くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

黍(きび)色ミラージュ騎士団(四聖獣〜戦巫女の間のストーリー) 20 第1章 枯れ野の薔薇19

2020-02-25 00:38:15 | 【偽書】シリーズ
ガイロックスが制するのが早いか、ヴィエラはスッと一団の最前列の男の鼻先にその細い剣を向けます。
それは小さな花が落ち地に着くより早かったと申します。
「な、何を…」
「我はヴィエラ…ヴ・ェント・マルウェア・ローサー。教皇様より騎士を拝命致し者なり」
「教皇だと。その騎士が俺達善良な市民に剣を振るうのか」
「騎士を愚弄せし者、王や教皇を愚弄したも同然。非礼を詫びねば騎士の名に於いて切り捨てる」
「てめえ、やるってぅのか」
一団が武器を取ります。
「ほほぅ。善良な市民が武器か。笑わせる」
「よせ。ヴィエラ」
ガイロックスの制止が耳に入らないのか、それとも敢えて無視しているのか、ヴィエラは右手に持つ剣をピタリとひとりの男の鼻先に向けたまま、周囲を取り囲む一団を見渡しました。
「お前らやっちまえ」
鼻先に剣を向けられたリーダー格然とした男は仲間に号令します。

一団は一気にヴィエラとの距離を縮めて来ました。
ガイロックスはありったけの早さで剣を抜きながら走り、ヴィエラの方へと向かいます。
しかし、それより早く、一団はヴィエラに切りかかりました。
次の瞬間、ガイロックスは我が目を疑ったでしょう。
自らを中心として横に円を描く様に振るわれたヴィエラの剣先が、寸分狂わず一団を切り裂いて回ります。
それは、一寸の無駄も無い綺麗な切っ先でした。
「これは…」
次の瞬間、男達は地に倒れ込み、剣を持っていたはずの腕をもう片方の手で押さえていました。
男達の剣と腕は、身体から離れて地面に転がり動きません。
幾つもの野獣に似た叫び声が辺りに響きます。
「魔物だ…まるで…この女…いつの間に…そう言えばこの切っ先、スティーブの切っ先に似ている。奴から学んだのか?だが、スティーブは特別何かを教えてはいなかった筈。奴が振るう剣をとこかで見ただけで覚えたとでも…」
リーダー格の男だけが間合いから外れていたのか剣を手にして残り、ヴィエラに切りかかりました。
「いかん」
ガイロックスがヴィエラの前に出ようとするのをまるで制する様に、ヴィエラが一歩前に出て、斜め上段からの鋭角のひと振りを男に浴びせるのを見て、ガイロックスは更に驚いたといいます。
「あれは団長の剣技。この女は習わぬ技を見ただけで操れるというのか?」
ガイロックスは目の前の細い娘が幾当千の強者ギルバート団長が乗り移っていた様に見えていたでしょう。
もしくはギルバートその人そのものに。
勝敗は一瞬で決していました。








ブログへお立ち寄りの皆様へ

gooのフューチャフォンアクセス終了に伴い、gooブログ 各【偽書】シリーズへの投稿を終了する事と致しました。

他SNSへの投稿は継続しております。
ストーリーに引き続きご興味がございましたら、〔検索ワード【偽書】 〕などで検索頂けましたなら幸いです。


筆者敬白

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。