くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

【偽書】『エトランゼ・異邦人』 21

2019-04-26 01:05:00 | 【偽書】シリーズ
「はあ?交通違反の取り調べとは違うのよ。ましてやあんたが内閣調査室とか、世の中どうかしてるわ」
「こら、日沼君。いくら旧知の仲とはいえ、内閣府の方にそんな口を…」
荒川課長は慌てて日沼凛子に言う。
「よろしいんですわ。それに日沼さんとはそれ程古い友人と言う訳でもありません」
「そうですよ、課長。浩華は、この女は私の彼氏を寝取ったんですから。その時からの腐れ縁です」
「寝取り…?君、彼氏なんて居たの?初耳だけど」
「課長に教えたら、あっと言う間に児相中に拡がるじゃないですか。臨時職員の丹波さんなんて泣いてましたからね」
「いや、それはその…彼は男だったし」
「男の人でああなら、女ならもっとシャレになりません」
「いや、流石に女性は…」
「女でも男でも立派なセクハラですよ。セクハラ!子供の安全を司る公務員がセクハラ上司とか大スキャンダルですからね」
「日沼君…」
「あの時は成り行きだったから。本当にゴメンナサイね」
「浩華!いくら警察だからって、ゴメンで済んだらそれこそ警察要らないから」
「あら、面白いわ」
「確かに面白いね。今のは」
「面白くありません。大体こんな昼時に訪問して来るなんて、非常識女は伊達じゃないわね」
「休日や非番時に訪問するよりはいいでしょ?」
「今は保護した子供達に昼食を取らせてるんだから!来るなら子供達が昼寝をしている時間に来なさいよ」
「その時間は職員さんが昼食なんでしょ?」
「そうよ。課長や所長が長寿庵の天ぷらソバを啜っている時間よ」
「あ〜ら。凛子も出前なんじゃないの?」
「私はお弁当持参派よ」
「あら、女子力高いのね。あの時の彼氏には頼まれても決して作ってあげなかったんでしょ?」
「あの男、こんな女にそんな事まで…」
凛子の怒りの沸点は簡単に超えていた。

「まさか、二人は恋敵とは…狭い世の中だな」
「恋敵だった、ですわね。敗者は語らず、でしたっけ?凛子」
「ふん」
「では、早速ですが、面会手配をよろしくね。“日沼さん”」
「無能なアンタが警察へ帰されたら手配するわ」
「無駄無駄」
「もう。イライラする」
「まあまあ二人共穏便に。ここは子供の安全を取り仕切る場所なんだから、ヒステリックな喧騒は勘弁してくれよ」
荒川課長は泣く子と女性のヒステリーには弱い御人だった。









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筆者敬白

サウザント・クロノス・ナイツ 銀髪のノーラ 『四つのクロノス その2』 47

2019-04-25 04:38:28 | 【偽書】シリーズ
女隊長はそう言って、許可無く持ち場を離れ戦場から四散する小隊長らを苦々しく見つめていました。


ノーラの本体が中庭の砦に到達した時、数名の配下を脇に立つス・サルバが居ただけでした。

「ス・サルバだな。我が名はスペクター。帝国傘下の教皇奪還騎士団の参謀である。武器と敵意を捨て降伏するのであれば、命までは取らない」
「いかにも。確かに反抗するに数は足りぬ。だが降伏するつもりは無い」
「その人数で逆らうのか」
「見くびられたものだな」
「無益な争いはしたくないとのウチの大将の希望だ」
「バカバカしい」
「降伏しましょう。サルバ様」
ス・サルバの左手に両手を掛けて懇願した部下の両腕を、彼女は右手に持った剣で無慈悲に切り落とします。
「ぎゃあぁぁ…」
両腕を失った部下は地面を転げ回ります。
それを見た、僅かに残っていた他の部下は、慌てて四散します。
弱小部隊の参謀らとはいえ、命が惜しく無い者などおらぬでしょうし、何より命に代えてもス・サルバに忠誠を誓う思いなどこれっぽっちも持ち合わせては居ない部下達でしたでしょうから。

