獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

東大OB医師の告発 その3

2024-06-28 01:06:13 | 犯罪、社会、その他のできごと

東大OB医師である坂本二哉(つぐや)氏が「鉄門だより」に寄稿した「告発文」についての雑誌の記事を紹介しました。

実は、私も東大医学部のOBですので、毎回「鉄門だより」が送られてきます。
しかし、坂本二哉の記事は、表題も地味だったので、スルーしてしまいました。
慌てて、古紙の束をひもといて該当の記事を探し出しました。

貴重な資料になるかもしれませんので、全文を引用したいと思います。
(読みやすいように、適宜見出しをつけ、改行しました。明らかな誤字脱字は訂正しました)


鉄門だより 令和6年4月10日発行(毎月1回10日発行)

晩鐘の時
坂本二哉氏(1954卒)
(つづきです)

肉親も医療過誤に
個人的なことを申すのは気が引けるが、私の長兄も東大での不作為によって死亡した。精神科医の兄はC型肝炎患者に噛みつかれ、十年ほど後に皮膚の奇病発症。結局、C型肝炎起因の肝癌のためとされ、東大消化器科で2~3年に亘り繰り返しラジオ波焼灼を受けかなり緩解したが、毎度便潜血が陽性であることを気にした兄が消化管検査を依頼したところ、その返事は異様であった。「消化器専門医」の返答は「消化管には興味が無いもんで」。兄はその言葉に驚き帰郷、検査結果は末期胃癌、緊急手術は勿論無駄であった。死亡後、その医師は新年会で先輩たちや医局員の前に名乗り出て私に陳謝したが、以前から尊敬していた医師で、その真摯な態度を汲み、更にその場にいた教室主任のメンツもあって、それ以上の追及を諦めた。むしろ少なくとも2年以上長生き出来たことに対し、その医師には感謝すべきだと強く自制した。
同じく精神科医の末弟の死も医療ミスの結果だった。患者思いの彼は倒れ、働き過ぎと動脈硬化症として勤務先の神経疾患専門のセンター病院に入院。暫くして見舞に訪れた私は脈を触れて絶句する。手元の温度板には体温と脈拍数が表示されているが、明らかに心房細動だ。看護婦に詰問、いい加減な記入の告白を聞き、婦長は陳謝した。しかし血栓症の疑いがあるにもかかわらず、循環器医にも見せず、対処もしないので転院のため一旦退院。その夜半に胸痛発作、駆け付けると急性心筋梗塞の兆候、救急車で一時間ほど掛けて三井記念病院へ急行、知らせを受けてすべてのスタッフが待機、結果は冠動脈血栓で、血栓溶解剤で血栓がころころと溶けて行くのが見えて、症状は實解した。だが、その後の医師はワーファリン投与時、弟の三度々々の納豆摂取に注意するのを怠り、結果として巨大脳梗塞を起こし、死を迎えた。病歴採取のずさんさと毎回の採血検査結果への侮りが不幸な結果を招いたとしか考えられない。妙な因縁だが、私はそのセンター元・総長の父上の東大角帽を引き継いでおり、元・総長には東大入試以来何かとお世話いただき、弟の就職にもその関係が大あり、気弱な私はそれ以上何も言うことが出来なかった。

日本の専門医制度の問題
時代は下る。大学を去って市井の病院や診療所通勤となると、一兵卒となって自由度が増す。危険な事態も激減した(かに見えた)。いろいろな会に出席して毎度批判めいた議論をしたりして楽しんでいるとき、びっくりするような会話を耳にした。「僕のところなんか、心タンポナーデなんかしょっちゅうだよ」。冠動脈検査用のカテーテルが動脈を突き破るという事態は滅多に見られないが、そこの病院ではそうしたミスがよく起きるという。振り返ると東大循環器内科の教授であった。私は恥ずかしくなってその場を離れた。聞くところによると、専門医の資格を得るために、患者が実験対象になっているという。
私は日本の専門医制度を根本から疑問視している。それはアメリカ留学時のそれと全く違う。その昔、私はある学会の理事長として同類の学会から半ば強制的な勧誘を受けたが、その話だけで専門医制度を疑問視し、強硬に断った。某学会では巨万の富を得て巨大ビルを占有し、あるいは帝国ホテル別館の一フロアを占拠して、理事たちは優雅に振舞っている。公金横領で除籍された理事もいる。一般会員は言わば献金団体各位、学問的に得るところはほとんど無い。

