獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

友岡雅弥さんの「地の塩」その21)キング牧師とともに歩む

2024-06-10 01:58:13 | 友岡雅弥

友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。


カテゴリー: SALT OF THE EARTH

「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。

 


Salt39 - キング牧師とともに歩む

2018年10月8日 投稿
友岡雅弥

Martin Luther King, Jr.が撃たれて、今年(2018年)の4月4日で、ちょうど50年。

Martin Luther King, Jr.牧師といえば、「私には夢がある(I Have a Dream)の演説が有名です。

駐日アメリカ大使館のウェブサイト
(https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2368/)に載っている、同演説の日本語訳から、該当部分を抜き出します。

でも、アメリカ政府に抗議したデモの演説を、アメリカを象徴する歴史的文章として、大使館とかのウェブサイトに載せているというのは、残念ながら日本では考えられないですね。

日本でいえば、例えば、足尾鉱毒事件の田中正造翁の「直訴状」とかが、日本政府の公式ウェブサイトに載ってるということですからね。

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絶望の谷間でもがくことをやめよう。友よ、今日私は皆さんに言っておきたい。われわれは今日も明日も困難に直面するが、それでも私には夢がある。それは、アメリカの夢に深く根ざした夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、この国が立ち上がり、「すべての人間は平等に作られているということは、自明の真実であると考える」というこの国の信条を、真の意味で実現させるという夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘でかつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、不正と抑圧の炎熱で焼けつかんばかりのミシシッピ州でさえ、自由と正義のオアシスに変身するという夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。

今日、私には夢がある。

私には夢がある。それは、邪悪な人種差別主義者たちのいる、州権優位や連邦法実施拒否を主張する州知事のいるアラバマ州でさえも、いつの日か、そのアラバマでさえ、黒人の少年少女が白人の少年少女と兄弟姉妹として手をつなげるようになるという夢である。

今日、私には夢がある。

私には夢がある。それは、いつの日か、あらゆる谷が高められ、あらゆる丘と山は低められ、でこぼこした所は平らにならされ、曲がった道がまっすぐにされ、そして神の栄光が啓示され、生きとし生けるものがその栄光を共に見ることになるという夢である。

これがわれわれの希望である。この信念を抱いて、私は南部へ戻って行く。この信念があれば、われわれは、絶望の山から希望の石を切り出すことができるだろう。この信念があれば、われわれは、この国の騒然たる不協和音を、兄弟愛の美しい交響曲に変えることができるだろう。この信念があれば、われわれは、いつの日か自由になると信じて、共に働き、共に祈り、共に闘い、共に牢獄に入り、共に自由のために立ち上がることができるだろう。

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この歴史に残る演説は、Martin Luther King, Jr.が暗殺される5年前。 公民権運動のピークとも言うべき、ワシントン行進で、全国から集まった20数万人の人々の前で行われたものです。(1963年8月28日、ワシントンD.C.リンカーン記念堂)。

直接的には、その演説の直前、「ゴスペルの女王」マヘリア・ジャクソンが、Martin Luther King, Jr. に、「あなたの夢を語って」と呼びかけたことが動機ですが、実は、同じようなフレーズをすでにスピーチしていたのです。

その2ヶ月ほど前の6月23日、ミシガン州デトロイトで。

この時、デトロイトでは、地元のキリスト教指導者たちがデモを企画し、デモには、1万数千のひとたちが集まり、1州の公民権運動としては、最大の参加者を見たわけです。

そして、デトロイトの中心街のコーボー・ホールで、決起集会が行われ、そこでMartin Luther King, Jr. 牧師が演説するわけです。

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だから今日の午後、 私には夢がある。 それはアメリカの夢に根ざした夢である。
私は、いつの日かジョージアとミシシッピーとアラバマで、昔の奴隷の子孫と奴隷主の子孫とが兄弟同士として、共に生きることができるだろうという夢を持っている。

今日の午後、私には夢がある。(「私には夢がある!」)それはいつの日か、(拍手)いつの日か、小さな白人の子供と小さな黒人の子供が、兄弟姉妹として握手することができるだろうという夢である。

(以下略)

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ワシントン行進の時のスピーチは即興だと言われますが、おそらく、このデトロイトのスピーチでのモチーフがMartin Luther King, Jr. 牧師の脳裏の浮かんだと思います。


さて、このデトロイトの集会ですが、企画の中心者が誰だったか。


C.L.フランクリンです。全米のキリスト教公民権運動の中心者の一人です。


そして、彼の娘は……。

アリーサ・フランクリンです。


今年(2018年)8月18日に亡くなった、グラミー賞受賞20回の、「ソウル・ミュージックの女王」アリーサ(アレサ)・フランクリンなんです。

彼女、そして、マヘリア・ジャクソン、そして、同じくアメリカの国民的ゴスペル、リズム&ブルーズ・グループ、ステープル・シンガーズが、常に、Martin Luther King, Jr. 牧師と行動をともにしていました。


アリーサの死に際して、さまざまな海外メディアが、公民権運動との関わりを伝えていました。アリーサは、父とともに、 Martin Luther King, Jr. 牧師の運動に参加し、ゴスペルを歌い、そして、1967年に発表したシングル"Respect" は、全米1位を記録しました。

それは、アフリカ系アメリカ人や女性、またさまざまなマイノリティの人々の「尊厳」を訴える内容でした。

アメリカにある世界的な「ロック博物館」である「ロックの殿堂」は、同曲を「ポピュラー音楽における不朽の金字塔」と最大限に評価しています。


実は、もともと、この曲は、不世出のソウルシンガー、オーティス・レディングの曲で、もともとは仕事がおわり、家に帰ってきた夫が妻に、

「こんなに疲れて帰ってきたんだから、俺のことを大事にしてくれよ」

というジェンダー的には問題のある歌だったんです。

もちろん、当時はアメリカでも、男女平等などは程遠く、女性は家事に勤しむもの、というのが常識だった時代です。

それが、アリーサは「女性」に対する、人としての「敬意」という意味に変えて歌ったんです。

だから、アフリカ系アメリカ人だけではなく、女性の権利獲得運動に、彼女は大きな勇気を与えました。

また、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンの黄金ソングライター・チームが作った1967年の大ヒット曲'You Make Me Feel Like A Natural Woman' は、映画のテーマやいろんなアーティストのカバーで、今や、LGBTなど様々な運動のアンセムとなっています。

ローリングストーン誌の選ぶ「歴史上最も偉大な100人のシンガー」の第1位となったアリーサの、若き日の大きな歩みは、アフリカ系アメリ力人を初めとするさまざまなマイノリティの権利獲得の運動と、同じ歩調で、前進したのです。

 


解説
Aretha Franklin - Respect (Official Lyric Video)
https://www.youtube.com/watch?v=A134hShx_gw

YouTubeで聴いてみました。
友岡さんの記事を読んで、はじめてこの曲の意味が分かりました。

 

友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。


獅子風蓮