「お主ひとりになった様だが」
「切るなら切れ。ただではやられんぞ」
ス・サルバは右手の剣に左手を添えます。
女性には不似合いな両手剣を構えたス・サルバはスベクター達に向けて構えます。
「どうしても逆らうのか」
「最後のひとりだから何だというのだ」
「少しでも時間稼ぎか?それとも何かへの義か?」
「勿論後者だ」
「そうか。降伏せぬなら仕方がない」
「待って、スペクター」
「何故止める。ノーラ」
「何故義の為に命を粗末にするのさ」
「何だ。この娘は」
「我々の総大将ノーラだ」
「この娘がか?」
「娘なら何だと言う。お前や正門の部隊を倒した奪回騎士団を率いる者が若かろうが構わぬであろう」
「確かにそうだ」
「何故命を張ってまで…」
「お前には関係あるまい。死ね」
ス・サルバは身に不似合いな大剣をノーラに向けて切り込んで来ました。
それを叩き落とすスペクターの剣。

二つの塔前庭での戦いは一瞬で勝敗が決したと、騎士団の誰もが思ったでしょう。
敵リーダーのス・サルバの剣を叩き落とした当のスペクターや団長のノーラも。

しかし、それだけでは終わりませんでした。






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筆者敬白

【偽書】雪華残像(9G) 52

2019-04-22 01:30:50 | 【偽書】シリーズ
「桃恵の奴、朝まで戻らないつもりかな?」
「さあね。心配?」
「いや、別に…」
亨留(みちる)の問いに詩織は慌てて否定する。
「大丈夫だよ。桃恵は美容にうるさいからちゃんと寝るよ。昼間に」
「あはは。確かに。まあ、朝ご飯までには戻るよね。その頃には明るくなるし」
「もっともこの冬の雨だから昼間もあまり期待は出来ないかな?停電したままだと」
「そうだね。私も取りあえず朝まで眠るよ」
「それがいいよ。ランプの明かりで読書もおつだけれど、私も寝ることにする。お休み」
「じゃあお休み。亨留(みちる)」
亨留(みちる)の部屋のアルコールランプが消え、部屋の扉の隙間から漏れていた明かりが消えた。


「もうランプを消していいよ」
「じゃあ明日ね」
「お休み。早矢ちゃん」
早矢と姫が床につくのを見届けると月子はひとり窓の傍へ移動して、スツールに腰掛ける。
夜目の効くその視力を活かしてひとり暗闇を見つめていた。




「呆れた。杏ちゃんたらもう寝ている」
「あれだけ騒いだらね。旅の疲れもあるだろうし」
「沙夜加ちゃんも寝る?」
「そうね。パソコンも使えないし、確かに眠くなったかも。幸も眠るでしょ?」
「うん」
「じゃあお休み」
私がアルコールランプを消すと同時に杏が寝言を言う。
「暗いよ〜幸。電気点けてよ〜ぐぉ〜」
「もう。杏ちゃんたら…」
「ナイスタイミングな寝言だね」
私は笑いながら布団を引き寄せて目を閉じた。


「ミッション終了。…明日の朝が楽しみだな。ククク…」
雨の闇に紛れて、ひとつの影が暗躍していたのを、きっと誰も知らなかったでしょうね。それはそこに居るべきでない人物だったでしょうから。
一日目の夜は闇に隠れてそっと朝を待った…って所ね。



「いつの間に…」
目を覚ました詩織は隣のベッドに眠る桃恵の姿を確認して呆れていた。
全く気付かなかったと思いながら亨留(みちる)の眠るベッドの方を見るが、亨留(みちる)も未だ夢の中なのか、小さな寝息を立てるだけだ。
雨の中を出ていた筈なのに、ベッドの脇に脱ぎ散らかしてある桃恵の靴は水滴すら付いていなかった。





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筆者敬白

天宮の乙女達…タジリスクの聖戦(9G) 111

2019-04-15 00:57:14 | 【偽書】シリーズ
そうか。レイミー(エイミー)はギルと会って面識があったわね。
「この巨大な要塞の様な居城を所有し、かつ負界領域と普通の現空間を自由に出入りできる存在の人物…でしょうね」
クインの言葉にポットが更に尋ねる。
「負界領域の住人?」
「最初からではなく、後天的に何らかの力を得て、負界領域に出入り出来る様になったと見るべきですね」
「この負界領域って、年を取らないって噂は本当?」
やっとエイミーがレイミーを抑えて前に出てくる。
「残って数年過ごしてみるかい?」
ミトは訳知り顔でニヤリと笑う。
「止めておく。二度と出られなくなったら、仮に永遠の命を得ても嬉しくないし」
「正解だよ。知識も無い者が居ても、利は無いだろうな」
ティガーが頷く。
「さて。ルリを…冷たくなったルリとギルとか言うブルッカマーの艦長代理さんをどうやって運び出そうか」
ポットは私の心臓にやはり脈が無い事を確かめながら言う。
「ジュンを待つしか無さそうですね」
「そうだな。ジュン達を待つのが得策だろう」
ミトがクインに同意する。
不動の安定感を誇る私達のメンバーの中でのツートップは決して焦らないのがいい所よね。

