12
「吹いたね、風がさ…」
右手にチャート速報のデータを持って、背広が嬉しそうに白パンに語り掛けた。
「興味無えなぁ。判り切った事だろ」
「いやいや、あの男性グループばかりの大会社や少女集団の向こうを張って、オリコン1位なんだよ。これは凄い」
「単にそいつらが今回楽曲を出していなかっただけだろ。それで無くても、インターネットで“音”を売買するご時世だ。CD媒体だけで勝った負けたなんて、奴等の会社は考えちゃいないだろ。こう言うはずさ。デカいスポーツアリーナを毎回満員動員してから言え!とな」
白パンは背広に背を向けて、速報値のプリントを見もせずに嘯いた。
「やる気なんだろう、それを…」
「あいつら次第だ」
「あれ~アタシ何でこんな所で寝てんだろう…」
古びたオフィスの会議室に仕切られた応接コーナーの長椅子で目覚めたミキは辺りを見渡す。
「あれ~!またやっちゃった?」
扉が開き、白パンが顔を出す。
「いい加減、ギグの度に酒カッ食らって、事務所を救護室にするのはやめてくんねえか?ガキじゃねえんだからよ」
「じゃあ何なんですか?“商品”?」
ミキは寝起き(しかも二日酔い)とは思えないハッキリした口調で尋ねた。
「お前さんは、ガキじゃ無くて“お転婆”ネェチャン!だよ」
「一応人間の女扱いなんですね」
「はなからそのつもりで接して来たんだかな~不満か?」
「全然、満足です。お酒を呑ませてもらえない以外は」
「未成年でしかも無茶苦茶弱え癖に何言ってやがる」
「みんなが呑むお酒が強過ぎるんです!」
「昨日なんて水みたいな水割り一口飲んでぶっ倒れたくせに、何ヌかしてやがる」
「あれはアルコール度数が50は超えています」
「そんな水割りあるかッ!」
「じゃなければあんなに簡単に酔いません!」
「ヌかしてな。顔洗ったら、事務所のネーチャンに声掛けな。熱いミルク用意してくれっからよ」
「ご飯に味噌汁がいい。味付海苔と…」
「俺が食いたいぜ、それなら」
「じゃあ行きましょう。この前見つけたんですよ。事務所の側で朝から営業している定食屋」
白パンは腕時計を確認してから、返事していた。
「じゃあ、行ってみっか」
「じゃあ、善は急っそげ!」
ミキは長椅子から飛び起きて白パンの腕を掴んで出口に向う。
「お~い、ツラくらい洗えや」
「吹いたね、風がさ…」
右手にチャート速報のデータを持って、背広が嬉しそうに白パンに語り掛けた。
「興味無えなぁ。判り切った事だろ」
「いやいや、あの男性グループばかりの大会社や少女集団の向こうを張って、オリコン1位なんだよ。これは凄い」
「単にそいつらが今回楽曲を出していなかっただけだろ。それで無くても、インターネットで“音”を売買するご時世だ。CD媒体だけで勝った負けたなんて、奴等の会社は考えちゃいないだろ。こう言うはずさ。デカいスポーツアリーナを毎回満員動員してから言え!とな」
白パンは背広に背を向けて、速報値のプリントを見もせずに嘯いた。
「やる気なんだろう、それを…」
「あいつら次第だ」
「あれ~アタシ何でこんな所で寝てんだろう…」
古びたオフィスの会議室に仕切られた応接コーナーの長椅子で目覚めたミキは辺りを見渡す。
「あれ~!またやっちゃった?」
扉が開き、白パンが顔を出す。
「いい加減、ギグの度に酒カッ食らって、事務所を救護室にするのはやめてくんねえか?ガキじゃねえんだからよ」
「じゃあ何なんですか?“商品”?」
ミキは寝起き(しかも二日酔い)とは思えないハッキリした口調で尋ねた。
「お前さんは、ガキじゃ無くて“お転婆”ネェチャン!だよ」
「一応人間の女扱いなんですね」
「はなからそのつもりで接して来たんだかな~不満か?」
「全然、満足です。お酒を呑ませてもらえない以外は」
「未成年でしかも無茶苦茶弱え癖に何言ってやがる」
「みんなが呑むお酒が強過ぎるんです!」
「昨日なんて水みたいな水割り一口飲んでぶっ倒れたくせに、何ヌかしてやがる」
「あれはアルコール度数が50は超えています」
「そんな水割りあるかッ!」
「じゃなければあんなに簡単に酔いません!」
「ヌかしてな。顔洗ったら、事務所のネーチャンに声掛けな。熱いミルク用意してくれっからよ」
「ご飯に味噌汁がいい。味付海苔と…」
「俺が食いたいぜ、それなら」
「じゃあ行きましょう。この前見つけたんですよ。事務所の側で朝から営業している定食屋」
白パンは腕時計を確認してから、返事していた。
「じゃあ、行ってみっか」
「じゃあ、善は急っそげ!」
ミキは長椅子から飛び起きて白パンの腕を掴んで出口に向う。
「お~い、ツラくらい洗えや」