マンガ『脳外科医 竹田くん』について、別の雑誌も取り上げていました。
d-マガジンから引用します。
週刊現代2024年3月9日号
戰慄スクープ
大阪・兵庫 連続医療ミス事件
疑惑の脳外科医の正体
ネット上で話題になった、医療界騒然のマンガ『脳外科医 竹田くん』。
主人公は口だけうまく、やたらと手術をしたがるが、手術はミス続き。
そのモデルになった医師本人が初めて口を開いた――
「脳外科医 竹田くん」 より、
Xさんの母の手術をモデルとした場面
なぜあの人が担当に
〈四肢麻痺〉〈重度の聴力障害〉〈穿孔に起因する頭蓋内出血〉〈死亡退院〉
手術やカテーテル治療で失敗を重ね、こうした取り返しのつかない事態を招きながらも、開き直って周囲を振り回す外科医を描いたマンガ『脳外科医 竹田くん』が、医療界で波紋を広げていることをご存じだろうか。
'23年1月からブログ上で連載を始め、同7月まで更新されていたこのマンガは、早くから「ある実在の医師」をモデルにしているのではないか、と指摘されていた。それ が、'19年7月から'21年8月まで兵庫県の赤穂市民病院に勤務していた脳外科医のA医師(40代・男 性)である。
同病院の脳神経外科では、A医師が着任してわずか半年あまりで8件の 医療事故が発生、3名の患者が亡くなった。市と同病院は原因などの検証を行ったものの、A医師が病院を去ったこともあり、地元では早くも事件は風化しつつあった。
ところが今年2月、事態は急展開を見せる。赤穂を離れたA医師が、その後勤務していた医誠会病院(大阪市、現・医誠会国際総合病院)でも医療事故にかかわり、搬送された男性を死亡させた疑いがあるとして、遺族から提訴されたのだ。
この遺族が語る。
「大病院で治療を受けられると安心していたのに、A医師は苦しむ父に診察も、必要な処置もしなかったのです。父を担当したのが、赤穂で複数の医療事故に絡んで追及されている医師だったことは後から知りましたが、医誠会病院はなぜそんな人を救急の医長にしていたのかと、やりきれない思いです」
今回、本誌はA医師を訴えた二組の患者家族と複数の赤穂市民病院関係者、さらにA医師本人からも話を聞いた。そこから見えるのは、医療ミスが疑われても十分に検証も反省もされない、医療界の「闇」だった――。
ドリルに神経が巻き付いて
「私は、A先生には医師をやめていただきたいと思っています。母が重い後遺障害を負ったにもかかわらず、先生の言動からは思いやりが感じられませんでした。非常に、自己中心的なお考えをお持ちだと思いました」
こう吐露するのは、兵庫県に住むXさん(50代・女性)である。4年前、Xさんの母(当時74歳)はA医師の執刀する手術のあと、下半身が麻痺する重い障害を負った。以下、Xさんの証言と裁判資料をもとに、その主張を追っていこう。
きっかけは'19年末、Xさんの母がひどい腰痛を訴えたことだった。
「母はかかりつけ医の紹介で、赤穂市民病院に行くことになりました。診察したA医師は、年明けすぐに検査入院するよう勧めてきました」(Xさん)
検査は1月6~8日に行われた。同17日に結果を聞きに出向いたXさんに対して、A医師はこう滔々と述べたという。
「お母さまは重度の脊柱管狭窄症なので、早く手術したほうがいい。20日に入院、22日に手術でいかがですか」「早く手術しないと、人工透析になる可能性があります」
あまりに急な提案にXさんは戸惑ったが、A医師の勢いに押されて承諾した。そして提案どおり、1月22日の朝9時ごろからA医師と、その上司で診療科長のB医師の執刀により手術が行われることとなった。
Xさんの母が受けたのは、「腰椎後方除圧術」という手術だ。脊柱管狭窄症では、背骨が中に通っている神経を圧迫して痛みが生じる。背骨の一部を削り取って圧迫をなくすのが「除圧術」である。
「当日の朝、A先生は病室にやってきて、母に笑顔で『退院する頃にはスタスタ歩いて帰れますからね!』と声をかけてくれました。そのときは、とても頼もしい先生だと思いました」(Xさん)
手術ではA医師が主に執刀し、ベテランのB医師が助手を務める予定だった。ところが、のちにXさんがB医師から聞いたところによると、手術が始まったとたん、A医師は「この手術は初めてなので自信がない」などと言い出した。そのため、2ヵ所あった患部のひとつをまずB医師が執刀して手本を見せ、A医師に引き継いだという。
それからほどなく、悲劇は起きた。A医師がドリルで骨を切削していたとき、刃が脊髄の一部を巻き込んでしまったのだ。裁判にあたってXさんが入手した手術中の映像には、刃先に白っぽい神経が絡みつく痛ましいようすが映っている。
「手術は昼すぎには終わると聞かされていましたが、ミスの処理のためか、母が病棟へ戻ってきたのは19時半すぎでした。病院側から、何が起きているのか説明は全くありませんでした」(Xさん)
手術を終えて出てきた A医師は憔悴していた。別室へXさんを連れてゆき、説明を始める。 「手術中に問題が起こりました。ドリルの先端が硬膜(脊髄を覆う膜)に 当たってしまい、神経が飛び出したので、もとに戻したのです。現段階では神経が切れたかどうか、後遺障害が残るかどうかわかりません」
だが、実は手術終了直後から、Xさんの母は「足が動かない」と訴えていた。しかも、後日開示されたカルテには、A医師自身がこう記している。
〈硬膜損傷後1時間ほどしてMEP(注・手足の筋肉が動くときに神経に流れる電流)が消失した〉〈術後、右足関節の動きが低下。 右下腿末梢部以遠の感覚脱失していた〉
A医師がXさんに伝えたのは、控えめに言っても「希望的観測」としか言えない説明だったのだ。
この手術の後、Xさんの母は両足に重度の麻痺が残り、自力での排尿・排便も難しくなったほか、断続的に続く神経性の激痛にも苦しめられるようになってしまった。
Xさんはしばらく「リハビリをすればよくなる可能性はある」と語るA医師を信じていたが、日に日に弱る母を見ると、とても回復するとは思えない。その後の説明会でA医師が「もともとかなり神経が傷んでいたわけだから、(障害を負ったのは)手術とは関係ない」などと言うのを耳にして、不信感を募らせていった。
A医師への信頼が決定的に崩れたのは、手術から3ヵ月あまりが経った、'20年5月初めのことだったという。
「当時、A先生に母の退院を勧められていたのですが、動けなくなった母を介護するには準備も必要です。それなのにA先生は『うちの看護師には、面倒な患者(Xさんの母のこと)の世話をさせて申し訳ないと思っている。早く退院してほしいという気持ちもある』と言い 放ったのです」(Xさん)
(つづく)
【解説】
Xさんのお母さんの手術のことは、マンガ『脳外科医 竹田くん』でも詳しく書かれていました。
Xさんの発言と合わせて考えると、あのマンガは、ほとんど事実ではないかと思われます。
それにしても、経験もなく自信もないのに、脊椎を削る危ない手術をするとは……。
それをしくじり、神経の束をドリルで巻き込むとは……。
そして、後遺症の残った患者を、転院させ、自分の責任をなかったことにしようとするなど、ひどい医者にもほどがありますね。
獅子風蓮