「だからさ、ここの小節は…」
「それよりここのリフを…」
ノッポ杉山とデブ田代は、事務所で顔をあわせては暇があると、楽譜を挟んで、議論を戦わしてしる。
相変わらずミスった北海道のベー子は、音合わせギリギリにやって来ては、ベースの調律を素早く済ませる。
予定時間キッカリに白パンの後ろに着いて、親父ギターがスタジオに顔を出す。
そして、五分遅れて、ミキがボサボサの頭で現われるのが、お約束だ。
「おはよう~」
決まった様に、背広が苦い顔で時計を指さす。
その間オレは一人スタジオの隅でサクソフォンを吹きまくる。
譜面をなぞると、どうしても音符の裏の間合いがシャキッとしない。
風が吹かない…
各々が楽器やマイクの前に立つ。
スティックが打ち鳴らされ、リズムにメロディが乗り、そこにハーモニーが重なると、ミキのボーカルが風を巻起こして入り込む。
今日もイカしてる?
間奏でオレのパートが滑り出す。
まぁ、イイんでないの!
行間に足りなかった音が風に煽られて自然と飛び出す。
小さなつむじ風がやがて金切音をあげて疾風と変わってゆく。
この風に、メンバー達は吸い込まれて行く。
明日もご機嫌な夜会になりそうだ…
ガラスの向こうの白パンが、ミキサーに指図して音をトレースさせる。
「今夜は、何だか客層が違ったな」
親父ギターが白パンに尋ねる。
「少し年齢高めの異質な集団が(笑)」
ベー子も白パンににじり寄る。
「ダウンタウンなお姫様を閲覧に来られた、業界各位の皆様…だったなぁ」
ノッポが指摘する。
「その通りだ。開演前に、“ご挨拶”に来られたよ。お歴々が…」
白パンがニヤリと笑う。
「そして、次のニュースだ。ほれ」
白パンは背広を急かす。
「え、ええと~来週から、ホールで3ヵ所、他に雑誌・ラジオ・ネットテレビの取材が複数件…」
「へえ~出世しましたなぁ、ミキ嬢…」
ノッポが驚く。
「それと個別にバックのメンバーにもレコーディングなどの依頼が来てるぜ。後でコイツに聞いときな」
白パンが背広の肩を叩く。
白パンはオレの隣りに座って言う。
「ザ~ンネンながら、ムサシへの依頼は0だ。まぁ当然…かな?」
悔しいが、他のメンバーに比べたら、二回りも三回りもバックサポーターとしては差があるのは事実だ。
「しかしな…」
「?」
「それよりここのリフを…」
ノッポ杉山とデブ田代は、事務所で顔をあわせては暇があると、楽譜を挟んで、議論を戦わしてしる。
相変わらずミスった北海道のベー子は、音合わせギリギリにやって来ては、ベースの調律を素早く済ませる。
予定時間キッカリに白パンの後ろに着いて、親父ギターがスタジオに顔を出す。
そして、五分遅れて、ミキがボサボサの頭で現われるのが、お約束だ。
「おはよう~」
決まった様に、背広が苦い顔で時計を指さす。
その間オレは一人スタジオの隅でサクソフォンを吹きまくる。
譜面をなぞると、どうしても音符の裏の間合いがシャキッとしない。
風が吹かない…
各々が楽器やマイクの前に立つ。
スティックが打ち鳴らされ、リズムにメロディが乗り、そこにハーモニーが重なると、ミキのボーカルが風を巻起こして入り込む。
今日もイカしてる?
間奏でオレのパートが滑り出す。
まぁ、イイんでないの!
行間に足りなかった音が風に煽られて自然と飛び出す。
小さなつむじ風がやがて金切音をあげて疾風と変わってゆく。
この風に、メンバー達は吸い込まれて行く。
明日もご機嫌な夜会になりそうだ…
ガラスの向こうの白パンが、ミキサーに指図して音をトレースさせる。
「今夜は、何だか客層が違ったな」
親父ギターが白パンに尋ねる。
「少し年齢高めの異質な集団が(笑)」
ベー子も白パンににじり寄る。
「ダウンタウンなお姫様を閲覧に来られた、業界各位の皆様…だったなぁ」
ノッポが指摘する。
「その通りだ。開演前に、“ご挨拶”に来られたよ。お歴々が…」
白パンがニヤリと笑う。
「そして、次のニュースだ。ほれ」
白パンは背広を急かす。
「え、ええと~来週から、ホールで3ヵ所、他に雑誌・ラジオ・ネットテレビの取材が複数件…」
「へえ~出世しましたなぁ、ミキ嬢…」
ノッポが驚く。
「それと個別にバックのメンバーにもレコーディングなどの依頼が来てるぜ。後でコイツに聞いときな」
白パンが背広の肩を叩く。
白パンはオレの隣りに座って言う。
「ザ~ンネンながら、ムサシへの依頼は0だ。まぁ当然…かな?」
悔しいが、他のメンバーに比べたら、二回りも三回りもバックサポーターとしては差があるのは事実だ。
「しかしな…」
「?」