を technical term (術語)と称する。術語は一般人には知られていないので、難しいように感じるが、実はその反対で、定義が明確なので、一度理解してしまうと、ものを考える上で非常に役に立つ。普通の人はその述語が使われている特定の分野の範囲内でしか考えないようだが、私は他分野にもその語彙と概念を適応して考えることがある。

このエントロピーで社会現象を考えてみよう。

おさらいすると、エントロピーとは情報理論で『確かな情報だとエントロピーは低く、不確かな情報だとエントロピーは高い』という意味である。社会面に適用する場合は、『確かな情報』を『整理整頓』と読み替える。そうすると、社会面において『整理整頓されている時はエントロピーは低く、乱雑であるとエントロピーは高い』ということが言える。

さらに、もう一つ熱力学ではエントロピーは、『自然の状態ではエントロピーは必ず増大する』とことが分かっている。これを社会面に適用すると『物事は乱雑になるのが自然だ』となる。つまり、部屋というのは何もしなければ、必ず乱雑となるのは自然の摂理、恒久の真理、ということになる。私の身近にいる某女史は『今は忙しいからできないけれど、私は毎日でも掃除しないと気持ちが落ち着かないの!』と、のたまうが、荘子に私淑している私としては『エントロピー増大の法則』に逆らうことなく至って自然に生きるのが人間の本性と考えている。それで、ことある毎に軋轢が生じるのは火を見るより明らかであるのだが。。。


【出典】NASA Snowflake Cluster

さて、エントロピーの意味がお分かり頂いたところで、日本の社会現象をこのエントロピーを使って考えてみることにしよう。過去にもあったと思われるが最近の日本で私の目につくことがいくつかある。
 ○街路樹や公園の頻繁な枝きり。
 ○(特に年度末に多い)道路の舗装工事。少しの凸凹をも許容しない。
 ○電車やチケット売りの行列が乱れていると警備員に咎められる。
 ○曲がったきゅうりは安値となるため、スーパーでは売られていない。
 ○野菜はどれもこれも丁寧に洗われる。泥のついた野菜は売られていない。
 ○建物が数十年経つと『古い、耐震性がない』と言って取り壊してしまう。


これらの問題は社会的にみれば些細なことで別段、目くじらをたてて怒ることでもなさそうに思えるかもしれない。しかし、このような社会現象をもたらしているメンタリティは実はボディーブローのように日本の繁栄を阻害していると私は考える。以前のブログ、百論簇出:(第24回目)『日本人は多様性をマネジメントできない?!』で述べたように、上のような整理整頓シンドロームは、多様性と複雑性の高くなった現代社会をうまくハンドリングできないのと同根であるのだ。

また、エントロピーは増大するのが自然であるので、それを減らす(整理整頓)ためのは、実はエネルギーを必要とする(熱力学第二法則)。社会的にいえば、エネルギーとはお金のことだ。日本のような超整理整頓社会をキープするのには膨大な無駄金がかかるのだ。現在すでに1000兆円を超える国家規模の借金(国債+地方債)と少子高齢化していく今後の日本にあって、果たして今までのように無駄金を使っていいのか、私は疑問に思う。

一方、こういった整理整頓に驀進している日本の事情に反して、中国の社会混乱は日々を極めている。 Webを検索すれば、そういった中国の混乱のありさまは、山とでてくる。
 ○中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している。
 ○電車の中で子供がウンチ。親は、そのままにして下車。
 ○電車の中で料理の下ごしらえ。ゴミを車内に捨てたまま。
 ○米国税関、中国製のニセ物押収に大忙し!―中国メディア

エントロピー増大の法則、即ち宇宙の発展の基本法則から見れば、しかし、中国こそは本来の姿であるとも言える。エントロピー増大の法則に忠実な中国と、増大法則に逆らっている日本、と見事なコントラストのようであるが、私の粗雑な頭で理解できないのは、外郭団体まで含めた官僚組織が整理統合されることなく増大を続けていることである。どうやら、日本では国の中枢部は中国式に運営されているようだ。それが『エントロピーが減少する、不思議の国ニッポン』の不思議たる所以でもあるのだが。。。
コメント
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