「それにしても、ルリの身体のどの傷が致命傷なのかしら?」
ポットの問いにミトが私を覗き込む。
「確かに…。傷ついてはいるが、致命傷と言える程にも見えないが」
「もしや、ルリは傷を負ったこの男性へ“力”を分け与えて更に体力消耗を最小限にする為に仮死化させたのでしょうか」
「自ら“窓”を開いた?」
クインの推測にティガーが反応する。
「ルリなら有り得る。私なら絶対ギル公の為に力なんて分け与えてないけど」
レイミーは頷いてみせる。
「力加減を誤ったのか、既に力を使えばもう余力すら無い事を知っていたのか?」
ミトは再度私の顔を見ている。
「後者臭いわね。ルリだけに」
瞼さえ動かない私の顔を見ながらポットは言う。
「そんな奴だよ。ルリは」
ティガーはあの日私が放った獅子剣の繭化の力を回顧するように冷え切った私の手を握る。




「貴様。どこから入って…。まさか貴様はあの“白騎士”?亡霊か?」
「そこをどけ。まだ生きて居たいならば」
「この千年前の亡霊め。黄泉の国へ旅立て」
到着ゲートを守護する衛兵達が武器を取り、錆びた古臭い武具を纏った騎士へと次々に向かって行った。
「最強の硬度を誇る最新の剣で亡霊など打ち倒してくれるわ」
「武器に溺れた兵士など怖くも無いわ。剣は技」
白い騎士装束の男は向かい来る衛兵達を打ち倒して進む。








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天宮の乙女達…タジリスクの聖戦(9G) 110

2019-04-03 20:53:58 | 【偽書】シリーズ
「孫も居ないおめえが言うな。分かった様な口…」
「ふふ。復讐に燃えず、大人しく辺境の地で家族でも持てば良かったのかな」
「その気もねえ癖に」
「お前達は本当に千年も生きてきたのか?」
「だから最初からそう言っているだろ。おしめがお似合いのお嬢ちゃん」
「てめえ…」
「待て待て。もう股関節を蹴るのは勘弁だぜ」
「おやおや。第二陣が舞い降りる様だ」
「厄介だな。“お姫様”の方はどうだ」
「“終わった”とさ」
「便利なもんだな」
「まあな」
「やはりお主は白騎士ではなく例の漆黒の騎士なのか?それはテレパシーじゃな」
「おしゃべりな爺様はせっかくの寿命を縮める事になるぜ」
「この白い騎士は何だ?」
「爺様もおしゃべりなら孫娘もおしゃべりだな。おしめをした赤ん坊ならおしゃぶりでも舐めとけ」
「だからおしめなんてしていな〜い」
結局股関を押さえてもんどり打ち転げ回る有翼人。




「ジュンとイコルは何を探していた?まっすぐにメリーやルリの探索に加わらずに」
「それは言えないな〜講座の同期のフィンでも」
「そうね。私達二人には、講座時代の“補習”があるのよ」
「補習?」
「まあ、正式な巫女の承認を受けても、それで終わりじゃないって事さ。さあ、ティガー達と合流しようぜ」
「クインやポットも合流したんだし、私達も早くルリとメリーを探さなきゃね」
「はぐらかしたか」
「まあまあ。行くよ、フィン」
ジュンはフィンの肩を叩いて歩き出す。
「痛っ!思い切り叩いたね」
「あの時のほんのお返しさ」
ジュンは声に足を止め振り返り懐かしそうに言うとまた歩き出す。



「で、この男はどうする?」
「仮死状態だから今すぐ絶命するとも思えないが…」
「これ、自分から延命の為にこうなったみたいね」
ポットはレイミーとミトに言う。
「ルリを放っておいて自分だけ延命かよ」
「いや、一見こうして一緒にいる様にみえるけど、最初は隔離されてたみたいだね」
ティガーは天井に収納されてある鉄格子を指差した。
それは私とギルを隔てていた鉄格子。
私が死んで(!)から引き上げられたのかしら?
「で、ルリとこのギル公を拉致していたのは誰?」








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