MVP閉鎖不全例での考えられない手術失敗例
私の所属する日本心臓病学会は、おそらく日本でただ一つ、専門医制度を持たない患者本位の臨床医学に直結した学術団体で、その代わりの制度と言うか、ほぼ十年以上の臨床や学会発表経験を持ち、患者対応、人格なども考慮、会員層からの推薦、厳重な審査、審査員全員の賛同を得て特別会員の資格(Fellow of the Japanese College of Cardiology, 国際的に FJCC, 論文に明記) を授けている。新任は年に20数名程度だが、学会司会などの中枢的な業務を行い、学会参加費は不要、数々の特典も与えられている。College であるから半分は教育で、研究会や教育も毎年行われる。
その中で、私はかつて僧帽弁逸脱症候群(MVP)の研究会を5年に亘り司会し、基礎から手術的治療に至る迄、63論文と討論、総計705頁、全5冊を出版、その内容は招待論文としてアメリカのエンサイクロペディア的書物に掲載され、アメリカ各紙の絶賛を浴びた。そういう患者さんのデータは大規模な学童・生徒健診や米国進駐軍、あるいは外来患者から集められ、弁閉鎖不全例は手術に回された。弁置換をしないで矯正手術をする岩手医大にも多くの患者が送られ、そして手術失敗は皆無、現在も皆さん元気でいる。
なぜこんなことをわざわざ記すかと言うと、近年、MVP閉鎖不全例での考えられない手術失敗例を、私の外来患者さんから聞かされたからである。都内で確実な心臓手術を行える施設はそう多くはない。いつぞやは東京の某医大で助教授が4例立て続けに弁膜症手術に失敗し、死亡させた事件があった。東大でも似たようなことがあった。
その患者さんの御亭主Kさんは、別の疾患で東大医学部とは古くから非常に縁の深いセンターを受診、そこで後で見ると上述のMVPによる僧帽弁閉鎖不全で手術に失敗、東大に搬送され延命処置を行ったが、冠動脈への過剰な空気漏れという考えられない重大ミスで心筋梗塞を起こしており、救命には至らなかった。事の詳細は最近の朝日新聞にも載っている(2024年3月6日)。もう3年近く経ち、奥様は多くを語られないが、その友人の患者さんはことあるごとにそのセンターの対応を非難しており、また事故原因究明を行わず、再発防止策も講ぜずに診療を継続していることに対し、多くの著名な心臓外科医がそれを批判し、学会でも問題にしていると聞き及んだ。不肖、私の家内もそこで随分ひどい目に遭っていたので、他人事とは思えなかった。そしてひょんなことから、死亡例の弟御が鉄門の後輩であり、またその血縁に医学部の恩師福田邦三生理学教授や憧れの哲学者・出隆東大教授がおられることを知り、他人事とは考えられなくなった。そして一方では、時代が変わっても一部の医師には依然として昔のような隠蔽気質が残っており、それが鉄門の医師たちでもあることを知りとても悲しくなった。これは隠匿と言うより背徳である。残念だが許せない。
義を見てせざるは勇無きなりと言う。私は率先して関係する会に出席し、さらなる最近の実情を知って驚愕した。不審な事態は「医療事故調査制度」に報告する然るべき慣例があるのだが、それを順守している病院は微々たるもので、よしんば患者からの要請があっても、真面目に応じる病院は稀であり、皆、逃げ口上に終始している。医療の風上にも置けない状態と言っていい。
土台、実験的な手術(これは医学の進歩のために欠かせない)ならばいざ知らず、既に確立された手術手技を施行する際、「万が一を想定する」というような誓約書に患側の署名を要求するとう医療制度はおかしいのではないか。それなら医師側に対して患者側から「手違いや(死亡も含めて)患者側に万が一のこととがあればいかに対応するか」という具体的な対処を求める誓約書があって然るべきである。そうすれば、医師側は否応なく謙虚になり、更に真剣に対処するようになるのではないか。

今こそ破邪顕正の剣を
現今、医師の「上から目線」がちらついていて気になる。私の家内の場合は、同じセンターに緊急入院し、数十日も遅れてから呼び出され、5時間も待たせられた挙句、暗がりで誓約書を読む暇も無く、「とにかく早く署名捺印せよ」で押し切られた。乱暴なセンターで、術後の説明もほとんど無く、電話すると「うるさいな」で終わりであった。明らかに「手術してやったのだから後はかれこれ言うな」という態度で、私は呆れ、更に数十日経って、退院許可を出したがらない病院側を無視して強引に転院させた。3ヶ月ほどの絶食、寝かせきり状態で手足は硬直化し、家内はミイラ状態となっていた。
このように、医師の無責任体質と隠蔽体質は残念ながら昔も今も変わらない。今現在、事故は間断なく発生し、しかも巧妙に隠蔽され、患者が臍を噛む事例がほとんどである。
今般のKさんの手術ミス事件には、病院側に加担する海千山千の鉄門医師たちもいるが、大方の善意の医師は手術の失敗を指摘している。しかし半ば傍観的で、孤軍奮闘してでも、積極的に膺懲の剣を取ろうとされる権威者は残念ながら多くはない。だが本来慈悲深い人間であらねばならぬ医師が、弱い者いじめの権威至上主義の徒であってはいけないのだ。
老躯のわが身は、鉄門諸君が破邪顕正の剣をかざし、声を大にして立ち上がって欲しいと念願する。今まさに不正の医師を弾劾すべき時である。そうでなければ、心配の種が尽きぬまま、無念残念、私はあの世へ旅立つことになってしまうのである。

 


解説
聞くところによると、専門医の資格を得るために、患者が実験対象になっているという。

ここは、厳しく追及してほしいと思います。専門医制度の問題点として……


老躯のわが身は、鉄門諸君が破邪顕正の剣をかざし、声を大にして立ち上がって欲しいと念願する。今まさに不正の医師を弾劾すべき時である。

鉄門の先輩である坂本二哉先生が「破邪顕正」という言葉を使っているのに、少し驚きました。
「破邪顕正」という言葉は、日蓮系の宗教教団でしばしば使われる言葉だからです。
ネットの辞書で調べると「破邪顕正」は仏教語と出ます。『三論玄義』が出典だそうです。でも、日蓮系に限った言葉ではないようですね。

獅子風蓮